2021年3月25日
吉野の山の上からやってきた巨大な金剛力士像
奈良国立博物館 美術室長 岩井共二
奈良県吉野郡吉野町は,桜の名所として有名です。その吉野の地にある金峯山修験道の総本山,金峯山寺には,大きな仁王門(国宝)があります。その仁王門には,これまた大きな金剛力士像(重要文化財)が安置されていました。この仁王門が大規模な修理に入ることになり,金剛力士像も門から出され,奈良国立博物館の中にある修理所に運ばれ,痛んだ部分を修理することになりました。この修理が完了しましたので,奈良国立博物館のなら仏像館で,2月23日から特別公開することになりました。
仁王門に安置されていた時の金剛力士像は,昔の絵はがきの写真(図1)で見ると,門の中にいるお姿がよく見えます。この写真で見ると,あまり大きく見えません。でも,この像は,高さ5メートルもあります。それもそのはず,この仁王門は,東大寺の南大門に次ぐ日本で二番目に大きい仁王門です。写真では小さく見える金剛力士像も,日本で2番目(注)に大きな,巨大な金剛力士像なのです。

図1 絵はがき 金峯山寺仁王門(大正6年〈1917〉以前)
こんな大きな仏像をなら仏像館へ運び込むのは,たいへんな作業でした。なら仏像館で一番天井の高い部屋の仏像や展示台をすべて運び出して空っぽにして,そこに免震装置付きの巨大な専用展示台を設置し,次に仏像をつり上げるために足場を設置。仏像館の入口が狭いので,両腕などは一旦取り外して,ギリギリの幅で本体を搬入して,チェーンブロックを使ってつり上げて(図2)台の上に立たせました。像を立たせたら両腕などの部分を接合して完成です。足場などを撤去した後,再度室内に免震装置付きの展示台を設置して仏像を再安置。最後に仏像にライティングして,作業は完了しました。まる2か月の間,なら仏像館を臨時休館しての作業でした。

図2 金峯山寺金剛力士像(吽形)を立ち上げて台座に設置するところ
奈良国立博物館では,過去にも巨大な仏像を展示したことがあります。これまでは,愛知・財賀寺の金剛力士像(阿形)の像高376.5センチが最大でしたが,今回の金剛力士像(阿形505.8センチ吽形506.2センチ)は,おそらく奈良国立博物館で収容できる最大の仏像で,これ以上大きな仏像は入らないと思います。開館以来の大きな出来事です。
金剛力士像の展示室での写真(図3)を載せましたが,写真ではその大きさにピンとこないかもしれません。是非,なら仏像館に足を運んで,その大きさを実感していただければ幸いです。予定では令和10(2028)年度の仁王門修理完了までは,仏像館にいらっしゃいますよ。

図3 特別公開 金峯山寺仁王門 金剛力士立像 なら仏像館 第6室
(注)国指定文化財の範囲内です。なお,一番大きな金剛力士像は,奈良国立博物館のすぐ近くにある東大寺南大門にある金剛力士像(国宝)です。
奈良国立博物館
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一般 700円
大学生 350円
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