2015年5月1日
はじまりの御仏たち
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 西田紀子
都城発掘調査部 丹羽崇史
飛鳥は春の花の饗宴が終わり,緑が楽しみな季節となってきました。自然と人間の営みが一体となった美しい景色は,まさに日本人の心のふるさとと言えるでしょう。この地は,6世紀から7世紀の古代国家成立の時期,政治や文化の中心地でした。石敷きの宮殿,壮大な古墳,華麗な寺院・・・のどかなまほろばの里には,華やかな都の景色が広がっていたのです。
飛鳥めぐりをしていくと,宮殿の遺跡や古墳と並んで,多くの寺院と出会います。飛鳥は日本の仏教文化のはじまりの地。6世紀末から7世紀にかけて,多くの寺院が造営され,仏像が安置されました。しかし,当時の伽藍や堂塔も,信仰の対象だった仏像も,天災などでその多くが失われました。寺跡からは様々な仏像が出土し,個性的な飛鳥の御仏のすがたをみることができます。
古代国家が誕生し,仏教が伝来した飛鳥の地に,飛鳥資料館が開館してから,今年で40周年を迎えます。飛鳥資料館の展示がはじまった頃,仏像研究は当館の重要なテーマのひとつでした。昭和50年(1975)の開館記念展覧会は「仏教伝来 飛鳥への道」と題し,仏教伝来の道筋を仏像の展示で示しました。その後も,「飛鳥・白鳳の在銘金剛仏」(1976),「古代の誕生仏」(1978)など古代の仏像の研究をすすめる一方で,飛鳥地域に伝わる仏像の調査も精力的におこなってきました。
今年,開館40周年という節目の年にあたり,当館では,あらためて日本の仏教のはじまり,飛鳥資料館のはじまりをふりかえって「飛鳥時代の仏像」に焦点をあてた展示を開催します。これまでの仏像研究は,寺院などに伝わってきた仏像を主な対象としてきました。しかし,今回は,考古学的な観点で,地中から目覚めた御仏たちを紹介します。飛鳥時代には,鋳造による金銅仏,金属板を打ち出した押出仏,型取りした粘土を焼成した塼仏,土から形づくった塑像など,様々な技術を駆使して仏像が造られていました。出土品だからこそ見える仏像の内部や裏側,出土品をもとに現代の匠たちが復元製作した仏像などをあわせて展示し,当時の仏像の製作技術をわかりやすく紹介します。また,出土品の特徴から,寺院や仏像を装飾した「荘厳」のあり方にも迫りました。
この春はぜひ飛鳥資料館の特別展で,「飛鳥の御仏の世界」を体感してください。

鳥居古墳出土金銅製押出仏
(三重県総合博物館写真提供)

伝橘寺出土火頭形三尊塼仏
(奈良国立博物館写真提供
森村欣司氏撮影)
奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄・橿原神宮前駅,飛鳥駅から「かめバス(周遊)」飛鳥資料館下車
JR・近鉄桜井駅から石舞台行バスで飛鳥資料館下車 - 開館時間
- 9:00~16:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日、特別展期間中は無休
- 観覧料
- 一般¥270,大学生¥130
※高校生及び18歳未満,65歳以上:無料(年齢のわかるものが必要です)
障がい者とその介護者各1名は無料(手帳の提示が必要です) - ホームページ
- http://www.nabunken.go.jp/asuka/
- 講演会
- 5月9日(土)午後2時
大脇潔氏(奈良文化財研究所名誉研究員・近畿大学元教授)
「塼仏学研究最前線―奉献から荘厳・三尊から群像ヘ―」 - ギャラリートーク
- 4月25日(土)午前10時30分・午後2時
5月9日(土)午前10時30分
6月14日(日)午前10時30分・午後2時