2017年7月24日
親と子のギャラリー「びょうぶとあそぶ」
東京国立博物館 博物館教育課長 小林牧
東京国立博物館では,毎年夏休みに「親と子のギャラリー」と題したファミリー向け展示を行っています。
今年のテーマは「びょうぶ」です。
皆さんのおうちに屏風はありますか?
学校団体で訪れる子供たちに聞くとたいていの場合,一人も手があがりません。 見たことがあるといえば,有名人の結婚記者会見で新郎新婦のバックに建てられた金屏風か,お雛様の飾りくらいでしょうか。
屏風は本来,部屋の間仕切りや目隠しとして使われる暮らしの「道具」でした。そこに描かれた絵画は,日々の暮らしを彩るためのもの。ガラスケースの中に納められることを想定してつくられたものではなかったはずです。そこで,今回は高精細複製画を使って,屏風をガラスケースなしで,畳で座ってみるという屏風本来の鑑賞スタイルを実現させました。複製といっても研究員監修のもと,ほんものとほとんど見わけがつかないくらいに精巧に作られたものです。
御覧いただくのは,当館の収蔵作品の中でも高い人気を誇る長谷川等伯の「松林図屏風」(原本は国宝)です。
「松林図屏風」(綴プロジェクトによる高精細複製)
原本=長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀
原本,複製とも東京国立博物館蔵
畳に座って,のんびり眺める「松林図」には,展示室でガラス越しに見るのとは違う何かがあるはずです。
さらに,今回の展示では,屏風と映像をミックスさせるという新しい試みに挑戦しました。会場には高さ約5メートル,直径約15メートルの半円形の大型スクリーンを設置し,ダイナミックな映像を投影します。映像は,等伯による「瀟湘八景図屏風」(東京国立博物館蔵)をもとにした大きな風景から始まります。松林の向こうに広がっていた風景や,そこに吹いていた風や,飛んでいたかもしれない鳥たちに,会場にいる皆さんの想像力をどんどん広げていくのが,この映像の役目です。映像が終わったら,そこに残るのは鑑賞者と屏風のみ。
みなさんの自由な想像力で,自分だけの松林図の世界に浸ってください。
本館特別5室 松林であそぶ 会場イメージ
等伯の松林であそんだあとは,尾形光琳による「群鶴図屏風」と映像で,金屏風のつるとあそんでいただきます。
「群鶴図屏風」(綴プロジェクトによる高精細複製)
原本=尾形光琳筆 江戸時代・17~18世紀
複製=東京都美術館蔵
Facsimiles of works in the collection of the Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, DC:Purchase, F1956.20, F1956.21
この夏はぜひ,お子さんと一緒に,トーハクであたらしいアート体験を楽しんでください。
親と子のギャラリー びょうぶとあそぶ 高精細複製によるあたらしい日本美術体験
東京国立博物館 本館 特別4室・特別5室 2017年7月4日(火)~2017年9月3日(日)
東京国立博物館
(住所)〒110-8712
東京都台東区上野公園13-9
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分,東京メトロ上野駅・根津駅,京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
- 開館時間
- 火曜日~木曜日 9:30~17:00
毎週金・土曜日は21:00まで,日・祝日は18:00まで
※入場は閉館の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日 ただし,7月17日(月・祝)・8月14日(月)は開館,7月18日(火)は休館
- 観覧料
- 一般\620,大学生\410
- ※高校生以下及び18歳未満と満70歳以上は無料。入館の際に年齢のわかるものを御提示ください。
- ※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などを御提示ください。
- ※子供(高校生以下及び満18歳未満)と一緒に来館した入館者(子供1名につき同伴者2名まで)は100円割引
- ※特別展は別料金
- ホームページ
- http://www.tnm.jp/ びょうぶとあそぶ特設サイト