平成20年度 東海大学付属第五高等学校

研究成果の概要

(1)研究主題(2006年次からの継続)

著作権の尊重と創造を目指すヒューマニズムに満ちた生徒の育成

(2)研究のねらい(2006年次からの継続)

生徒、教職員が高等学校の課程において、人類が産み出した知的財産(著作物)の意義や価値を理解し、文化の創造者や継承者としての知財マインドを育てていくことを目的とする。

  1. 知的財産(著作物)を創造する力を育てる学習
  2. 知的財産(著作物)が社会を豊かにすることを理解する学習
  3. 知的財産(著作物)を創造した人を尊敬する学習

(3)研究の概要(2006年次からの継続)

学校法人東海大学の学園全体で実施している知的財産教育(特別授業、教科内の知的財産教育)を基本とし、専門家の指導による研修や講演を通して、著作権の概念や役割を学ぶと同時に、行事や日常の実践の機会を通して、生徒自らが著作権を尊重し、著作物の創造・保護・活用を実践する体制を作り、学校全体で人類の文化を尊重する授業を展開する。

  1. 各学年知的財産特別授業(15時間)

    学園では幼稚園から大学院までの発達段階に応じた知的財産教育(東海モデル)が企画され、各学校の裁量により実践が行われている。従来、やや産業財産権分野に偏りがあったが、今年度はどの時間にも著作権に関する事例を入れ、特に産業財産権との比較を行い、著作物の創造と権利尊重の部分を学習に組み入れた。  

    参考「出る杭を伸ばせ!」ー明日を変える知的財産教育ー
    (東海大学知的財産教育テキスト編集委員会編 社団法人 発明協会発行)

    1. 第1学年の特別授業計画(5時間)

      1回目 「身近な著作権について」

      • 知的財産教育が現代の高校生に必要な理由を理解する。日本のみならず世界中で知的財産教育が急速に拡大している現状を明らかにする。
      • 身近な例をもとにして知的財産権について考える。・・・身近な著作権について学習する。

      2回目 「発明(特許権)の歴史と著作権」

      • 申請しなければ得られない権利と無法式主義(著作権)について学習する。
      • 創造性教育の中で特に特許や発明について歴史的なものから現代に至るまでの事例を基に学習する。

      3回目 「学園オリンピック知的財産部門等への挑戦」

      • 高校現代文明論Ⅰで学園オリンピック「知的財産部門」への参加を取り組む。
      • 学園オリンピックニュースを使って生徒に参加意欲や指導を与える。
      • 図面、文章の引用(著作権)を学ぶ。

      ※学園オリンピック(知的財産部門)は、東海大学の附属高等学校・附属中学校性対象に毎年行われ、各校の生徒より提出された「暮らしを豊かにするアイデア」のレポートを審査し、一次審査合格者には夏休みに東海大学嬬恋研修センターで1週間の知財セミナーに参加する。

      4回目 「クイズで学ぶ知的財産権(著作権に関するクイズ)

      • 身近な知的財産教育権(著作権)を知る。
      • 知的財産権を守り、活用する生活を営む方法を学ぶ。

      5回目 「ユニバーサルデザイン」

      • 日常の用具を参考に付加価値のあるものはどれかを観察し、どこに工夫や優れた技術があるか紹介し、討論を重ねる。
      • 自分で考案したユニバーサルデザインを公表するときの著作権について考える。 (ホームページ・CM等の問題点)
    2. 第2学年の特別授業計画(5時間)

      1回目 「発明物語(身近な発明Ⅱ)、著作物の歴史」

      • ノーベル・無装荷ケーブル・身近な発明品等を学習する。
      • 創造性教育の中で特に著作物、特許や発明について歴史的なものから現代に至るまでの事例を基に学習する。
      • 著作権、産業財産権の保護期間や制度について学習する。

      2回目 「絵画、スケッチ、デザイン、ネーミングに挑戦」

      • 絵画、スケッチ(著作物)、デザイン(意匠権)、ネーミング体験を行う。
      • 生徒が市場で調べてきた著作物、高付加価値の商品の写真、デザイン(著作権・商標・意匠件)についてグループ発表をし、知的財産の認識を深める。

      3回目 「学園オリンピックに向けた取り組み」

      • 学園オリンピック知的財産部門等への挑戦させる。
      • 高校現代文明論Ⅰで学園オリンピック「知的財産部門」へ参加を促す。
      • 学園オリンピックニュースを使って生徒の参加意欲を喚起し指導を与える。
      • 図面、文章の引用(著作権)を考える。

