「著作権教育研究協力校」報告書

著作権の尊重と創造を目指すヒューマニズムに満ちた生徒の育成

生徒、教職員が高等学校の過程において、人類が産み出した知的財産（著作物）の意義や価値を理解し、文化の創造者や継承者としてのマインドを育てていくことを目的とする。

1. 知的財産（著作物）を創造する力を育てる学習
2. 知的財産（著作物）が社会を豊かにすることを理解する学習
3. 知的財産（著作物）を創造した人を尊敬する学習

学校法人東海大学の学園全体で実施している知的財産教育（特別授業、教科内の知的財産教育）を基本とし、専門家の指導による研修や講演を通して、著作権の概念や役割を学ぶと同時に、行事や日常の実践の機会を通して、生徒自らが著作権を尊重し、著作物の創造・保護・活用を実践する体制を作り、学校全体で人類の文化を尊重する授業を展開する。

1. 各学年知的財産特別授業（15時間）

   学園では幼稚園から大学院までの発達段階に応じた知的財産教育が企画され、各学校の裁量により実践が行われている。従来、やや産業財産権分野に偏りがあったが、今年度はどの時間にも著作権に関する事例を入れ、特に産業財産権との比較を行い、著作物の創造と権利尊重の部分を学習に組み入れた。

   1. 第1学年の特別授業計画（5時間）

      1回目　「身近な著作権について」

      • 知的財産教育が現代の高校生に必要な理由を理解する。日本のみならず世界中で知的財産教育が急速に拡大している現状を明らかにする。
      • 身近な例をもとにして知的財産権について考える。・・・身近な著作権について学習する。

      2回目　「発明（特許権）の歴史と著作権」

      • 申請しなければ得られない権利と無法式主義(著作権)について学習する。
      • 創造性教育の中で特に特許や発明について歴史的なものから現代に至るまでの事例を基に学習する。

      3回目　「学園オリンピック知的財産部門等への挑戦」

      • 高校現代文明論Ⅰで学園オリンピック「知的財産部門」への参加を取り組む。
      • 学園オリンピックニュースを使って生徒に参加意欲や指導を与える。
      • 図面、文章の引用（著作権）を学ぶ。

      ※学園オリンピック（知的財産部門）は、東海大学の附属高等学校・附属中学校性対象に毎年行われ各校の生徒より提出された「暮らしを豊かにするアイデア」のレポートを審査し、一次審査合格者には夏休みに東海大学嬬恋研修センターで1週間の知財セミナーに参加する。

      4回目　「クイズで学ぶ知的財産権（著作権に関するクイズ）

      • 身近な知的財産教育権（著作権）を知る。
      • 知的財産権を守り、活用する生活を営む方法を学ぶ。

      5回目　「ユニバーサルデザイン」

      • 日常の用具を参考に付加価値のあるものはどれかを観察し、どこに工夫や優れた技術があるか紹介し、討論を重ねる。
      • 自分で考案したユニバーサルデザインを公表するときの著作権について考える。 （ホームページ・CM等の問題点）

   2. 第2学年の特別授業計画（5時間）

      1回目　「発明物語（身近な発明Ⅱ）、著作物の歴史」

      • ノーベル・無装荷ケーブル・身近な発明品等を学習する。
      • 創造性教育の中で特に著作物、特許や発明について歴史的なものから現代に至るまでの事例を基に学習する。
      • 著作権、産業財産権の保護期間や制度について学習する。

      2回目　「絵画、スケッチ、デザイン、ネーミングに挑戦」

      • 絵画、スケッチ（著作物）、デザイン（意匠権）、ネーミング体験を行う。
      • 生徒が市場で調べてきた著作物、高付加価値の商品の写真、デザイン（著作権・商標・意匠件）についてグループ発表をし、知的財産の認識を深める。

      3回目　「学園オリンピックに向けた取り組み」

      • 学園オリンピック知的財産部門等への挑戦させる。
      • 高校現代文明論Ⅰで学園オリンピック「知的財産部門」へ参加を促す。
      • 学園オリンピックニュースを使って生徒の参加意欲を喚起し指導を与える。
      • 図面、文章の引用（著作権）を考える。

      4回目　「クイズ形式で知的財産権を学ぶ」

      • クイズ形式で身近な知的財産権（著作権と産業財産権）の違いを知る。
      • さまざまな知的財産権を事例を入れて理解させる。

      5回目　「知的財産を活用する会社について。」

      • 知的財産を活用した事例の学習（社会的な影響）
      • 発明を形にし、特許になるまでのプロセスを考える。
      • 身近な著作物、発明と特許について学び、文化庁「著作権」テキスト、「産業財産権」 テキストについて学ぶ。

