「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第1章 1. (2)
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(2)著作権に関する契約について |
著作物を利用するための契約は、著作物の利用について了解を得る契約(利用許諾契約)と、著作権の譲渡を受ける契約(著作権譲渡契約)の二つに大別できます。 |
<1> | 利用許諾契約 |
(ア) | 利用者は契約に定められた範囲内で著作物を利用できます。 |
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(イ) | 著作物を利用する権利は、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できません。 |
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(ウ) | 利用者がさらに第三者に対して著作物の利用を認められるようにするためには、その旨規定する必要があります。 |
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(エ) | 独占的に利用したい場合は、その旨規定する必要があります。 |
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(オ) | 使用料の支払いについて規定するようにしましょう。 |
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(カ) | 契約期間は必要に応じて規定しましょう。 |
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(キ) | 著作者人格権についても必要に応じて規定しましょう。 |
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(ク) | 利用の了解を得た者が著作権侵害をした者を訴えることは原則としてできません。 |
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コラム | 他人の著作物の利用について |
講演会や演奏会等で他人の著作物を利用することがあります。たとえば講演中に他人の著作物である写真や図表をスクリーンに映したり、他人の楽曲を演奏するような場合です。このような場合は、原則として、その著作物の著作権者の了解も必要です。 なお、著作権法では、引用(第32条第1項)、非営利・無料・無報酬の上演・演奏・上映(第38条第1項)など、一定の例外的な特別な場合には、権利者の了解なしに著作物等を利用できることとされていますが、厳格な条件が付されていますので、条件を満たしているかよく確認する必要があります。了解なしに使える場合について詳細を知りたい方はこのホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。 実演、レコード等が利用されている場合も同様です。また、人物の肖像が使われている場合などについては、肖像権についても注意する必要があります。 |
<2> | 著作権譲渡契約 |
(ア) | 著作物の創作を依頼し、報酬を支払ったとしても、著作権が譲渡されたことにはなりません。 |
謝金や報酬等を支払って著作物を創作してもらい、作品の納品を受けたとしても、原則として、著作権まで譲渡されるものではありません。著作権の譲渡を希望するときは契約書に明記する必要があります。 |
(イ) | 著作権が譲渡されると、譲受人は著作物を自由に利用したり、他人の利用を了解することができるようになりますが、譲渡人は著作者であっても譲受人の了解を得られないと著作物を利用できなくなります。 |
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(ウ) | 譲渡する著作権の範囲を明確にする必要があります。 |
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(エ) | 二次的著作物に関する権利を譲渡する場合は、その旨明記する必要があります。 |
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すべての著作権を譲渡する場合の規定例
第○条 (著作権の譲渡) 甲は乙に対し、本著作物に関する全ての著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を譲渡する。 |
(オ) | 著作者人格権は譲渡することができないため、必要に応じて著作者人格権についても規定しましょう。 |
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コラム | 著作権の登録について |
著作権の二重譲渡があった場合(たとえばAさんがBさんにある著作権を譲渡したにもかかわらず、別のCさんにも同じ著作権を譲渡したような場合)、文化庁長官の登録を受けている者に権利が認められることになっています(著作権の登録。第77条)。登録方法など詳細については、このホームページに掲載されている「著作権の登録制度について」または著作権Q&Aをご覧ください。 また、この登録は、両当事者(譲受人および譲渡人)が行うものですが、譲渡人の承諾があれば譲受人単独で登録することもできるため、譲受人が必要に応じて登録できるよう、契約書に登録を承諾する条項を設けておくこともあります。 |