      4回目 「クイズ形式で知的財産権を学ぶ」

      • クイズ形式で身近な知的財産権(著作権と産業財産権)の違いを知る。
      • さまざまな知的財産権を事例を入れて理解させる。
        ◎12月12日(金)外部への公開授業 2学年6クラス実施

      5回目 「知的財産を活用する会社について。」

      • 知的財産を活用した事例の学習(社会的な影響)
      • 発明を形にし、特許になるまでのプロセスを考える。
      • 身近な著作物、発明と特許について学び、文化庁「著作権」テキスト、「産業財産権」 テキストについて学ぶ。
    3. 第3学年の特別授業計画(5時間)【授業内容】

      1回目 「未来の商品開発Ⅰ」

      • 発想法(ブレーンストーミング法、KJ法、NM法)を学ぶ。
      • 商品開発についての法的な面、技術的な面、発想法のプロセスなど基本的なステップについて学ぶ。
      • 商品の紹介に関する著作権の学習(音楽、写真、映像)を行う。

      2回目 「未来の商品開発Ⅱ (プレゼンテーション:生徒の発表)」

      • 発明・創造体験(著作物・発明・発想の実践)をする。
      • 自分達で考えた「未来の商品」について、グループで商品の特性や、付加価値の部分について紹介する。
      • 模擬会社の設立とCM、PR等の著作権について考える。

      3回目 「社会の仕組みとしての著作権の学習」

      • ケーススタディーを通して、これからの社会人として必要な著作権の学習を行う。

      4回目 「知的財産権を守るマインド」

      • 知的財産の効力と制限(侵害、知的財産制度の問題点、代表的訴訟問題)を学習する。
      • 創造教育の中での著作権学習(特許権、実用新案権、意匠権、商標権との比較)を行う。

      5回目 「現代社会での知的財産の重要性」

      • 社会的なトラブル、著作権を守る仕組み、青色発光ダイオードなどの訴訟問題を考える。
    4. 公開授業(著作権に関する授業)への取り組み(昨年度も実施)

      2008年12月12日に、これまでに本校で研究してきた知的財産教育を公開授業を通して成果を内外に問う。

  2. 教科内での知的財産教育

    国語、数学、理科、地歴・公民、英語、保健体育、情報、芸術の各教科において、前期1回、後期1回知的財産に関する授業を行った。教科の中の創造性教育の展開とともに著作権に関する内容を入れて、より身近な著作物についても理解を深めた。

  3. 体育祭・文化祭等の行事での取り組み

    生徒会及び各クラスにおいて、アニメや図版の取り扱いに関して、著作権について守らなければいけないルールについて学習した。今年度は一歩進んで、積極的に著作権の活用について考えたクラスも生まれた。また自分たちの作品に対する意識が高まり、他のクラスに対して、オリジナルな作品を作ろうとする意欲が見受けられた。

  4. 生徒対象著作権講演会

    2009年2月20日1学年を対象に、JASRAC 小島芳夫氏(送信部部長)を招き音楽著作権についての講演を頂く。講演テーマ「ネットワーク社会の音楽著作権 ー著作者の心ー」

  5. 教科情報との連携

    コンピュータ実習や授業で、常に著作権を取り扱っている教科であり、年間を通して体系的な著作権教育をおこなった。12月12日の公開授業にかかわらず、日常的に著作権教育を取り入れた。

  6. LHRでの取り組み

    LHRでのクラス活動時に、著作権についての理解や活用を話し合う。特に行事の前は、著作物の取り扱いについて担任から生徒に話す機会が多かった。今年度はできるだけ事例を上げて取り組んだ。

  7. 高校現代文明論での取り組み

    本校では、「総合的な学習の時間」を「高校現代文明論」として各学年週1時間をあてている。(年間32時間程度)

    高校現代文明論Ⅰ・・・ テーマ別学習に取り組む。(資料収集に著作権を尊重する。)
    高校現代文明論Ⅱ・・・ 修学旅行の学習を通して幅広い視野を広げる。
    (著作権関係資の取り扱いの大切さを学ぶ。)
    高校現代文明論Ⅲ・・・ 社会人としての著作権を考える。
    (著作物を生み出した人を大切にする社会を考える。)

(4)研究の成果(2006年次からの継続)

