研究成果の概要
(1)研究主題
さまざまな教科の授業ですべての生徒が著作権教育を受ける
(2)研究のねらい
平成15年度の研究活動では、特定の教科におてい一部の生徒に対する著作権教育の実践を行った。その結果、高校における著作権教育の可能性と必要性について検証することができた。そこで、本年度はすべての在校生に対して著作権教育を実施するという目標を立てた。また、本年度は複数の教科において、著作権教育の可能性を検証することを目指した。これに関連して、できるだけ多くの教員が著作権に対する理解を深め、それを個々の教科に活用することを目標とした。
(3)研究の概要
本年度は、昨年度の研究担当者(数学科・情報科)に加えて、国語科と公民科の教員が研修に参加した。
まず、それぞれが担当する教科において著作権に関連する単元を抽出し、授業における著作権のあつかいの可能性を検討した。数学科の選択講座「コンピュータ」においては、昨年同様の内容で、著作権についての解説と「著作権クイズ」を実施した(昨年度実践報告参照)。国語科の「国語総合(現代文)」では、芥川龍之介の『羅生門をはじめとした文学作品に親しむことを契機に、生徒にインターネット上の「青空文庫」というサイトにアクセスさせることで「著作権の消滅」という内容をあつかった(添付資料①「国語科における実践」を参照)。公民科の「倫理」では、知的所有権の指導に関連して著作権を解説し、生徒の身の回りにある知的所有物に注目することで、著作権への意識向上の指導を行った上で、その後の課題追及学習において著作権を意識したレポート作成の実践を行った(添付資料②「公民科における実践」を参照)。
一方、1年次生から3年次生までが1単位で履修する「総合的な学習の時間」において、「研究発表と著作権」というテーマで著作権の指導を行った(添付資料③「総合的な学習の時間における実践」を参照)。本年度は、3年時生が旧教育課程を履修しているため、実際に指導した学年は、1年次生と2年次生であったが、2学年すべての生徒が著作権に関する基本的な知識を学習し、年度末の「研究発表」において「著作権に留意した報告書の作成」というテーマで実践的な活動を行った。ちなみに、この研究発表は、「キャリア教育」の一環として毎年実施されるもので、数ヶ月をかけて個々の生徒がさまざま情報を収集し、自らの進路選択に生かすという目的で年度末に行われるものである。
「総合的な学習の時間」の指導には多くの教員が動員されるため、校内の教員を対象とした「著作権研修会」を実施した。具体的には、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会に講師派遣を依頼し、著作権の基本的な知識と、学校現場で留意すべき点などについて講義していただいた。
(4)研究の成果
本年度の最大の成果は、1年次生と2年次生に著作権に関する実践の伴った指導が行えたということである。また、複数の教科で著作権教育を実施し、生徒が著作権についての学習をさまざまな場面で行えるとうことが確認できた。教員対象の著作権研修会においても、具体的な質問が数多く寄せられ、教員の著作権に関する関心の高さを確認できた。
以下に、本年度の研究で得られた成果について述べる。個々の詳細な内容については、別添の報告書および資料を参照していただきたい。また、「コンピュータ」における実践内容は昨年と同じものであるため、報告書および資料については昨年度のものを参照していただきたい。
生徒の研究発表活動と通して著作権に対する理解を深められた
「進学重視型単位制」をとっている本校では、1年次からキャリア教育を重視している。進むべき進路を自らの判断で決めるため、年度末に学年単位で研究発表会を開いている。事前調査においてインターネットやデジタル媒体を利用することが多く、安易な「コピー・アンド・ペースト」をさせないために、クラス単位で著作権に関する指導を行った。その結果、情報収集の過程で得られた文書情報などには「引用」の正しい使い方が徹底されていて、著作権の存在と遵守を意識できるようになった。
さまざまな授業で著作権教育が可能であることを確認できた
昨年度は「コンピュータ」という、学習内容に著作権があつかわれる科目で授業実践を行ったが、本年度は、「倫理」における「知的財産権」、「国語総合(現代文)」における「文学作品の著作権」という2つの単元で、著作権の指導を行うことができた。年度当初、「家庭」における「消費者教育」という単元でも著作権に関する授業を実施する予定であったが、担当者が産休に入ったため、実施するに至らなかった。
教員の校内研修で著作権に対する関心を高めることができた
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会から講師を招いて行った校内研修では、著作権に関する複数の資料を校内の全教員に配布した。研修会では、著作権の基本的な知識からはじまり、学校現場特有の問題を具体的な事例を交えて解説していただいた。著作権の重要性は耳にすることが多いが、実際の指導場面ではどのようなことがポイントになるかはじめて理解できたという意見が出されるなど、学校における著作権教育への動機付けとしては十分な効果が得られた。