2018年5月23日
あすかの原風景
飛鳥資料館学芸室研究員 西田紀子
入江泰吉 飛鳥の里 昭和33年12月 入江泰吉記念奈良市写真美術館所蔵
「飛鳥には日本の原風景がある」
「飛鳥は日本の心の故郷」
明日香村を訪れた人々からは,こんな言葉をよく聞きます。明日香村は昭和三十一年に飛鳥村・高市村・阪合村が合併して誕生しました。高度経済成長期以降,全国に開発の波が押し寄せたとき,飛鳥時代の政治や文化の中心だったこの地を,無秩序な開発から守ろうと立ち上がった人々がいました。人々の熱意は,やがて政治を動かし,飛鳥地方の歴史的風土を未来に引き継ぐ枠組みとして,明日香法が制定されました。こうして,明日香村では,歴史的な風土と人々の暮らしがより添う,昔ながらの農村を彷彿とさせる景色を今も見ることができるのです。
しかし,明日香村の「懐かしさ」や「歴史」を感じられる眺めを見て,長年この地で暮らしてきた人々は言います。
「山が変わった,畑が減った」
「昔の建物が減った,道が変わった」
「昔と変わった」
では,かつてこの地にはどんな景色が広がっていたのでしょうか?
「あすかの原風景」をさぐるため,私たちは調査を始めました。村の人々から話を聞き,明日香村で伝えられてきた明治期の地籍図や,入江泰吉が撮影した写真,奈文研の発掘調査時の記録写真などを調べました。都会の変化に比べれば見えにくい,あすかの風景の緩やかな変化。しかし,先人たちが遺した地図や写真からは,この百五十年ほどの間だけでも,飛鳥地方に様々な変化があったことが読み取れました。
畑や果樹園から,公園や竹やぶになった丘陵。
茅葺屋根が減り,宅地が広がった集落。
復元整備や公園整備により,景色が一変した遺跡。
今回の展覧会では,これらの地図や古写真などの貴重な資料をもとに,明治期から昭和中期にかけての飛鳥の集落の様子を紹介します。懐かしいモノクロ写真や古い地図からは,どんな「あすかの原風景」がみえるでしょうか?あすかのちょっと昔の景色を知ることは,未来の景色を考えることにもつながるかもしれません。
かわるもの。かわらないもの。
あたらしいもの。なつかしいもの。
さぁ,あすかの原風景に会いに,飛鳥資料館へお越しください。
入江泰吉 石舞台 昭和26年5月 入江泰吉記念奈良市写真美術館所蔵
高市村島荘図 明治12年 明日香村所蔵
高市郡雷村地図 明治十年代後半 明日香村所蔵
奈良文化財研究所飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄橿原神宮前駅・飛鳥駅から かめバス(周遊)「飛鳥資料館」下車
又は近鉄・JR桜井駅から 石舞台行きバスで「飛鳥資料館」下車 - 開館時間
- 午前9時~午後4時30分(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 一般270円, 大学生130円, 高校生及び18才未満,
65歳以上(年齢のわかるものが必要)は無料
障がい者の方とその介護者各1名は無料。手帳の御提示が必要です。 - ホームページ
- https://www.nabunken.go.jp/asuka/kikaku/post-34.html