年度の途中に、本校が著作権教育研究協力校の指定を受け、公開研究授業の期日を12月12日に定めた。公開授業の対象学年を2年生とし、本年度第4回目の「知的財産制度の理解(著作権教育)」(2クラス)を実施し、また教科の中の知的財産教育(著作権を絡める)も英語、家庭科、国語、数学(4クラス)を公開授業とした。本学園が独自に行っている知的財産教育と共に、10月の前半から全体の準備を始めた。また1学年生徒を対象の講演会を企画し著作権の理解を深めて行った。担任の学習会として、附属仰星高校や附属第四高校で実施された公開授業をもとに研修を行い、「生徒が参加する知的財産授業とは何か」を模索していった。今年度は、2年分の記録が写真やビデオとして残されていたので、各担当者はそれを参考にして、特別授業の探求や、教科の特性、個人の特色を生かした授業を組み立てて行った。

  1. 各学年知的財産特別授業(15時間)

    1. 第1学年の特別授業まとめ

      第1学年は知的財産教育の導入であるため、まず知的財産に関する認識から学習に入った。1回目は日本が世界の中で現在どのような立場であるか考えさせ、そのための取り組みにも目を向けさせた。2回目は、発明の歴史や現在活用されている発明品や著作物に目を向けさせ、知的財産が私たちの社会を豊かにすることを考えさせた。3回目は学園オリンピックの「暮らしを豊かにするアイディア」を取り組ませた。4回目はクイズを通して著作権に関するマインドを育てた。クラスによっては、1回目から3回目までを連続した形で商品開発や著作権に関する事項を考え、独自の発展教材で実施した。これらの授業を通して生徒達の知的財産への見方が少しづつであるが変わってきたようである。

    2. 第2学年の特別授業のまとめ

      昨年度において知的財産の基礎を学んだ事を参考に、次のステップで知的財産教育のやや応用編を実施した(高校現代文明論で各担任が授業を行った)。知的財産教育(著作権)の研究公開授業として他県をはじめ地元の先生方に参観頂いた。年度当初は幅広く知的財産権を扱う内容を予定していたが、文化庁から著作権教育研究協力校に指定されたことから、特に「著作権」に重点を置いて特別授業を展開した。「著作権」を生徒達と教員が共に学ぼうとする目的で授業に取り組んだ。その結果、単に著作権のルール理解に止まらず、著作物作成という創造的な活動も取り入れた授業が展開された。知的財産教育を通して、著作物への理解と創造的な活動に興味を持つ生徒が増えて来たようである。今年度は特に、創造活動、創作活動に重点を移していった。

    3. 第3学年の特別授業のまとめ

      2年間実施した知的財産教育の基本の上に、第3学年の実践を行った。1回目の未来の商品開発に関しては、ブレーンストーミング法、KJ法、NM法を紹介し、発想法として取り入れるクラスもあった。2回目はその発展として個人やグループで商品の特性や、付加価値を考えた。3時間目は、学園オリンピックには提出するチャンスがないため、パテントコンテストを紹介し、次のステップを考えさせた。4回目は社会とのつながりになる知的財産権(著作権)の侵害や、訴訟問題を考えさせた。各クラスでは様々な最近の事例を取り上げ、著作権の尊重を訴えた。5回目は現代生活における知的財産権(著作権)の重要性を考えさせた。これから社会に出ていくための必要な知識やモラル、マインドなどを総合的に学び、高校における知的財産教育の結びとした。今年も知的財産教育委員会の用意した教材は使用せず、自主的にクラスに応じた教材を作る例が増えた。目的とテーマにそって、ある程度発展性を考えた場合には独自の教材開発がのぞましい。3年間の知的財産教育を通して、知的財産と社会の中での繋がりがより深いものであることが理解された。また、紙面上の学習だけでなく、建学祭(文化祭)の模擬店において、模擬会社を考え組織で取り組む手法も取り入れた。

    4. 公開授業へ(著作権に関する授業)の取り組み

      本校の知的財産特別授業は学年が上がるごとに、段々奥が深くなるスパイラル型の授業体系を取っており、「知的財産制度の理解」の単元も1年次から学習し、2年生では2回目になる。研究校指定のためテーマの中心「著作権教育」を意識して取り組むようにした。公開授業の各クラスの担任にそのところをポイントに指導案を考えてもらった。担当の各先生もその点を把握し授業を組み立てた。公開授業に取り組んだクラスの実践は以下の通りである。