   3. 第3学年の特別授業計画（5時間）【授業内容】

      1回目　「未来の商品開発Ⅰ」

      • ・発想法（ﾌﾞﾚｰﾝｽﾄｰﾐﾝｸﾞ法、KJ法、NM法）を学ぶ。
      • 商品開発についての法的な面、技術的な面、発想法のプロセスなど基本的なステップについて学ぶ。
      • 商品の紹介に関する著作権の学習（音楽、写真、映像）を行う。

      2回目　「未来の商品開発Ⅱ　（プレゼンテーション：生徒の発表）」

      • 発明・創造体験（著作物・発明・発想の実践）をする。
      • 自分達で考えた「未来の商品」について、グループで商品の特性や、付加価値の部分について紹介する。
      • 模擬会社の設立とCM、PR等の著作権について考える。

      3回目　「社会の仕組みとしての著作権の学習」

      • ケーススタディーを通して、これからの社会人として必要な著作権の学習を行う。

      4回目　「知的財産権を守るマインド」

      • 知的財産の効力と制限（侵害、知的財産制度の問題点、代表的訴訟問題）を学習する。
      • 創造教育の中での著作権学習（特許権、実用新案権、意匠権、商標権との比較）を行う。

      5回目　「現代社会での知的財産の重要性」

      • 社会的なトラブル、著作権を守る仕組み、青色発光ダイオードなどの訴訟問題を考える。

   4. 公開授業（著作権に関する授業）への取り組み

      2007年12月8日に、これまでに本校で研究してきた知的財産教育を公開授業を通して成果を内外に問う。

2. 教科内での知的財産教育

   国語、数学、理科、地歴・公民、英語、保健体育、情報、芸術の各教科において、前期1回、後期1回知的財産に関する授業を行った。教科の中の創造性教育の展開とともに著作権に関する内容を入れて、より身近な著作物についても理解を深めた。

3. 体育祭・文化祭等の行事での取り組み

   生徒会及び各クラスにおいて、アニメや図版の取り扱いに関して、著作権について守らなければいけないルールについて学習した。

4. 教員研修会

   教員が教育活動の中で知っておかなければならない事項について、外部講師を招聘し研修をおこなった。講師は文化庁著作権課元課長の黒澤節男氏である。

5. 生徒講演会

   全校生徒を対象に、久留米大学の大家重夫先生を招聘し、①著作権の歴史、②日常の著作権等について講演を頂いた。

6. 教科情報との連携

   コンピュータ実習や授業で、常に著作権を取り扱っている教科であり、年間を通して体系的な著作権教育をおこなった。

7. LHRでの取り組み

   LHRでのクラス活動時に、著作権についての理解や活用を話し合う。

8. 高校現代文明論での取り組み

   本校では、「総合的な学習の時間」を「高校現代文明論」として各学年1時間をあてている。

   高校現代文明論Ⅰ・・・	テーマ別学習に取り組む。（資料収集に著作権を尊重する。）
   高校現代文明論Ⅱ・・・	修学旅行の学習を通して幅広い視野を広げる。 （著作権関係資の取り扱いの大切さを学ぶ。）
   高校現代文明論Ⅲ・・・	社会人としての著作権を考える。 （著作物を生み出した人を大切にする社会を考える。）

年度の途中に、本校が著作権教育研究協力校の指定を受け、公開研究授業の期日を12月8日に定めた。公開授業の対象学年を2年生とし、本年度第4回目の「知的財産制度の理解（著作権教育）」（4クラス）を実施し、また教科の中の知的財産教育（著作権を絡める）も英語Ⅱ、古典Ⅰ、現代社会、情報A、音楽Ⅰ、生物Ⅰを公開授業とした。本学園が独自に行っている知的財産教育と共に、8月の後半から全体の準備を始め、「著作権教育」に関する教員研修を実施し、また全校生徒を対象の講演会を企画し著作権の理解を深めて行った。この間に、文化庁の著作権課からの資料を生徒に配布し、事前の学習準備を重ねていった。担任の学習会として、附属第四高校で実施された公開授業をもとに研修を行い、本校なりの生徒が参加する知的財産授業とは何か、授業とはなにかを模索していった。知的財産教育はテーマが与えられただけでのスタートであったが各担当者が、特別授業の内容の探求や、教科の特性、個人が持つ特色を生かして授業を組み立てて行った。

