2019年3月15日
冬期企画展「発掘された平城 2017・2018」
奈良文化財研究所企画調整部展示企画室 アソシエイトフェロー 座覇えみ
奈良文化財研究所が日々行っている,平城宮・京跡での発掘調査。その成果をいち早く御紹介する今回の展示では,平城宮の正門・朱雀門の周辺や,昨年10月に中金堂が再建された興福寺境内の調査,いくつかの発掘調査の際にみつかった地震の痕跡など,計8つのコーナーを設け御紹介しています。
朱雀門前の発掘調査
天皇の住まいや役所などが立ち並び,今の皇居と霞が関の官庁街に相当するのが平城宮です。この平城宮の正門・朱雀門前では,男女が歌を交わす歌垣や,外国使節の送迎など様々な行事が行われたことが記録されています。
発掘調査の結果,この朱雀門の周辺は,東西約260m,南北約140mにわたって建物や塀のない大きな広場となっていたことが明らかとなりました。盛大な外国使節の送迎などに,ふさわしい空間であったといえるでしょう。
現在この場所は,「朱雀門ひろば」として整備されています。平城京のメインストリート・朱雀大路やその溝,溝を渡る橋なども,調査成果に基づき整備されています。展示と併せてこちらにも足を延ばしていただくと, ますます往時の都の姿を身近に感じていただけるはずです。
『守貞漫稿』の井戸
私たちの調査の対象は奈良時代だけではありません。平城宮の東側に隣接する法華寺の旧境内からは,近世の井戸がみつかりました。江戸時代の『守貞漫稿』という書物にみえる京阪に特徴的な井戸と,全く同じ特徴をもったこの井戸は,瓦型の磚(今のレンガのようなもの)を積み上げて造られていました。
古代から近世まで,平城宮・京跡でみつかる幅広い時代の痕跡を御覧いただけるのも,今回の展示の醍醐味の一つです。
土層にみえる地割れの痕跡
最後のコーナーでは,発掘調査で得られる地震の痕跡について御紹介しています。時代を経て積み重なっていく土の層・土層には,震度5弱以上の地震が起きると,地割れや液状化現象などの地震痕跡が残されることがあります。朱雀門前の調査でもこの地震痕跡がみつかり,奈良時代近くかそれより古い時代から昭和の頃までに,少なくとも4回の大地震がこの地を襲ったことが分かりました。
このように,発掘調査で明らかになる内容は,時代も分野も多岐にわたります。まだまだ新発見がある平城宮・京の発掘調査の成果をお楽しみください。様々な角度から古都奈良の姿を伺うことができることでしょう。
奈良文化財研究所平城宮跡資料館
(住所)〒630-8577 奈良県奈良市佐紀町
- 問合せ
- 0742-30-6753(奈良文化財研究所連携推進課)
- 交通
- 近鉄奈良線大和西大寺駅北口より東へ徒歩10分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は16:00まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- 奈良文化財研究所平城宮跡資料館ウェブサイトhttps://www.nabunken.go.jp/heijo/museum/
冬期企画展「発掘された平城 2017・2018」
- 開催期間
- 2月2日(土)~3月31日(日)
- 場所
- 平城宮跡資料館 展示企画室
- ギャラリー
トーク - 2月8日(金),2月15日(金),3月8日(金),3月15日(金)
各回14:30~