平成17年度 千葉県柏市立旭東小学校

研究成果の概要

(1)研究主題

豊かに生きる力を育む情報モラル教育・著作権教育のあり方

(2)研究のねらい

メディアの「操作教育」を越え、ユビキタス社会を豊かに生きる力を育む「情報モラル教育・著作権教育」のあり方を実践授業を通して明らかにすることが研究のねらいである。

本校は、平成元年度より情報教育に関する研究を積み重ねてきた。その成果として、子どもたちがコンピュータや情報通信ネットワークなどを利用して、「調べる・まとめる・表現する・伝え合う」という情報活用の実践力は着実に伸びてきた。しかし、インターネットや電子メール、電子掲示板などの情報手段を駆使しながら人と関わり合い、学習を広げたり・深めたりできるようになってきたが、より重要となってきたことは、情報モラル教育や著作権教育の充実である。

そこで、本年度の研究は、情報社会の一員として適切に活動していくために欠かすことのできない、「情報モラルや著作権感覚の育成」に焦点を当てることにした。各教科や道徳、総合的な学習の時間、学校生活の様々な場面を通じて、高度情報化社会で適切な活動を行うための基となる考え方や態度を育てるための指導について、実践を通して探っていく。自分で判断できる能力、コミュニケーション能力の育成をめざし、相手を意識して思いやる態度を育てていきたい。

(3)研究の概要

  1. 学年の発達段階に応じた指導計画の見直し

  2. 授業実践と評価

    • 全学年、全学級で情報モラル教育・著作権教育に関する授業研修会を行う。
    • 柏市内に授業を公開し、外部評価を取り入れる。
  3. ゲストティーチャーの活用

    • 専門的な知識をもつ外部人材を授業に活用する。
  4. ディジタルコンテンツの活用

    • 主に文化庁作成教材の有効性を探る。
  5. 実践事例集を発行する

    • 本校の実践事例を冊子にまとめて市内に配布することで、情報モラル教育・著作権教育の普及・促進を図る。

(4)研究の成果

  1. 学年の発達段階に応じた指導計画の見直し

    本校の「情報機器利用に関する段階表」及び「情報モラル・著作権指導に関する段階表」を見直し、1年生から6年生までの体系的な指導内容を検討することができた。機器利用と情報モラル・著作権指導のタイミングを合わせることで、学ぶ目的を明確に示すことができたと考える。

  2. 授業実践と評価

    教科(国語、社会など)や道徳の中で情報モラル教育や著作権教育が必要な内容(場面)をピックアップしたり、総合的な学習の時間の活動に応じて効果的な指導の場面を設定したりすることで、子どもたちにとって必然性と切実感のある学習を設計することができた。高学年では、自分の身を守るための知識にとどまらず、よりよい社会作りに主体的に参画する態度を育てる(情報の発信者となる)ための実践も行えた。 全学年、全クラスで情報モラル教育・著作権教育に関する授業研究を行うことができた。ここでは、著作権について扱った高学年(委員会活動)の授業について報告する。

    1. 第6学年 総合的な学習の時間(※詳細は別紙3-1.3-2を参照
      「やって発見!みて発見!われら歴史探検隊」

      総合的な学習の時間に、調べたり体験したりした事をまとめてホームページにすることで、情報の発信者としての表現力や判断力を見につける機会とした。自分たちのホームページについて、著作権に関わる問題点や疑問を関係機関に問い合わせ、解決することの出来る実践力を育てることができた。

    2. 広報委員会 特別活動
      「子どもの子どもによる子どものためのホームページ」

      広報委員会の子どもたちは、日常的にホームページを作っている。今年のホームページ作りは子どもでも読めるようなものを作りたいという考えで出発した。内容についても子どもに役立つということがしだいにクローズアップされていき、その流れのなかで柏市のホームページの子ども版があれば、役に立つのではないかという考えが出てきた。このことは、子どもたちの意欲に大きくかかわり、さらに、柏市のホームページを利用させてもらうということから、「著作権」の学習にまで広がる結果となった。子どもたちが、それぞれの立場に立って話し合いをしたり、市役所にメールや電話で問い合わせたりする活動を通して、公開する際の問題を解決していくことができた。

    3. 第5学年 総合的な学習の時間
      「子どもケータイニュースを作ろう」

      グループ毎のビデオニュース制作の計画に基づき、カメラ機能を使ったデジタル万引き(著作権)等に関する校外での取材、GTへのインタビュー、スタジオ撮影、ビデオ編集、BGM作曲等の追求活動や表現活動を行った。子どもたちの世界にも浸透している携帯電話について、被害に遭わないための知識を身につけることにとどまらず、著作権や肖像権を尊重しながら、より豊かなユビキタス社会を主体的に作っていこうとする実践力を育てることができた。

  3. ゲストティーチャーの活用

    授業の中で、文化庁や携帯電話会社、書店、新聞社、保護者等、大勢のゲストティーチャーに協力してもらうことができた。専門的な知識を持つ人からのアドバイスは、子どもたちの意欲を高め、学びを深めるうえでたいへん有効であった。

  4. ディジタルコンテンツの活用

    文化庁作成教育「著作権を学ぼう」を6年生の授業のなかに位置づけ、子どもたちからアンケート調査を行った。操作が簡単で理解を深める上で有効であるという解答が多かった。改善してほしい点としては、自分が間違った問題(項目)についてのデータが残り、後で復習したいという意見があった。(※アンケート結果は別紙4を参照

  5. 実践事例集を発行する

    本年度研究授業で実施した実践(10実践)をまとめて、柏市内の学校や教育機関に配布することができた。著作権教育や情報モラル教育を実践する上での参考にしてもらいたいと願っている。

    <今後の課題>

    今年度は、研究一年目ということもあり、著作権に限定せず、肖像権の尊重、個人情報の保護、危険な情報への対応、情報の発信と責任など情報モラル全般に関する内容を扱った。指導すべき全体のイメージを持つことができたという成果があったが、著作権教育に関する計画や実践については、まだ検討すべて点が多い。まず時代の要請や児童の実態を把握し、子どもたちにつけたい力や目標をより明確にする必要がある。その上で、校内組織の見直しと、外部人材(講師)の活用による研究体制の確立を図っていきたい。