1. 各学年知的財産特別授業（15時間）

   1. 第1学年の特別授業まとめ

      第1学年は知的財産教育の導入であるため、まず知的財産に関する認識から学習に入った。1回目は日本が世界の中で現在どのような立場であるか考えさせ、そのための取り組みにも目を向けさせた。2回目は、発明の歴史や現在活用されている発明品や著作物に目を向けさせ、知的財産が私たちの社会を豊かにすることを考えさせた。3回目は学園オリンピックの「暮らしを豊かにするアイディア」を取り組ませた。4回目はクイズを通して著作権に関するマインドを育てた。クラスによっては、1回目から3回目までを連続した形で商品開発や著作権に関する事項を考え、独自の発展教材で実施した。これらの授業を通して生徒達の知的財産への見方が少しづつであるが変わってきたようである。

   2. 第2学年の特別授業のまとめ

      昨年度において知的財産の基礎を学んだ事を参考に、次のステップで知的財産教育のやや応用編を実施した（高校現代文明論で各担任が授業を行った）。知的財産教育（著作権）の研究公開授業として全国の先生方に参観頂いた。年度当初は幅広く知的財産権を扱う内容を予定していたが、文化庁から著作権教育研究協力校に指定されたことから、特に「著作権」に重点を置いて特別授業を展開した。「著作権」を生徒達と教員が共に理解しようとするスタンスで授業を展開し、単に著作権のルール理解に止まらず、著作物作成という創造的な活動も取り入れた。第2学年の知的財産教育を通して、より創造的な活動に興味を持つ生徒が増えて来たようである。

   3. 第3学年の特別授業のまとめ

      2年間実施した知的財産教育の基本の上に、第3学年の実践を行った。1回目の未来の商品開発に関しては、ﾌﾞﾚｰﾝｽﾄｰﾐﾝｸﾞ法、KJ法、NM法を紹介し、発想法として取り入れるクラスもあったが、手法がよくわからず、紹介だけで終わったクラスがほとんどであった。2回目はその発展として個人やグループで商品の特性や、付加価値を考えた。3時間目は、学園オリンピックには提出するチャンスがないため、パテントコンテストを紹介し、次のステップを考えさせた。4回目は社会とのつながりになる知的財産権（著作権）の侵害や、訴訟問題を考えさせた。各クラスでは様々な最近の事例を取り上げ、生徒達も興味を持った様である。5回目は現代生活における知的財産権（著作権）の重要性を考えさせた。これから社会に手でいくための必要な知識やモラル、マインドなどを総合的に学び、高校における知的財産教育の結びとした。3学年全体を振り返ってみると、やや知的財産に関する専門用語や現代社会の抱える問題点を考えさせたために、教材が難しく、生徒が意欲的に取り組むにはやや重すぎた感じを持った。次年度に向けた検討課題としていきたい。また知的財産教育委員会の用意した教材ではなく、自主的にクラスに応じた取り組みもあった。目的とテーマにそって、ある程度発展的に取り組む場合は、クラスの事情に応じて独自の教材開発を奨励してもよいと思われた。成果として第3学年は知的財産教育が社会との繋がりの中にあることが分かったのではないだろうか。

   4. 公開授業へ（著作権に関する授業）の取り組み

      本校の知的財産特別授業は学年が上がるごとに、段々奥が深くなるラセン型の授業体系を取っており、「知的財産制度の理解」も2年生は2回目になる。テーマの中心を「著作権教育」に持って来るようにし、実施の各クラスの担任に指導案を考えてもらった。担当の各先生とも非常に悩みながらも公開授業の1週間前には実施の指導案を提出し、準備を重ねて公開授業の当日を迎えた。

      公開授業に取り組んだクラスの実施は以下の通りである。

      1. 2年1組【書道の授業時間に作った雅印を押すことによって、更に著作物の価値を高めさせることを理解させる授業】
         授業で作った雅印を押すことで、更にその作品が世界に一つしかない著作物である事を証明し、日本や中国では長い歴史の中で著作権が重要視されていたことを理解させた。この内容を教材として現在の著作権制度について考え、作品を作り理解させた。
      2. 2年2組【学校の特色を表現させる内容から「著作権の保護」を理解させる授業】
         グループで学校の特色をよく表したキャッチフレーズやシンボルマークを考え、作品に込められた制作意図や想いを発表し、作品のオリジナリティを互いに認め合う態度を育成しながら著作物の創造の大切さと保護の重要性を理解させた。
      3. 2年3組【様々な表現方法を導入して五感で「著作権」を理解させる授業】
         著作権について、各グループが伝えたいテーマを設定して寸劇、紙芝居、コント、クイズ等の様々な手法で表現させ、著作権に関する疑問点や問題点をクラス全体で共有し、全員で討議しながら著作権制度の必要性を理解させた。
      4. 2年理数科【デジタル写真ライブラリーの作成を通して「著作権」を理解させる授業】
         生徒が撮影したデジタル映像に、自ら考えた写真の説明文、著作権情報を埋め込み（メタデータ）、「付加価値」を与えた著作物の作成を通して、著作権制度の理解と保護、活用の概念を理解させ、他者の作品や権利を尊重できる精神の育成を図った。

