2015年3月26日
特別展覧会「桃山時代の狩野派 永徳の後継者たち」
京都国立博物館上席研究員 山本英男
慶長5年(1600)に勃発した関ヶ原の合戦。豊臣から徳川へと天下の趨勢が傾いたこの出来事以降,武士はもとより,絵師もまた,生き残りをかけた戦いを繰り広げました。特に権力者層と密接に関わってきた狩野派にとってこの時期は,棟梁・永徳の死や,ライバル・長谷川等伯の台頭など,一門にとって最も苦しく,また難しい判断を下さなければならない激動の時代でした。頼るべき権力者を読み誤ることは,そのまま自派の滅亡へと繋がりかねなかったといえましょう。
そうした極限の状況下で,狩野派は画期的な策に打って出ました。すなわち,世にいう三面作戦です。例えば,豊臣には門弟の山楽や内膳,徳川には長信(永徳の弟)を,更に朝廷には宮廷絵所預の地位についた孝信(永徳の次男)をあてるという具合に,豊臣と徳川,そして隠然たる力をもつ朝廷と,常に接触する絵師をそれぞれ配し,どこが滅んでも狩野派が存続できる体制を作り上げたのです。そして,大きな仕事には棟梁の光信(永徳の長男)のもとにすべての絵師が結束し,事にあたるという周到さでした。
この展覧会では,永徳という大黒柱を失った狩野派が,この三面作戦を通じて,盤石の地位を獲得していく歴史をたどろうとするものです。展示総数は69件。うち国宝は1件,重要文化財23件,重要美術品1件を数えます。いかにも桃山時代らしい,華やかな金碧画の世界をお楽しみください。

重要文化財 四季花木図襖 狩野光信筆 滋賀・園城寺(全期間展示)
永徳の後継者・光信
永徳の長男。父の急逝に伴い,若くして狩野派の棟梁となった。永徳風の大画も手掛けたが,むしろその真骨頂は大和絵の風情を湛えた繊細優美な画風にある。豊臣秀頼の命で描いた「四季花木図襖」(重要文化財・園城寺)はその典型作。

牡丹図襖 狩野孝信筆 京都・仁和寺(全期間展示)
光信亡き後の大黒柱・孝信
永徳の次男。宮廷絵所預として活躍し,兄・光信の没後は幼い兄の子・貞信の後見役となって狩野派を支えた。のちに江戸狩野の中核をなす探幽・尚信・安信を育てたことでも有名。

国宝 花下遊楽図屏風(左隻) 狩野長信筆 東京国立博物館(4/28~5/17後期展示)
初めて徳川幕府に仕えた狩野派絵師・長信
永徳より34歳も年下の弟。早くから徳川幕府の御用絵師となり,探幽ら三兄弟の江戸移住にあたっては,派内の長老格として尽力した。切手の図案にもなった「花下遊楽図屏風」(国宝・東京国立博物館)は,長信の名を世に知らしめる名品。風流踊りに興じる男装の麗人たちの姿がいきいきととらえられている。

唐獅子図屏風 狩野山楽筆 京都・本法寺(全期間展示)
京狩野の祖・山楽
もとは浅井家家臣の子。のちに父が豊臣家に仕えた関係から,秀吉の推挙で永徳の弟子となった。豊臣家滅亡後は徳川幕府から追われたが,松花堂昭乗や公家の九条家の取りなしにより事なきを得たという。京都を地盤に活動した京狩野の祖としても名高い。
京都国立博物館
〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
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- (特別展覧会開催中)9:30~18:00,毎週金曜日は9:30~20:00 ※入館は各閉館の30分前まで
- 休館日
- 毎週月曜日 ※ただし5月4日(月・祝)は開館
- 展覧会名
- 特別展覧会「桃山時代の狩野派 永徳の後継者たち」
- 開催場所
- 京都国立博物館 明治古都館
- 開催期間
- 2015年4月7日(火)~5月17日(日)
- 「桃山時代の
狩野派」
観覧料 - 一般 1500円(1300円)
大学生 1200円(1000円)
高校生 900円(700円)
中学生以下無料
※( )内は前売りおよび団体20名以上。
※障害者の方と介護者(1名)は,障害者手帳などの御提示で無料となります。
※本料金で平成知新館 名品ギャラリーの展示も御覧いただけます。
※キャンパスメンバーズは,学生証を御提示いただくと団体料金になります。 - ホームページ
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