2018年1月4日
飛鳥藤原地域における発掘調査の最新成果を紹介します。
平成29年度 飛鳥資料館冬期企画展
「飛鳥の考古学2017」
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 若杉 智宏
飛鳥地域では,近年も継続的な発掘調査が続いています。
小山田遺跡では,2014年度の調査で大規模な掘り割りが見つかり,大きな話題となりました。2016年度に行われた調査で横穴式石室の痕跡が確認され,この遺跡が古墳であることが確定しました。飛鳥の西南に位置する八角墳・牽牛子塚古墳は,真の斉明天皇陵であるとの説が有力になっています。その牽牛子塚古墳では,古墳築造に際し,周辺の山を削り,谷を埋め立てるなど,大規模な土木工事を行っていたことがわかりました。
また,中大兄皇子と中臣鎌足が初めて出会った「槻樹の広場」があったとされる飛鳥寺西方遺跡では,石組溝や石列,掘立柱建物など多くの遺構が見つかり,遺跡南部の土地利用の在り方が明らかとなってきました。飛鳥寺西方遺跡の南に位置する飛鳥京跡苑池では,南池の東側で門や建物が確認され,池に付属する施設の様相が徐々に判明しつつあります。
さらに,藤原京跡でも,新たな発見が相次いでいます。藤原宮大極殿院内庭の調査では,大極殿の南面に設けられた階段が確認され,その規模や配置が明らかとなりました。また,藤原宮の下層に通っていた,宮を造営する際の資材運搬用の運河からは,造営に利用された馬や牛の骨が多く出土し,宮殿の造営時における動物の使役の状況を知る手掛かりが得られました。2016年度に行われた藤原宮朝堂院朝庭の調査では,大宝元年(701)の元日朝賀の際に幢幡(儀式に使われた旗)を立てたとみられる7基の大型柱穴が見つかり,藤原宮における儀式の様子をうかがうことのできる大きな成果が上がりました。このほか,藤原京域では,藤原京右京九条二・三坊(瀬田遺跡)で行われた調査で,藤原京の遺構の下から,弥生時代終わりの大型円形周溝墓が発見され,前方後円墳の成立過程を考える上で新たな資料が加わりました。
今回の展示では,これらの遺跡を中心に,2015・2016年度に飛鳥藤原地域で行われた発掘調査の成果を紹介します。
この冬は,発掘調査が明らかにした飛鳥の新発見を是非お楽しみください。
藤原宮下層の造営運河から出土したウマやウシなどの骨
瀬田遺跡で見つかった大型円形周溝墓
奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄・橿原神宮前駅,飛鳥駅から「かめバス(周遊)」飛鳥資料館下車
JR・近鉄桜井駅から石舞台行バスで飛鳥資料館下車 - 開催期間・
開館時間 - 2017年1月26日(金)~3月18日(日) ※2月4日(日)は無料入館日
9:00~16:30(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 観覧料
- 一般¥270,大学生¥130
※高校生及び18歳未満,65歳以上:無料(年齢のわかるものが必要です)
障がい者とその介護者各1名は無料(手帳の提示が必要です) - ホームページ
- http://www.nabunken.go.jp/asuka/