2019年5月21日
春期特別展
「骨ものがたり―環境考古学研究室のお仕事」
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 アソシエイトフェロー 小沼美結

発掘調査では,獣や魚,鳥などいろいろな動物の骨が出土することがあります。遺跡から見つかる骨は,長い歴史の中で偶然残ったものがほとんどで,土の中で色が変わっていたり,破片になっていたりします。発掘現場で見落としてしまいそうな小さな骨も,よく観察してみると,細かい傷や変形した部分などが見つかります。
どうしてこのような痕跡が骨に残っているのでしょうか?
その謎をひも解いていくと,昔の人が動物をさばいていた様子や,人々とともに働く動物たちの生き生きとした姿がよみがえります。遺跡から出土する骨は,動物と人の関わり方,そして,かつての人々の暮らしを知る上で重要な情報を持っている研究資料なのです。

発掘調査のようす
(写真中央から,
ウマの下顎骨が出土している)

発掘現場から持ち帰った土から,
骨や木簡などを探し出す作業
奈良文化財研究所では,環境考古学研究室が中心となって,考古学的な視点から動物の骨に関わる調査研究を行っています。この調査研究の現場は,普段はほとんど公開されていないため,どのような過程を経て,研究成果が導かれているのか,多くの人には見えにくいのが現状です。しかし,この調査研究の過程にこそ,研究のおもしろさや奥深さが隠れているのです。

出土したマグロの骨と標本を観察する
そこで,飛鳥資料館では,4月23日(火)から,環境考古学研究室の調査研究の舞台裏にスポットを当てた「骨ものがたり−環境考古学研究室のお仕事」という展覧会を開催します。
本展覧会では,研究室で行っている基本的な調査過程を6つのステップに分けて,その仕事の内容や技術等を紹介します。実際に研究で取り扱ってきた出土資料や骨格標本を見ながら,研究員がどのように資料と向き合い,歴史を解明してくのか,その視点や手法がわかる展示になっています。
さらに,本展覧会のために撮影した,調査・研究現場の写真も見どころの一つです。研究員の視点を意識しながら,研究室の日常が伝わるような写真を多数用意しました。これらの写真からも,環境考古学の研究のおもしろさや魅力を感じていただきたいと思っています。会期中には,本物の骨や骨格標本を使ったイベント「体験!研究員のお仕事」も開催します。この機会に,是非飛鳥資料館へお越しください。

出土した骨の同定作業

標本の確認作業

標本の整理作業

標本を保管しているキャビネット
奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- ●近鉄橿原神宮前駅・飛鳥駅から
明日香周遊バス(赤かめ)で「明日香奥山・飛鳥資料館西」下車。
●近鉄・JR桜井駅から
奈良交通(36系統:明日香奥山・飛鳥資料館西行)バスで「飛鳥資料館」下車。 - 開館時間
- 9:00~16:30(入館は16:00まで)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 一般270円,大学生130円
高校生及び18才未満, 65歳以上(年齢のわかるものが必要)は無料
障がい者の方とその介護者各1名は無料。手帳の御提示が必要です。 - ホームページ
- https://www.nabunken.go.jp/asuka/index.html
春期特別展「骨ものがたり―環境考古学研究室のお仕事」
- 開催期間
- 2019年4月23日(火)~6月30日(日)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 観覧料のみ(追加料金なし)で見学できます。
- 特別展詳細ホームページ
- https://www.nabunken.go.jp/asuka/kikaku/post-38.html
春期特別展関連イベント1 「研究員を展示!」
- 開催期間
- 5月10日(金)13:30~16:00〔終了〕
5月17日(金)13:30~16:00〔終了〕
※好評につき,6月9日(日)と6月21日(金)にも追加開催します。イベントの開始時刻などの詳細は,飛鳥資料館のホームページを御覧ください。 - 場所
- 特別展示室(地下)
- 備考
- 参加無料(※要観覧料)
事前申込み不要
春期特別展関連イベント2 「体験!研究員のお仕事」
- 開催期間
- 6月9日(日)【子供向け】13:30~
6月21日(金)【大人向け】13:30~ - 場所
- 講堂(1階)
- 備考
- 参加無料(※要観覧料)
要事前申し込み(※申込み方法は,飛鳥資料館のホームページを御覧ください。)