2019年12月23日
博物館に初もうで 子・鼠・ねずみ
東京国立博物館 学芸研究部 調査研究課考古室 研究員 河野正訓
東京国立博物館では,毎年「博物館に初もうで」という正月企画をしており,干支にちなんだ展示を1月に行っています。2020年の新春は元号が令和となって初のお正月,そして十二支最初の子年です。子年ということで,東京国立博物館が所蔵する,鼠に関連した様々な作品を展示します。
「博物館に初もうで」ポスター ビジュアル
暦や方角を示す十二支の始まりは古代中国に成立し,十二支の動物としてのイメージと結びつきながら,中国大陸だけではなく朝鮮半島や日本列島にまで広まりました。そこで中国から日本各地にかけての十二支の鼠に関わる作品を,展示ではまず御紹介いたします。
この頭が鼠で,人間の身体をもつ獣頭人身像は隼人石と呼ばれ,聖武天皇の皇太子墓を守るために置かれていた奈良時代の十二支像です。奈良県明日香村の壁画古墳で著名なキトラ古墳が発見されるまでは,日本最古の獣頭人身像でした。展示では朝鮮半島における新羅の英雄,金庾信墓の十二支像の拓本と並べて御覧いただけます
隼人石像碑拓本
江戸時代・19世紀(原碑:奈良時代・8世紀)
今の日本では厄介者のイメージが強い鼠ですが,昔は全く異なります。和銅5年(712)に編纂された『古事記』には,出雲大社の祭神でもある大国主神を救う知恵者の動物として鼠は登場します。その後,江戸時代にはインド由来の神で七福神にも数えられる大黒天の使いとして,鼠は福をもたらす動物として扱われます。また,鼠はたくさんの子供を産むことから,子孫繁栄の象徴にもなります。じつは鼠,大変めでたい,お正月に相応しい動物なのです。
この大黒天は,商売繁盛の神として親しまれました。米俵や打ち出の小槌は,大黒天の必須アイテムです。そのため米俵や小槌と,鼠とがセットになって表現される造形もございます。是非展示会場でお確かめください。
大黒天立像
江戸時代・19世紀 倉澤政雄氏寄贈
このほか「様々な鼠色」「鼠の名前と分類」「かわいい鼠」などの各種テーマを設定して,染織や書籍,工芸品の数々を展示します。もちろん永遠のライバル,猫との関係もお見逃しなく。
この鼠色の着物は,江戸時代の幕府の華美な衣服を規制しようとした倹約令があった中,作られました。禁制に背くことなく微妙に色調の異なる茶色や灰色を考案して楽しんだ,江戸の人々の粋なお洒落をお楽しみください。
一つ身振袖 鼠色縮緬地萩流水烏帽子鞍模様
江戸時代・19世紀
福をもたらすという鼠にあやかって,令和2年がみなさまにとって幸福な一年になりますように心から願っています。
東京国立博物館
(住所)〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅公園口,鶯谷駅南口から徒歩10分 東京メトロ上野駅・根津駅,京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
- 開館時間
- 9:30~17:00
金曜,土曜日は21:00まで開館
(入館は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜,2019年12月26日~2020年1月1日
1月13日(月・祝)は開館,14日(火)は休館 - 観覧料
- 一般620円(520円),大学生410円(310円) ※( )は20名以上の団体料金
※日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」(2020年1月15日(水)~3月8日(日))は別料金。
※高校生以下及び18歳未満,満70歳以上の方は無料。(入館の際に年齢がわかるものを御提示ください。)
※障がい者とその介護者1名は無料。(入館の際に障がい者手帳等を御提示ください。)
※子供(高校生以下及び満18歳未満)と一緒に来館した方(子供1名につき同伴者2名まで)は団体料金で観覧できます。 - ホームページ
- https://www.tnm.jp