2015年11月2日
平城宮跡資料館 平成27年度秋期特別展
「地下の正倉院展 造酒司木簡の世界」
奈良文化財研究所企画調整部展示企画室アソシエイトフェロー 中村 玲
奈良文化財研究所では,2007年より秋期特別展「地下の正倉院展」を開催し,平城宮・平城京跡から出土した木簡の実物を展示しています。奈良国立博物館では「正倉院展」が開催されていますが,同じ奈良時代の品でも,こちらは奈良の都の地下に眠っていた木簡を一堂に集めた展覧会です。
今年,平城宮の「造酒司」という役所があった場所から,およそ50年前に出土した木簡568点が,国の重要文化財に指定されました。これを記念して,今年度は,造酒司出土の木簡の中から選りすぐったものを御覧いただきます。
造酒司とは,酒や酢をつくる役所で,平城宮の北東部に位置しています。天皇に献上する酒のほか,元旦や七夕など季節の行事や,外国からのお客様のために開かれる宴会用の酒づくりなども担当していました。発掘調査では,「造酒司」と記された木簡や,他の役所から造酒司あてに酒を求める内容の木簡がみつかったことなどにより,この調査地区が造酒司であることがわかりました。
「造酒司」と書かれた木簡
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
(Ⅰ期)10月17日(土)~30日(金)
造酒司へ酒を請求する文書の木簡
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
(Ⅱ期)10月31日(土)~11月15日(日)
造酒司で出土した木簡からは,酒に関わる様々な情報を知ることができます。例えば,酒の原料となる米は酒づくりに欠かせないものですが,「酒米」と書かれた木簡をはじめ,名産地から送られた米の荷札が数多くみられるのは,造酒司ならではといえるでしょう。
また,神亀元年(724)11月23日に行われた,聖武天皇の大嘗祭(天皇一代に一度の重要な儀式)に関わる木簡もみどころの一つです。平安時代の文献史料である『延喜式』によれば,造酒司は大嘗祭のお供えのために9種類の植物を準備するという勤めがありましたが,それらと同じ植物の名前が記された木簡などもみつかっています。
紀伊国から送られた酒米の荷札
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
(Ⅲ期)11月17日(火)~29日(日)
大嘗祭で使われる植物名が書かれた木簡
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
(Ⅱ期)10月31日(土)~11月15日(日)
造酒司跡では,現在までに5回の発掘調査が行われており,それらの成果もあわせて御紹介します。
秋の一日,造酒司出土木簡の芳醇な世界を,じっくりと味わっていただければ幸いです。
酒器として使われたとみられる土器
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
10月17日(土)~11月29日(日)
造酒司内の溝から出土した舟形祭祀具
奈良時代・8世紀 奈良文化財研究所蔵
展示期間:
10月17日(土)~11月29日(日)
奈良文化財研究所平城宮跡資料館
(住所)〒630-8577 奈良県奈良市佐紀町247-1
- 問合せ
- 0742-30-6753(奈良文化財研究所連携推進課)
- 交通
- 近鉄奈良線大和西大寺駅北口より東へ徒歩10分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(11月2日,23日は開館。11月24日(火)は休館)
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- 奈良文化財研究所平城宮跡資料館ウェブサイト
http://www.nabunken.go.jp/heijo/museum/
館内では,ボランティアによる展示解説を行っております(無料)
平城宮跡資料館 平成27年度秋期特別展
「地下の正倉院展 造酒司木簡の世界」
- 開催期間
- 10月17日(土) ~11月29日(日)
(Ⅰ期)10月17日(土)~30日(金)
(Ⅱ期)10月31日(土)~11月15日(日)
(Ⅲ期)11月17日(火)~29日(日) - 場所
- 平城宮跡資料館 企画展示室
- ギャラリートーク
- (Ⅰ期)10月23日(金)(Ⅱ期)11月6日(金)(Ⅲ期)11月20日(金)各回14:30から