2019年8月20日
ICOM京都大会開催記念特別企画
京博寄託の名宝―美を守り,美を伝える―
京都国立博物館 学芸部企画室主任研究員 呉孟晋
簡潔にして大胆な構図で,江戸時代の,いや日本の絵画の魅力を凝縮した「風神雷神図屏風」。精緻な表現で高貴な精神性を伝え,日本の肖像画の最高傑作とされる「伝源頼朝像」――。この夏,京都ではみなさんが良く知っている名品に出会うことができます。

国宝「風神雷神図屏風」
俵屋宗達筆(建仁寺蔵)
左隻

国宝「風神雷神図屏風」
俵屋宗達筆(建仁寺蔵)
右隻
今年9月,「博物館のサミット」とでもいうべき「国際博物館会議」(International Council of Museums:略称ICOM(アイコム))の世界大会が京都で開催されます(「ICOM京都大会」)。京都国立博物館(京博)ではこれを記念して,特別企画「京博寄託の名宝―美を守り,美を伝える―」と題した展覧会を企画しました。
ICOM京都大会のテーマは「文化をつなぐミュージアム―伝統を未来へ―」です。「文化をつなぐ」存在として,博物館が果たす役割とは何か。京博にとって,その答えの一つが「寄託」という制度です。

国宝「伝源頼朝像」(神護寺蔵)
「寄託」とは,美術品などの文化財を持つ所蔵者が文化財を博物館に預けることをいいます。もともと,京博はおよそ120年前の明治30年(1897)に,京都を中心とする神社仏閣が所蔵する文化財を保護する目的で開館しました。当時は明治初期の廃仏毀釈の余波などが原因で文化財が海外に流出するなど散逸の危機にありました。博物館が「寄託」制度で文化財をお預かりすることには,様々な利点があります。所蔵者にとっては,自分の文化財が博物館の収蔵庫など保存に適した環境で保管される利点があり,博物館にとっては,名品を展示や研究に活用できる利点があります。「博物館」が「文化」をつなぐ場として機能するのは,「寄託」という制度のおかげなのです。
現在,京博の収蔵庫には全収蔵品の半数近くに当たる6,200余件の寄託品があります。

重要文化財「宝誌和尚立像」
(西往寺蔵)

重要文化財「束熨斗文様振袖」
(友禅史会蔵)
「京博寄託の名宝」展では,その中から美術や工芸,考古など各分野の担当研究員が吟味を重ねて厳選した,選りすぐりの名品139件を展示いたします。そのうち国宝は36件,重要文化財は59件あります。京博にある名品を世界の博物館関係者だけでなく,ふだん博物館に行かない方にも見ていただきたい。そんな「つなぐ」という思いを展覧会に込めました。観覧料金も通常の名品ギャラリー(平常展示)枠で大人520円,大学生260円,高校生以下は無料です。是非気軽に足をお運びください。
なお,ICOM京都大会最終日の9月7日(土)は観覧料が無料となります。この機会も是非お見逃しなく。

重要文化財「蝦蟇鉄拐図」顔輝筆
(知恩寺蔵)
左幅

重要文化財「蝦蟇鉄拐図」顔輝筆
(知恩寺蔵)
右幅
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
- 問合せ
- 075-525-2473(テレホンサービス))
- 交通
- JR京都駅下車,京都駅前D1・D2のりばから市バス各系統にて博物館・三十三間堂前下車,徒歩すぐ
- 開館時間
- 火曜日~木・日曜日,9月7日(土): 9:30~17:00(入場は閉館30分前まで)
金・土曜日(9月7日を除く): 9:30~21:00(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日〈ただし,9月2日(月),9月16日(月・祝)は開館〉
- 観覧料
- 一般\520(410)円, 大学生\260(210)円, 高校生以下及び満18歳未満,満70歳以上の方は無料です(年齢のわかるものを御提示ください)。
※( )内は20名以上の団体料金。
※大学生の方は学生証を御提示ください。
※障害者手帳等(*)を御提示の方とその介護者1名は,観覧料が無料になります。
(*) 身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳,戦傷病者手帳,被爆者健康手帳
※キャンパスメンバーズ(含教職員)は,学生証又は教職員証を御提示いただくと無料になります。 - ホームページ
- https://www.kyohaku.go.jp