2017年11月10日
秋期特別展
「地下の正倉院展 ―国宝 平城宮跡出土木簡―」
奈良文化財研究所企画調整部展示企画室 アソシエイトフェロー 座覇 えみ
平城宮跡資料館では,毎年秋に「地下の正倉院展」を開催し,平城宮・京から出土した木簡の実物展示を行ってきました。本年は,去る9月15日に国宝に指定されたばかりの「平城宮跡出土木簡」の展示を行います。

「地下の正倉院展 ―国宝 平城宮跡出土木簡―」
「地下の正倉院展」は,2007年に平城宮の内裏北外郭官衙出土木簡が重要文化財に指定されたことをうけ,貴重な文化財である木簡を広く一般の方々に御覧いただく機会を設けることを目的として始まりました。
平城宮跡出土の木簡はこれまで,計4件,2,875点が重要文化財指定を受けてきました。そして9月,これら重要文化財を統合しつつ,新たに309点の木簡を加えた計3,184点の木簡が,「平城宮跡出土木簡」として国宝に指定されたのです。木簡としては初めての国宝指定となります。
今回展示されている木簡は全て国宝。1点1点,じっくりと御覧ください。

(裏)

(表)
「関々司」と書き出す奈良時代の過所(パスポート)木簡
奈良文化財研究所蔵
国宝「平城宮跡出土木簡」には,奈良時代の木簡はもちろん,平城宮が造営される直前の時代の木簡も含まれています。例えば65cmもある大型の過所木簡。関所を通過するためのパスポートとして用いられたこの木簡は,平城宮の下層遺構(下ツ道西側溝)から出土しました。まだ平城宮が造営されていない時代に,関所を通過して不要になった木簡が,将来の平城宮造営の地に投げ捨てられたのでしょう。

「大野里」からの米の荷札
奈良文化財研究所蔵

「五十戸家」などと墨書された須恵器の杯と蓋
奈良文化財研究所蔵
「大野里」は藤原宮跡出土木簡にみえる「倭国所布評大野里」にあたると考えられています。倭国所布評はのちの大和国添上・添下郡にあたり,平城京も元来この地域に含まれます。しかし,大野里の名は,後世の史料には現れません。あるいは大野里は,平城京が造営されたちょうどその地に所在しており,都の造営に伴って姿を消したのでしょうか。
これと関連するように,「大野里」木簡が出土した遺構からは「五十戸家」などと書かれた墨書土器も出土しています。里の役所を指すこの表記が平城宮内から出土した墨書土器にみえるということは,大野里の中心施設は,後の平城宮造営の地にあったのかもしれません。

平城宮跡で初めての木簡が出土
今回の展示では,国宝となった木簡とともに,これらの木簡が出土した発掘調査の写真も多数展示しています。上の写真は,平城宮跡で初めて木簡が出土したときの写真です。SK219と名付けられたゴミ捨て穴から,約40点の木簡が出土しました。木簡の出土は当時の歴史学者にとっても大事件で,1月の寒空の下,連日研究者が発掘現場に足を運んだそうです。
「平城宮跡出土木簡」にはほかに,平安時代の木簡や宮内各地区の造営時期の木簡も含まれています。これまで60年近くにおよぶ平城宮跡の発掘調査,その最大の成果の一つである平城宮跡の木簡の世界をお楽しみください。
奈良文化財研究所 平城宮跡資料館
(住所)〒630-8577 奈良県奈良市佐紀町
- 問合せ
- 0742-30-6753(連携推進課)
- 交通
- 近鉄奈良線大和西大寺駅北口より東へ徒歩10分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は16:00まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
-
https://www.nabunken.go.jp/heijo/museum
秋季特別展「地下の正倉院展 ―国宝 平城宮跡出土木簡―」
- 開催期間
- 10月14日(土)~11月26日(日)
- 場所
- 平城宮跡資料館 展示企画室
- 会期
- (Ⅰ期)10月14日(土)~10月29日(日)
(Ⅱ期)10月31日(火)~11月12日(日)
(Ⅲ期)11月14日(火)~11月26日(日) - ギャラリートーク
- Ⅰ期:10月20日(金) Ⅱ期:11月2日(木) Ⅲ期:11月17日(金) 各日14:30~