2020年1月17日
特集展示
京都御所障壁画 紫宸殿
京都国立博物館 学芸部研究員 福士雄也
紫宸殿は,内裏(現在の京都御所)に建つ諸殿舎の中でも最も格式が高く,その中心となる御殿です。古くは,節会(公事のある日に宮中で行われた宴会。天皇が出御し,群臣に酒饌を賜った)をはじめとする儀式や日常の政務が執り行われていましたが,治承元年(1177)に大極殿が焼失したのちは,即位などの重要な儀式も行われるようになりました。
その紫宸殿の母屋と北庇を仕切る9面の障子を,賢聖障子といいます。賢聖障子は高御座の後方に位置し,中央の1面には獅子狛犬と瑞獣である負文亀が,残る8面には中国殷代から唐代にいたる賢臣が各面4人,計32人描かれています。各人の上部には色紙形が貼られ,名前や功績などが記されるという形式がほぼ定まっており,平安時代にさかのぼる歴史があります。これは,中国漢の宣帝が麒麟閣に功臣11人の図像を描いた故事にならうものとされ,徳の高い君主のもとには功臣が集い君主もそれを重んずべきであるという中国の儒教思想にもとづいています。

紫宸殿 賢聖障子のうち獅子狛犬と負文亀
宮内庁京都事務所蔵

紫宸殿 賢聖障子のうち東二間
宮内庁京都事務所蔵
内裏は,歴史上度重なる火災に見舞われ,その都度再建されてきました。現在の京都御所は,幕末の嘉永7年(1854)に焼失したことを受け,翌年の安政2年(1855)に造営されたものです。そのため,内部を飾る障壁画はそのほとんどがこの安政度の再建時に新調されていますが,賢聖障子は焼失を免れ,寛政度の内裏造営時に幕府御用絵師住吉広行(1755~1811)が描いたものが残っています(一部に後補あり)。色紙の文字は,書博士の岡本保考が担当しました。ただし,この寛政度賢聖障子の完成は光格天皇の還幸から遅れること約2年,寛政4年(1792)10月のことでした。これは,幕府儒官柴野栗山が主導した綿密な図様考証に時間を要し,何度も下絵の修正が行われたためです。
現在,紫宸殿には昭和40年代に制作された模写が立てられ,原本は別に保管されているため,通常は目にすることができません。今回の特集展示は,この賢聖障子が9面すべて公開されるたいへん貴重な機会です。仁孝天皇以降,明治・大正・昭和にいたる歴代天皇の即位を見守ってきた賢聖障子を,そのスケールとともに体感してください。
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
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金・土曜日(3月6・7・13・14日を除く)は 9:30~20:00(入館は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日〈ただし,月曜日が祝日・休日の場合は開館し,翌火曜日は閉館〉
- 観覧料
- 一般 520(410)円,大学生 260(210)円,高校生以下及び満18歳未満,満70歳以上の方は無料です(年齢のわかるものを御提示ください)。
※( )内は20名以上の団体料金。
※大学生の方は学生証を御提示ください。
※障害者手帳等(*)を御提示の方とその介護者1名は,観覧料が無料になります。
(*) 身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳,戦傷病者手帳,被爆者健康手帳
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