2020年9月29日
御即位記念 特別展 皇室の名宝
京都国立博物館 企画室長兼工芸室長 山川 曉
天皇陛下の即位とともに元号が改まり,令和の世を迎えました。新たな世の始まりをことほぎ,今秋,皇室ゆかりの地である京都において,宮内庁が所蔵する名品を日本の宮廷で培われた文化とともに紹介する展覧会を開催いたします。慶事を祝し,宮内庁の全面的な御協力のもと開催する貴重な機会ではありますが,ウイルス感染防止のため,京都へはなかなかお運びになれない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本稿では,簡単ではありますが展覧会の内容を紹介し,皇室ゆかりの地である京都への,紙面での旅を楽しんでいただければと思います。
展示は大きく二章構成です。まず,第一章は「皇室につどう書画 三の丸尚蔵館の名宝」。皇居内に所在する宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する品々は,様々な経緯で皇室にもたらされています。その来歴は多様ですが,江戸時代以前から皇室周辺で用いられてきた品と,明治時代以降に皇室での収蔵を願って献上された品が中核となっています。本章では三の丸尚蔵館が収蔵する書画の逸品を,四部に分けて展示します。
まず<筆跡のもつ力>。書聖と仰がれる王羲之から,三跡とも称される平安時代の能書家たち,さらには歴史上の人物まで,人柄をも語るとされる書を御紹介します。続く<絵と紡ぐ物語>では,藤原氏の氏神である春日神の霊験を記す「春日権現験記絵」,教科書でもおなじみの「蒙古襲来絵詞」と,詞書と絵が交互につながる絵巻物を御覧いただきます。<唐絵への憧れ>からは,大画面の絵画の登場です。最初は,鑑賞されるだけでなく,手本としても参照されてきた中国や朝鮮半島の絵画。そして<近世絵画 百花繚乱>では,永徳・探幽・若冲・応挙と,個性豊かな絵師が綺羅星のごとく登場した,桃山から江戸時代の絵画をお楽しみいただきます。

旭日鳳凰図 伊藤若冲筆 江戸時代,宝暦5年(1755)
宮内庁三の丸尚蔵館 【後期展示11/3-11/23】
第二章は「御所をめぐる色とかたち」と題し,今では見ることの叶わないかつての京都御所での日々を,こちらも四部に分けて辿っていきます。
冒頭は,御即位記念の本展らしく<即位の風景>です。江戸時代に描かれた「霊元天皇即位図屏風」から,令和とは様相を異にする京都御所での即位礼の風景を,絵画や装束を通して眺めます。そして,即位礼の中にひそむ和漢の文化に導かれるように,<漢に学び和をうみだす>へと続きます。日本の文化は,漢の文物に学び,そこに自らの風土に根ざした美意識を加えることで発展してきました。その様相を文字や詩歌からさぐる試みです。続いては,御所という空間の中での天皇に迫る<天皇の姿と風雅>。描かれた天皇の姿や天皇の手になる書や和歌を通して,風雅の天子として日本文化を牽引しようとする姿勢とその風格に迫ります。最後は后妃が暮らした後宮を偲ぶ<王朝物語の舞台>です。『源氏物語』の世界を髣髴させる,「藤壺」こと飛香舎の襖絵や調度から,王朝物語の世界を追体験していただけることでしょう。

霊元天皇即位図屏風(部分) 狩野永納筆 江戸時代,17世紀
京都国立博物館 【後期展示11/3-11/23】
本展は,宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の名だたる品々を中心に,皇室の名宝の数々が,東京以外の地でまとまって公開される初めての機会です。このような時世ではありますが,状況が許せば,皇室と縁を結んだ名品の数々を,皇室ゆかりの地,京都で是非御覧ください。
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
- 展覧会名
- 御即位記念 特別展 皇室の名宝
- 会期
- 2020年10月10日(土)~11月23日(月・祝)
- 問合せ
- 075-525-2473(テレホンサービス)
- 交通
-
JR京都駅下車,京都駅前D1・D2のりばから市バス各系統にて博物館・三十三間堂前下車,徒歩すぐ
- 開館時間
- 9:30~18:00(入館は閉館30分前まで)※夜間開館は実施しません。
- 休館日
- 月曜日※ただし11月23日(月・祝)は除く
- 皇室の名宝展
観覧料 -
【事前予約制(日時指定券)の導入】
「皇室の名宝」展では,新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡大防止のため,事前予約制(日時指定券)を導入します。詳細は,公式サイトを御覧ください。
一般1,800円, 大学生1,200円, 高校生700円
*中学生以下,障害者の方とその介護者1名は無料(要証明)
*キャンパスメンバーズ・大学生・高校生の方は,御入館の際に学生証等を御提示ください。
*キャンパスメンバーズ以外の割引はありません。
*前売券・団体券はありません。 - ホームページ
-
https://www.kyohaku.go.jp
公式サイトhttps://meiho2020.jp/