   5. 知的財産特別授業（著作権教育）を終えて

      今回の公開授業を体験して、知的財産教育の手法は無限にあることを感じた。生徒が「著作権」というテーマに沿って、守るべきルールだけではなく、積極的に活用する方法まで考えたクラスも出て来た。著作権に関するマインドの育成を目標にしたが、ある程度は達成されたと思う。今回の公開授業だけではなく毎回の授業も、このような形で実施できれば生徒も興味を持って参加出来るであろう。現在どの知的財産に関する授業の時間も一般的な教材を用意はしているが、公開授業の記録（ビデオ）を参考に独自の教材を使って効果のある授業を一クラスでも多くの実施が望まれる。

2. 教科の中での知的財産教育

   本校では、今年度各教科で2回の教科内での知的財産教育の取り組みを実施する予定を立てた。公開授業では各教科の中で知的財産教育を推進する研究部、授業担当者同士が打ち合わせをしながら指導案を立て、公開授業に向けて準備を整えていった。

   1. 教科の中に知的財産教育を取り入れた公開授業

      1. 理科（生物Ⅰ）【「生物の進化」に関する授業】
         生物の進化には必ず必然性が存在するが、「生物の形質」に潜む進化的必然性の意義をクイズ形式で考えさせた。
      2. 国語（古典）【「方丈記」を現代に再現させることで「無常観」を理解させる授業】
         方丈記の特徴である比喩表現や対句表現の理解と「無常観」を自分達の言葉で表現し、現代版「方丈記」『ゆく河の流れ』」を創作し、創造性を伸ばす授業を展開した。（著作物の創造）
      3. 情報A【「産業財産権（工業所有権）、著作権」の基礎を理解させる授業】
         産業財産権、著作権に対しての基礎を具体的な事例から確認し、パワーポイントを活用した図形描画の応用を通して「著作権」についての考え方をまとめさせた。
      4. 英語Ⅱ【英単語から「即興の物語」を創る授業】
         生徒が選んだ単語を使って各グループで英語の物語を作らせた。作業の途中で、各班に教員が用意した物品をくじ引きで選ばせて、その物品の単語をさらに加えた上で急遽物語を再構築させる授業を実施し、創造性を育成した。（著作物の創造）
      5. 芸術（音楽Ⅰ）【苦労して作曲した人の「権利を守る」意識から著作権を理解させる授業】
         過去に盗作問題になったいくつかの歌を生徒に歌唱指導し、どこまで曲が似てきたら盗作かを考えさせた。また、ピアノによって類似した曲を聞かせながら著作権について考えさせ、JASRAC(日本音楽著作権協会）の存在と役割を紹介した。
      6. 公民（現代社会）【「市場競争と商品開発の関係」を例に「競争力向上に特許が果たす役割」を理解させる授業】
         「競争市場における企業の商品開発」に例をとり、創造力・発想力と競争力の関係、知的財産保護の重要性を体験的に学習させる授業。各グループでカップ麺を考案し、プレゼンテーションを通して「売れる商品」（デザインなどの著作物）にはどのような工夫が必要かを消費者の立場で体験させる授業を実施した。

   2. 教科の中での知的財産教育を終えて

      教科の中での知的財産教育では、知的財産権にとらわれず、のびのびとした創造や、課題にチャレンジし、問題の解決方法をクラスの仲間達で模索していく積極的な姿勢を育成していきたい。意欲的な素晴らしい授業の組み立てが創造性（著作物を生み出す力）を育てる知的財産教育と相通じるものであると信じる。

3. 体育祭・文化祭等の行事での取り組み

   学校行事において、やはりクラスや団（グループ）のシンボルとして各種のキャラクターを取り入れた旗や看板が作られた。行事に取り組む事前学習として、学内著作権広報「コピーライト」や高校生にとっては易しい内容であったが文化庁監修（財）消費者教育支援センターの「インターネット時代のまんが著作権教室」の冊子を使っての著作権教育を行った。その結果、例年テレビアニメを取り入れた安易な看板や旗ではなく、クラス独自で創造性溢れるオリジナルな作品になり、著作物の創造者としての意識の芽生えが感じられたようである。特に本年はクラス旗作りに著作権教育の成果が顕著に現れた。