      1. 2年5組【「著作権」クイズで学ぶ著作権の知識】
        著作権に関する意識付けとして、著作権に関わる問題をクイズ形式で出題する。
        生徒達は、そのクイズを通して著作権がどの様な理由で作られているのか、また歴史的な繋がりなど学びました。クイズの後、担任から回答と同時に、詳しい解説が示され、生徒は興味を持って授業に参加していた。
        自己診断テストを踏まえてアンケートに取り組むことで「著作権とは何か」を学習する。
      2. 2年理数科【知財劇場】
        グループで著作権を学ぶために、いろんな教育手法を考える。
        「著作権ミリオネア」…クイズ形式で著作権を学ぶ。
        「画像の添付について」…パワーポイントを使い、インターネット上の画像の取扱いについて、ルールを学ぶ。
        「海賊版DVD」…著作権違反問題をコントを演じることで著作権を学ぶ。
        「著作権裁判」…著作権違反を模擬裁判を通して学習する。
    5. 知的財産特別授業(著作権教育)を終えて

      今回の公開授業を体験して、知的財産教育の手法は無限にあることを感じた。生徒が「著作権」というテーマに沿って、守るべきルールだけではなく、積極的に活用する方法まで考えたクラスも出て来た。著作権に関するマインドの育成を目標にしたが、ある程度は達成されたと思う。今回の公開授業だけではなく毎回の授業も、このような形で実施できれば生徒も興味を持って参加出来るであろう。公開授業の記録(ビデオ)を参考に独自の教材を使って効果のある授業を各クラスで実施できるように研究していきたい。

  2. 教科の中での知的財産教育

    本校では、今年度も各教科で2回の教科内での知的財産教育の取り組みを実施する予定を立てた。(前期1回、後期1回)公開授業では各教科で知的財産教育の部分をどこの単元で生かすかを研究した。どの教科も創造性を育てる部分をメインに取り組んだ。教科会で教科担当者が打ち合わせをしながら指導案を立て、公開授業を実施した。

    1. 教科の中に知的財産教育を取り入れた公開授業
      1. 英語Ⅱ 2年1組【過剰な条件で働く子ども達の現状を理解し「児童労働反対」のシンボルマークとキャッチフレーズを考える。】
        過剰な条件で働く子ども達の現状を理解し、彼らの状況を広く世界に発信するために「児童労働反対」のシンボルマークとキャッチフレーズを考えさせたい。さらに考案した作品には著作権が発生することも合わせて理解させたい。
      2. 国語Ⅱ 2年2組【国語「環境ポスター」のコピー(文案)を考案しよう】
        国語科の現代文において、ポスターのコピー(文案)を創造するなかで、生み出す大変さを実感するとともに、その作業を通して生まれたキャッチコピーには、創作したグループの著作権が発生していることを理解する。そこから、作者が創造した文章、言葉には、その作者の苦労や思いが詰まっていることを理解し、今後、自分が言葉によって表現する際にはそうした思いを理解しながら創作する気持ちを育てる。
      3. 家庭科(家庭基礎) 2年3組【果汁20%のジュースを売り出そう】
        日常生活でよく口にするジュースについて、なぜ果汁20%ジュースでもおいしいのか考え、実際に100%ジュースを使用して20%ジュースを作成・試飲をして味を確認する。その後、味を調整して班ごとにオリジナルジュースを作成し、ジュースのネーミング、パッケージデザインを考え、発表を行う。パッケージデザインについては定められたルールがあることを伝えるとともに、作成したデザインには著作権があることに気づかせる。
      4. 数学 2年4組【図形の対象性(回転)を利用し繰り返し模様を作る。】
        ・図形の対象性を利用し、繰り返し模様を作る。
        ・数学の授業における点の対称移動や2次関数のグラフの平行移動と関連させ、授業の中にものを作るという要素を取り入れ、創造性を養う。
    2. 教科の中での知的財産教育を終えて

      教科の中での知的財産教育では、知的財産権にとらわれず、のびのびとした創造や、課題にチャレンジし、問題の解決方法を仲間達で模索していく積極的な姿勢を育成していきたい。意欲的な素晴らしい授業の組み立てが創造性(著作物を生み出す力)を育てる知的財産教育と相通じるものであると信じる。今年度も、各教科で創意工夫が各方面に見られ、教科本来の学習の中に、著作権(知的創造活動)を取り入れることにより、授業の奥行きと幅が広がったようである。

  3. 体育祭・文化祭等の行事での取り組み

    学校行事において、やはりクラスや団(グループ)のシンボルとして各種のキャラクターを取り入れた旗や看板が作られた。行事に取り組む事前学習として、著作権教育を行った。その結果、例年テレビアニメを取り入れた安易な看板や旗ではなく、クラス独自で創造性溢れるオリジナルな作品になり、著作物の創造者としての意識の芽生えが感じられたようである。特に本年は3年目になるクラス旗作りに著作権教育の成果が顕著に現れた。

