2020年12月25日
博物館に初もうで
ウシにひかれてトーハクまいり
文化財活用センター企画担当研究員 高橋真作
力強く従順で,人の営みを傍らで支え続けてきた牛。平安時代には貴族の生活と密着して牛車の文化を育み,また時には神の乗り物や仏教における悟りの象徴ともみなされました。トーハク(東京国立博物館)では,2021年1月2日(土)から31日(日)まで,「博物館に初もうで」を開催します。今回の特集展示では,2021年の干支にちなみ,牛にまつわる豊かな歴史と文化を御覧いただきます。

「博物館に初もうで ウシにひかれてトーハクまいり」ポスター
本特集のタイトルは,「牛に引かれて善光寺参り」ということわざをもとにしたもの。「身近に起こった出来事に導かれて,思いがけない縁が結ばれること」の例えです。新型コロナウイルス感染拡大防止のため,様々な対策をとらなければならない今だからこそ,展示作品との思いがけない出会いを通して,改めてトーハクと縁を結んでいただきたい。そんな想いが込められています。本特集が,今後の新たな日常を支えていく,ささやかなきっかけとなれば幸いです。

重要文化財 阿弥陀如来および両脇侍立像(善光寺式)
鎌倉時代・建長6年(1254) 東京国立博物館蔵
ある老婆が布を干していると,牛が角に布をかけて走り去り,追いかけた老婆はいつしか善光寺へたどり着き,たちまち仏を信仰するようになりました。ことわざの「牛に引かれて善光寺参り」は,こんな仏教説話に基づいています。善光寺の本尊はインド伝来とされる秘仏ですが,その姿を模した,いわゆる善光寺式の阿弥陀三尊像は鎌倉時代以降に多くつくられました。

国宝 片輪車蒔絵螺鈿手箱
平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
重いものを運ぶ労働力であった牛が,一躍,華やかな脚光を浴び,人びとの品評の対象となったのは平安時代からです。その背景には,牛車の流行がありました。流水に浸された牛車の車輪をモチーフにした本作は,平安時代後期を代表する蒔絵の名品です。こうした文様は「片輪車」と称され,中世・近世を通じて料紙装飾や工芸意匠に用いられることになりました。

重要文化財 駿牛図断簡
鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
人の暮らしに寄り添ってきた牛は,古くより美術作品に表されてきました。本作は,牛車を引く優れた牛の姿を描く絵巻の断簡です。後ろを振り返る優美な牛の姿は,「見返り美牛図」とでも名付けたいところ。絶妙な墨の濃淡によって牛の立体感を見事に表し,筆線を引き重ねた細部描写もたいへん緻密です。片輪車をあしらった表装もよくマッチしています。
そのほかにも,牛と結びついた神仏の彫刻や絵画,人と牛との共同生活を示す資料,牛の姿を表した工芸作品など,多種多様な牛の造形を御覧いただけます。是非展示室で,様々な表情を見せる牛たちに御対面ください。
東京国立博物館
(住所)〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
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JR上野駅公園口,鶯谷駅南口から徒歩10分
東京メトロ上野駅・根津駅,京成電鉄京成上野駅から徒歩15分 - 開館時間
- 9:30~17:00(入館は閉館30分前まで) ※1月2日(土),8日(金),9日(土)を除く金曜,土曜日は21:00まで開館
- 休館日
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毎週月曜日,12月26日(土)~2021年1月1日(金・祝)
※1月11日(月・祝)は開館,12日(火)は休館 - 観覧料
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一般1,000円,大学生500円
【事前予約制】
入館はオンラインによる事前予約(日時指定券)制としております。入館無料の方や会員の方を含め,すべてのお客様が対象です。
※1月2日(土),3日(日)限定で当日のみ有効の日時指定券を正門にてお配りします(無くなり次第終了)。詳細はウェブサイトを御覧ください。
※高校生以下及び18歳未満,満70歳以上の方は無料です。入館の際に年齢がわかるものを御提示ください。
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳等を御提示ください。
※特別展「日本のたてもの―自然素材を活かす伝統の技と知恵」(2020年12月24日~2021年2月21日)は別途事前予約(日時指定券)及び観覧料が必要です。
※会期・開館日・開館時間・展示作品・展示期間・入館方法等については,今後の諸事情により変更する場合がありますので,ウェブサイトで御確認ください。 - ホームページ
- https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=10591