4. 教育研修会（教員が教育活動の中で知っておかなければならない事項）

   実施日：平成18年11月27日（月）
   文化庁著作権課元課長の黒澤節男氏を講師を招き、「学校で必要な著作権教育」のテーマで全教員を対象に講義を頂いた。特に、教師が知っておかなければならないルールや生徒達に著作権の大切さを育てていく心を、事例を含めて教えて頂いた。

5. 生徒講演会

   実施日：平成18年12月5日（火）
   久留米大学法学部の大家重夫教授を招き体育館に全校生徒を対象に、「生活の中の著作権」のテーマで講演を頂く。特に、高校生が知っておかなければならないルールや著作権を守っていくマインドを、事例を含めて教えて頂いた。特に先生は、日本の著作権の歴史に明るく、明治初期から現在に至る著作権の歴史に関して詳しい講義を頂いた。

6. 情報の教科との連携

   本校の情報教育は、座学やコンピュータ実習の各単元で、常に著作権を取り扱っており、今年度も年間を通して体系的な著作権教育を実施している。特にインターネット上から情報や図、写真の扱いにおいては、指導が徹底しており、安易な情報収集でのレポート作りを諫める教育をしている。ホームページへの写真の掲載、論文の引用など、毎時間の教材作りには著作権尊重という意識を通し、判断できる生徒の育成を目指した。

7. LHRでの取り組み

   本校では担任とクラスが主体のホームルーム活動が授業時間の中に用意されており、本年度は著作権教育推進という立場で、特に学校行事の準備段階から、この時間を積極的に活用し著作権についての理解や、活用を話し合う機会を多く設けていた。参考になるテキストとしては、文化庁長官官房著作権課発行の「学校における教育活動と著作権」、「著作権教育5分間の使い方」、社団法人著作権センターの「はじめての著作権講座」、「はじめての著作権講座Ⅱ」、「学校教育と著作権」、「私的録音録画と著作権」を使い、時間や内容については担任判断で実施して頂いた。

8. 高校現代文明論での取り組み

   本校の高校現代文明論は、「人生にとって大切なものは何か」「我々はいかに生きるべきか」を自ら考え、しっかりとしたものの見方、考え方を養い、人間、社会、自然、歴史、世界等のテーマについて考え、創立者が示した「物質文明と精神文明との調和した新しい文明とはいかにあるべきか」を探求する姿勢を養う教科である。この教科にはテーマ別学習が準備されており、各グループがそれぞれのテーマで資料を調べ発表した。いずれも資料を調べグループ毎にまとめさせるのであるが、資料の引用、出典の明記、図版や写真の取り扱いに関して著作権を守る教育を積極的に実施した。

9. まとめ

   本校の著作権教育の推進に関しては知的財産教育推進委員会（教頭、教頭補佐、教務主任、研究主任、各教科1名）が母胎となり、学園の一貫教育委員会第五部会からも助言を受けながら研究してきた。また著作権教育の企画、具体的推進として地元の福岡教育大学教養学部保条成宏先生のご指導を頂いたり、「著作権」の学習に関して文化庁著作権課元課長の黒澤節男氏を講師に招き著作権に関する職員研修を実施した。また全校生徒を対象に久留米大学の大塚重夫先生をお招きし著作権教育の大切さや歴史的背景について講演を頂いた。本校を含め、東海大学では幼稚園から大学院まで、知的財産教育が5年前から実施されており、今回の「著作権」もその中で扱われていた。8月に本校が文化庁より、著作権教育研究協力校の指定を受けてより、特に「著作権」に関する事項が多く含まれているが、その中で「著作権」との類似しる分野のみでないことをご理解頂ければ幸いである。毎日の学習において、生徒への提出レポートに引用や出典が明記され、インターネットの資料にはURLが明記される事が多くなって来たことは著作権教育の成果であろう。また本校が昨年12月に「著作権」を主とした知的財産教育（主に著作権に関する授業）の公開授業を実施したが、その中で感じられた事は、著作権教育に取り組むことによりクラスの団結や和が生まれ、クラス経営に大きな影響を及ぼしたことや、教科の中での知的財産教育（著作権教育）実施が、教科教育を深める因子に成り得ると思われたことであろう。今後の本校の取り組みとしては、著作権教育が従来の教育と別個のものではなく、創造性を伸ばす同一の教育と捉え、今後も研究を続ける予定である。最後に物心両面で指導にあたって頂いた文化庁の関係各位、大学や各方面の教育機関の方々に深く感謝の意を捧げる。