2017年4月5日
快慶のすべてがわかる。仏像ファン必見の展覧会
「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」
奈良国立博物館 学芸部情報サービス室長・岩井 共二
4月8日から,奈良博(ならはく:奈良国立博物館)では,特別展「快慶―日本人を魅了した仏のかたち―」を開催します。仏像好きを自認するみなさん。この展覧会を見逃したら,一生後悔しますよ。
仏像好きの人でなくても「運慶・快慶」という二人の名前は聞いたことがあると思います。二人とも,鎌倉時代を代表する仏師(ぶっし:仏像を作る人)です。一緒に語られるので,運慶と快慶は,親子なのか,兄弟なのかと思うかも知れません。快慶は,運慶とは親子でも兄弟でもありません。快慶は,運慶のお父さんの康慶がやっている仏像制作工房の仏師でした。だから運慶と快慶は「兄弟弟子」という言い方はできるでしょう。でも,それ以外の素性はわかっていません。生まれた年もわかりません。最近になって,嘉禄3年(1227)には亡くなっていたというところまでわかるようになったというぐらいです。快慶は,まだまだ謎の多い仏師なのです。
最近,運慶については,本が何冊も出ています。今年は9月からトーハク(東京国立博物館)で,運慶の展覧会も開かれます。でも「快慶」というタイトルの本は,見かけませんよね。「運慶・快慶」と並んで語られるわりには,快慶は,やや人気の面では,運慶ほど人気はないのでしょうか。
運慶と快慶は,共にリアルな表現を目指した鎌倉時代の仏師ですが,両者を見比べたとき「運慶は立体感があって迫真的である。それに対して快慶は絵画的で端整である」というような言い方がされます。立体として作られた仏像で絵画的という言い方をすると,ともすると,「立体感がない」とかマイナスな評価に思えてしまうかもしれません。でも,快慶の作り出した「安阿弥様」という仏像のスタイルは,仏像のひとつのスタンダードとして今日まで続いています。ですから「日本人を魅了した仏のかたち」を作り出したのは,実は快慶だったのではないかと言われているのです。
海外では,日本のマンガやアニメの人気が高いのは御存じでしょう。それらは劇画タッチのリアルな作品ばかりではありません。いわゆるマンガ的な2次元的表現が魅力の作品が多くあるように思います。快慶の仏像は,リアルさがありながらも,どこか絵的と言われるのは,2次元(絵画)の仏さまを3次元(彫刻)で表現した,いわば2.5次元的な魅力があるように思います。そうだとすれば快慶の仏像は,「クールジャパン」と言われるような,海外で評価されている現在日本の芸術文化の先駆けを作ったアーティストだということもいえるのではないでしょうか?

釈迦如来立像 快慶作
アメリカ・キンベル美術館 Kimbell Art Museum, Fort Worth, Texas
アメリカに渡った快慶の仏像の1体。海外に行ってから初めての里帰り。興福寺の周辺にあった仏像の可能性があります。その線の細い顔つきなどに快慶独特の個性が見られます。表面のきらびやかな文様も鎌倉時代のものが残っています。
今回の展覧会は,これまで「運慶・快慶」とか「慶派」とか,グループの一員でしか取り上げられてこなかった仏師快慶の初の《大回顧展》ともいえる空前絶後の展覧会です。若い頃から晩年まで,快慶作の仏像の実に9割近くが一堂に会します。これまで運慶に比べて注目されてこなかった快慶ですが,この機会にその全貌と魅力があきらかになります。東京では開催しません。奈良でしか開催しません。是非,奈良国立博物館まで足を運んでください。

重文 不動明王坐像 快慶作
京都・正壽院
快慶の作った仏像。リアルな表情や体つきが特徴。怒った顔をした仏さまなんだけど,怖さの中に,どこかキュートな感じも。 6月4日まで快慶展で御覧いただけます。
ところで,みなさんは御存じでしょうか? 大阪の河内長野市にある天野山金剛寺の仏像が国宝に指定されることが決定したというニュース。現在金剛寺はお堂の修理を行っており,その間,本尊の大日如来坐像と脇侍の一体不動明王坐像は,京都国立博物館で預かって,平成知新館で陳列中です。そしてもう一体の脇侍の降三世明王坐像は,現在なら仏像館に陳列されているのです。作者は,快慶の一番弟子の行快です。
新たに国宝に指定されることが決定した仏像が,奈良博で御覧いただけます。なら仏像館は毎週金曜日と土曜日は午後8時まで開館しています。快慶展は,午後7時までで終わります。そこから閉館の8時まで,じっくりと御覧になってはいかがでしょうか?

国宝 降三世明王坐像 行快作
大阪・金剛寺
快慶の弟子,行快が作った像。京都国立博物館に寄託中の不動明王像のほうに銘文があったので,作った年と作者がわかったのです。像高2メートルの巨大な像。お師匠さんの快慶が作った不動明王像と,どことなく似てます。
奈良国立博物館
(住所)〒630-8213 奈良県奈良市登大路町50番地
- 問合せ
- 050-5542-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 近鉄奈良駅下車 登大路町を東へ徒歩約15分
JR奈良駅又は近鉄奈良駅から市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ - 開館時間
- 午前9時30分~午後5時まで ※毎週金,土曜日は,名品展・特別陳列のみ午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日。)
- 観覧料
- 一般520円(410円),大学生260円(210円)
※()内は20名以上の団体料金
※高校生以下及び満18歳未満,満70歳以上の方は無料です(年齢のわかるものが必要です)。
※障害者の方とその介護者各1名の方は無料となります(障害者手帳が必要です)。 - ホームページ
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http://www.narahaku.go.jp/
特別展「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」
- 開催期間
- 4月8日(土)~6月4日(日)
- 開催時間
- 午前9時30分~午後5時まで
※毎週金・土曜日は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日 ※ただし5月1日(月)は開館
- 観覧料
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一般 高校・大学生 小・中学生 ペアチケット 当日 1,500円 1,000円 500円 前売・団体 1,300円 1,000円 300円 2,400円(前売)
※団体は20名以上です。
※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
※この料金で,名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。
※奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は,当日券を400円でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出,学生証を御提示ください。 - 展覧会詳細ページ
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http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2017toku/kaikei/kaikei_index.html