2017年1月23日
京都国立博物館
特集陳列「皇室の御寺 泉涌寺」
京都国立博物館 学芸部保存修理指導室 主任研究員 羽田聡
京都の東山に壮大な伽藍をかまえる泉涌寺は,いまから800年ほどまえ,鎌倉時代の武将,宇都宮信房(1156~1234)から寺地の寄進をうけた俊芿(1166~1227)により開創されました。寺名の由来は,伽藍を造営するさい,もともと仙遊寺と名付けられていた境内の一角から清水が湧き出たことによるといいます。

東山泉涌律寺図 京都・泉涌寺
肥後国飽田郡(現在の熊本県上益城郡)に生まれた俊芿は,幼くして仏門に入り,34歳となった建久10年(1199)には求法のため中国の宋に渡りました。滞在すること12年,天台山や雪竇山など各地をめぐり,律を中心に禅や天台を始め,様々な学問をおさめ帰国します。こうして宋の寺院を手本に建立された泉涌寺には,例えば「観音菩薩坐像(楊貴妃観音)」(重要文化財)のように,俊芿あるいはその弟子たちが中国からもたらした文物が数多く伝わっており,これは同寺の美術を語る上での大きな特色といえるでしょう。
また,泉涌寺は「御寺」の名が示すように,朝野の崇敬をうける中でも,とりわけ皇室の菩提寺として篤い信仰を集めてきました。こうした皇室とのつながりは,後鳥羽上皇(1180~1239)の俊芿への帰依に始まり,貞応3年(1224)には後堀河天皇の綸旨により御願寺(天皇家の祈願を修する皇室とのつながりが深い寺)となり,さらには四条天皇(1231~1242)の葬礼が同寺で行われて以来,より強くなったと考えられています。両者の関係を物語るように,現在,歴代天皇の遺愛品や肖像画を核に,関連する作品が豊富にのこされており,他の寺院とは異なる特徴となっています。

重要文化財 後陽成天皇像 狩野孝信筆 京都・泉涌寺
この特集陳列では,以上のような「日中の交流」「皇室とのつながり」という2つのテーマを柱とし,書跡・絵画・彫刻・工芸品など,様々な作品を通じ泉涌寺の育んだ長い歴史を紹介いたします。貴重な文化財が寺外で公開されるまたとない展覧会となりますので,この機会に多くの方に御覧いただきたく思います。

国宝 附法状 俊芿筆 京都・泉涌寺
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
- 問合せ
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- 交通
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京阪電車:七条駅下車,東へ徒歩7分 - 開館時間
- 火曜日~木曜日 9:30~17:00
毎週金曜日・土曜日は20:00閉館 ※(入場は各閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日
特集陳列「皇室の御寺 泉涌寺」
- 開催期間
- 平成28年12月13日(火)~平成29年2月5日(日)
- 開催時間
- 火曜日~木曜日 9:30~17:00
毎週金曜日・土曜日は20:00閉館 ※(入場は各閉館30分前まで) - 開催場所
- 京都国立博物館 平成知新館 1階2・3・5室
- 観覧料
- 一般¥520(410), 大学生¥260(210), 高校生以下及び満18歳未満,満70歳以上は無料
※( )は20名以上の団体料金
※障がい者の方とその介護者1名は無料(障がい者手帳等を御提示ください) - ホームページ
-
http://www.kyohaku.go.jp/jp/project/2016_mitera.html