2021年9月13日
屋根を彩る草花 ―飛鳥の軒瓦とその文様
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 研究員・清野陽一
飛鳥は日本で最初に本格的な寺院がつくられた地として有名です。7世紀を通じて飛鳥には数多くの寺院が建立されました。また、その屋根には本格的に瓦が葺かれるようになります。
瓦葺きの建物は、造営に高度な技術が必要とされ、そしてなにより、それまでの建物と比べて見た目も大きく変化しました。そのため、この時代には、瓦葺きの屋根をもつ寺院は権威や先進文化の象徴でもありました。その瓦屋根の軒先には導入の初期から様々な草花の文様があしらわれ、特別な世界観をあらわしています。

ハスの花(蓮華)

檜隈寺 単弁蓮華文軒丸瓦
今回の展覧会では、飛鳥地域で使われた古代の軒瓦文様に焦点を当てます。軒瓦文様のモチーフは東アジアやそのさらに西の地域にルーツがあります。代表的なものに、軒丸瓦に使われたハスの花(蓮華)や軒平瓦に使われた唐草の文様がありますが、同じ文様でも、拡散し、普及する過程で様々なバリエーションが生み出されました。

カナリーヤシ(ナツメヤシ属・フェニックス)

スイカズラ(忍冬)
蓮華や唐草の文様は、いずれも仏像や建物の装飾などの仏教美術で使われていたもので、軒瓦の文様に用いられていく過程で大胆な図案化がされています。その中でも特に唐草のモチーフは図案の変化が大きく、西アジアではナツメヤシだったものが、波状の連続文様として変容し東遷する過程で、蔓植物の表現へと変化していったと考えられています。

坂田寺 手彫り(忍冬)唐草文軒平瓦
展覧会では、デザインのモチーフとなった実際の植物を紹介しつつ、それが図案化された仏教美術作品、そして遺跡から出土した実物の軒瓦とをあわせて展示します。古代の人々は、複雑にみえる実際の植物のどの部分を単純化して文様としたのか、ぜひ会場で観察して下さい。そして、今回の展示で紹介した植物、あるいは別の身近な蔓植物を元に、ご自身ならどう図案化するかを考えてみるのも面白いでしょう。
日本にもたらされた多様な軒瓦文様の変化と、飛鳥を中心としたその後の展開をご覧ください。
独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄橿原神宮前駅・飛鳥駅から
明日香周遊バス(赤かめ)「明日香奥山・飛鳥資料館西」下車
又は近鉄・JR桜井駅から
奈良交通(明日香奥山・飛鳥資料館西行)バスで「飛鳥資料館」下車 - 開館時間
- 午前9時~午後4時30分(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 一般350円、大学生200円、高校生及び18歳未満、70歳以上は無料(年齢のわかるものが必要です)
障がい者の方とその介護者各1名は無料。手帳の御提示が必要です。
※11月3日(水・祝)は無料入館日 - ホームページ
-
https://www.nabunken.go.jp/asuka/