2018年12月26日
中国近代絵画の巨匠 斉白石
京都国立博物館 列品管理室主任研究員 呉孟晋

借山図(第3図)/前期
本平成30年度(2018年度)は,昭和53年(1978)に日中平和友好条約が締結されてから40周年の節目に当たります。条約締結より少し前,昭和47年(1972)の日中国交正常化の折には,東京の上野動物園にパンダのカンカンとランランがやってきました。今回は,中国・北京画院が所蔵する,中国近代水墨画の巨匠・斉白石(1864~1957)の名品が東京と京都の国立博物館にやってきます。
斉白石は,華やかな色彩と簡潔で力強い墨線の画を得意とし,素朴な描写で知られました。水墨画というと,なんだか気難しそうな,高尚な芸術だと思われるかもしれません。しかし,一見して誰でも描けそうな「へたうま」な絵は,どこか「くすっ」としてしまうような,かわいらしさとユーモアがあふれています。

和平図/通期
白石の絵が「へたうま」にみえる理由は,鳥であれ,花であれ,人物であれ,描く対象をみたままに写実的に描くのではなく,いったん,自分のこころの中でかたちを捉えて,自分の感情を込めてかたちを描き直しているからです。これを「写意画」といいます。よく,ピカソの絵が不思議なかたちで描かれているといいますが,絵として描かれる過程は同じです。斉白石のすごいところは,丁寧に描こうと思えば,とても精緻に描くこともできるところです。画稿として残る昆虫の図や,簡単な表現の花や木などと組み合わせた細密な昆虫の図である「工虫図冊」はその一例です。

工虫図冊(白花と鳳蛾)/前期
斉白石は若き頃,故郷の湖南省湘潭での大工仕事を振り出しに,手先の器用さを認められて肖像を描く画家になりました。更に有力な支援者を得て,歴代の名画や詩文を学び,中国の画家としての必要な素養を身につけました。彼の名が売れ出したのは還暦を迎える60歳前後からです。つまり,白石は「大器晩成」型の巨匠。絵が好きだという気持ちと努力をつづければ,いつかは実を結ぶという人生のお手本でもあります。
京都国立博物館(京博)での展示では,白石が手がけた画題別に「花木」「鳥獣」「昆虫」「魚蝦」「山水」「人物」「書」「書斎」の8つの部分で彼の生涯の画業を振り返ります。「書斎」では,白石が残したスケッチも展示します。例えば,長寿の桃を盗む孫悟空の画稿では手の位置を描き直しています。巨匠のたゆまぬ努力の跡を確かめるためにも,是非,会場にお越しください。

小猴捧桃図(画稿)/後期
※作品はすべて斉白石筆,北京画院所蔵です。
なお,京都展では,京博が寄贈を受けた須磨コレクションにある斉白石の作品も,この機会にあわせて「名品ギャラリー」(平常展示)にて展示いたします。
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
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- 075-525-2473(テレホンサービス)
- 交通
- JR京都駅下車,市バスD1のりばから100号,D2のりばから206・208号系統にて「博物館・三十三間堂前」下車,徒歩すぐ
京阪七条駅下車,徒歩7分 - 開館時間
- 火曜日~木曜日 9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
毎週金曜日・土曜日は20:00閉館 - ホームページ
-
https://www.kyohaku.go.jp/
日中平和友好条約締結40周年記念
特別企画「中国近代絵画の巨匠 斉白石」
- 開催期間
- 1月30日(水)~3月17日(日)
※会期中,展示替えを行います。
前期:2019年1月30日(水)~2月24日(日)
後期:2019年2月26日(火)~3月17日(日) - 開催時間
- 9:30~17:00
※毎週金曜日・土曜日は20:00閉館
※入館は閉館30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し,翌火曜日休館)
※天皇陛下御在位30年を慶祝して,2月24日(日)は無料観覧日といたします。 - 観覧料
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一般 大学生 高校生以下及び満18歳未満,満70歳以上,障害者とその介護者1名,キャンパスメンバーズ(含教員)※要証明 観覧料 520(410)円 260(210)円 無料 - ※( )は20名以上の団体料金
- ホームページ
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https://www.kyohaku.go.jp/jp/project/hakuseki_2019.html