  4. 生徒講演会

    実施日:平成21年2月20日(金)
    JASRAC (社団法人日本音楽著作権協会)の送信部 部長小島芳夫氏を招きコモンホールで1学年の生徒を対象に、「ネットワーク社会の音楽著作権 〜著作者の心〜」のテーマで講演を頂く。特に生徒が、学校の行事での使用や、スライドのBGM等で、CD、DVD、インターネット上の音楽ファイルなどで音楽著作権を取り扱う時のルールを学び、著作権の大切さ、著作者の創作の苦労を測るなど、深い内容まで学習した。

  5. 情報の教科との連携

    本校の情報教育は、座学やコンピュータ実習の各単元で、常に著作権を取り扱っており、今年度も年間を通して体系的な著作権教育を実施している。特にインターネット上から情報や図、写真の扱いにおいては、指導が徹底しており、安易な情報収集でのレポート作りを諫める教育をしている。ホームページへの写真の掲載、論文の引用など、毎時間の教材作りには著作権尊重という意識を通し、判断できる生徒の育成を目指した。

  6. LHRでの取り組み

    本校では担任とクラスが主体のホームルーム活動が授業時間の中に用意されており、本年度は著作権教育推進という立場で、特に学校行事の準備段階から、この時間を積極的に活用し著作権についての理解や、活用を話し合う機会を多く設けた。参考になるテキストは、文化庁長官官房著作権課発行の「学校における教育活動と著作権」、「著作権教育5分間の使い方」、社団法人著作権センターの「はじめての著作権講座」、「はじめての著作権 講座Ⅱ」、「学校教育と著作権」、「私的録音録画と著作権」を使い、時間や内容については担任判断で実施して頂いた。

  7. 高校現代文明論での取り組み

    本校の高校現代文明論は、「人生にとって大切なものは何か」「我々はいかに生きるべきか」を自ら考え、しっかりとしたものの見方、考え方を養い、人間、社会、自然、歴史、世界等のテーマについて考る学習である。創立者が示した「物質文明と精神文明との調和した新しい文明とはいかにあるべきか」を探求する姿勢を養う教科である。この教科には後期にテーマ別学習が準備されており、各グループがそれぞれのテーマで資料を調べ発表した。いずれも資料を調べ、グループ毎にまとめさせるのであるが、資料の引用、出典の明記、図版や写真の取り扱いに関して著作権を守る教育を積極的に実施した。

  8. まとめ

    本校の著作権教育も3年目を迎え、昨年同様に知的財産教育推進委員会(教頭、教頭補佐、教務主任、研究主任、各教科1名)が推進役となって研究を進めた。東海大学の知的財産教育は幼稚園から大学院までを対象に、7年前から実施されている。「著作権」もその中で扱われており知的財産権の単元で扱われている。今年度も6月に本校が文化庁より、著作権教育研究協力校の指定を受けてより、「著作権」について昨年同様の取組を行った。今回も本校知的財産教育で「産業財産権」に関する事項が多く含まれている。その件を踏まえて「著作権」との類似点、相違点を対比させた教育に取り組んだ。そのため報告書が「著作権」の分野のみでない広がりになったことをご理解頂きたい。著作権学習の効果として、生徒への提出レポートに引用や出典が明記され、インターネットの資料にはURLが明記される事が多くなって来た。そのことは著作権を守ろうとするマインドが育って来た結果であろうと思われる。今年度も公開授業を通して著作権の意識が高まり、身近な著作権に対する問題や文化の創造者を尊ぶ意識レベルが上がったのではないだろうか。3年目を迎える公開授業で著作者がいかに人生をかけた作品を作り上げていったのか、それゆえ著作物を安易にコピーするのではなく大切に守り、使用にはルールに沿うことが大切かを学んだ。教科の中での知的財産教育(著作権教育)実施が、教科の内容を深めるだけではなく、生徒自身の心を育てる事例が教育の可能性を示唆したのではないだろうか。今後の本校の取り組みとしては、著作権教育を通して創造性を伸ばし、知的財産を大切にするマインドを育てるところにあると思われる。最後に著作権教育を推進するにあたってご支援を頂いた文化庁著作権課の関係各位、大学や各方面の教育機関の方々に深く感謝の意を捧げる。