2018年3月6日
東京国立博物館コレクションの保存と修理
東京国立博物館 保存修復課 宮田将寛
東京国立博物館では,約11万7000件ものコレクションがあり,絵画や書跡・工芸品・彫刻・考古遺物など様々な作品があります。
これら多くのコレクションは,虫に食べられたり,湿気でカビが発生してしまったりなど傷んでしまうことがあります。当館では,これらの劣化を防ぎ,より良い状態で皆様に御覧いただけるよう,温湿度の管理や虫の発生の防止など,展示室や収蔵庫内の環境を整備し,作品の劣化を予防しています。
しかし,どんなに予防をしていても時間の経過などにより劣化していき,それが原因となり様々な損傷が生じます。それらを早期に発見し対処していくことがとても重要です。作品の状態を常に観察し,どのような素材で作られているか,損傷がどのような状況なのかなどの調査を行います。肉眼で観察できない部分などは様々な光学機器を用いて状態を確認し,修理が必要かどうかを総合的に診断しています。

収蔵庫内の清掃作業

X線CT撮影装置による調査
必要と判断された作品は修理をすることになりますが,修理にも様々な規模があります。館外の技術者に依頼し,1年以上の長期間をかけて,解体などの大がかりな処置を伴う「本格修理」と,作品の折れや剥落の防止などの状態に合わせて,館内で最小限の処置を行う「対症修理(応急修理)」があります。調査した結果をもとにどのような修理が適切か判断し状況に応じて修理を行っています。

補彩の様子

旧修理層の除去
文化財を守るための取組は,私たちが長く健康的に生活をしていくために,生活習慣や生活環境を改善しながら病気を予防し,それでも病気や事故でケガをした場合は病院で診断を受け治療していくことと似ています。本特集展「東京国立博物館コレクションの保存と修理」では,修理を終えた作品を展示し,修理方法の解説などを添えて,文化財を長く伝えていくための当館の取組を御紹介します。
今回は昨年修理を終えたものを中心に,狩野益信筆「年中行事図屏風」や,「小忌衣 浅葱天鵞絨地菊水模様」「人面付壺形土器」など17件の作品を展示いたします。美しさを取り戻した作品を是非御覧ください。
東京国立博物館 特集「東京国立博物館コレクションの保存と修理」
本館特別1室
3月13日(火)~4月8日(日)

年中行事図屏風 狩野益信(洞雲)筆
江戸時代・17世紀
諏訪多辰治氏寄贈
東京国立博物館所蔵
東京国立博物館
(住所)〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分,東京メトロ上野駅・根津駅,京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
- 開館時間
- 火曜日~木曜日 9:30~17:00
毎週金・土曜日は21:00まで,4~9月までの日曜・祝・休日は18:00まで
※入場は閉館の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日(祝日・休日に当たる場合は開館,翌平日休館)
- 観覧料
-
一般\620,大学生\410
※高校生以下,及び18歳未満と満70歳以上は無料。入館の際に年齢のわかるものを御提示ください。
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などを御提示ください。
※子供(高校生以下及び満18歳未満)と一緒に来館した入館者(子供1名につき同伴者2名まで)は100円割引
※特別展は別料金 - ホームページ
- http://www.tnm.jp/