2021年10月20日
特別展「海幸山幸―祈りと恵みの風景―」
九州国立博物館 学芸部文化財課資料登録室長 森實 久美子
昨年からつづく自粛生活のなかで、ふと身近な海や山を目にし、その泰然自若とした姿に心が救われる思いがした人は少なくなかったのではないでしょうか。古来、日本人は海と山からの恵みを享受して生きてきました。それは実質的な糧であるとともに心の栄養となり、また日本人固有の精神性の源ともなっています。このたびの展覧会では、海と山からもたらされるさまざまな恵みを「海幸山幸」ととらえて、日本人が自然との共生のなかで育んできた思想や美術を新たな視点で見つめます。
「富士三保図屏風」左隻 曽我蕭白 筆
江戸時代 18世紀
滋賀・MIHO MUSEUM
[展示期間:10月9日~11月14日]
「海幸」の一つとしてご紹介するのが、海を越えてもたらされた人やモノです。遣隋使につづいて630年から派遣された遣唐使や留学僧たちは命がけで唐に渡り、かの地において最先端の政治や文化、思想を学びました。空海や最澄らが持ち帰った最新の仏教が新風を巻き起こしたように、唐から請来されたモノはあらゆる方面において日本文化の形成に大きな影響を与えました。精巧な金銀器や唐三彩などは、唐からもたらされたブランド品として珍重されました。
重要文化財「花鳥獣文杯」
中国・唐時代 7世紀末~8世紀初頭
兵庫・白鶴美術館
古来、人々は暮らしのそばにある山から様々なものを得て豊かな生活を営んできました。山で獲れる動物も、山に生える木も、山に眠る鉱物も、山から湧き出す水も、すべて「山幸」と言えるでしょう。たとえば木は、家や道具など生活に欠かせないものですが、仏教伝来以降、多くの仏像が木によって造られました。宮崎県西都市の2メートルを越える阿弥陀如来坐像は、江戸時代、全国を巡り数多くの仏像をのこした木喰上人の作品のなかでも最大です。5体から成る五智如来のうちの1体で、いずれもクスノキで造られており、巨木や自然に対する崇敬の念が感じられる像です。
宮崎県指定有形文化財
木喰作 阿弥陀如来坐像(五智如来のうち)
江戸時代 寛政6年(1794)
宮崎・西都市
海と山に囲まれた私たちの身近にはたくさんの「海幸山幸」があふれています。本展を通して、皆さんそれぞれの「海幸山幸」を見つけていただければ幸いです。
九州国立博物館
(住所)〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4-7-2
- 問合せ
- 050-5542-8600
(ハローダイヤル 受付時間 午前9時~午後8時/年中無休) - 交通
-
鉄道
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- JR:JR博多駅からJR鹿児島本線(快速約15分)でJR二日市駅下車、JR二日市駅から西鉄二日市駅(徒歩約12分、バス約6分)、西鉄二日市駅から西鉄太宰府線利用。
- 九州自動車道:太宰府ICまたは筑紫野ICから高雄交差点経由で約20分。
- 福岡都市高速:水城出口から高雄交差点経由で約20分。
- JR二日市駅から約15分・福岡空港から約30分。
- 博多バスターミナル(1階11番のりば太宰府行き)から西鉄太宰府駅下車(所要時間約40分)、徒歩約10分。
- 開館時間
- 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※状況により開館時間を変更することがありますので、最新の開館時間は九州国立博物館公式ホームページでご確認ください。
- 休館日
- 月曜日(月曜日が祝日・休日の場合は開館、翌日休館)、年末
- 開催期間
- 10月9日(土)~12月5日(日)
- 開催時間
- 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※状況により開館時間を変更することがありますので、最新の開館時間は九州国立博物館公式ホームページでご確認ください。
- 開催場所
- 九州国立博物館 3階 特別展示室
- 観覧料
- 一般1,600円、高大生* 1,000円、小中生* 800円
*学生証等の提示をお願いします。
※上記料金で九州国立博物館4階「文化交流展(平常展)」も御観覧いただけます。
※障がい者手帳等を御持参の方とその介護者1名は無料です。展示室入口にて障がい者手帳等(詳細についてはHP等を御確認ください)を御提示ください。
※キャンパスメンバーズの方は割引料金で御購入いただけます。券売所にて学生証、教職員証等を御提示ください。
- ホームページ
- 九州国立博物館ウェブサイト( https://www.kyuhaku.jp/ )
特別展「海幸山幸―祈りと恵みの風景―」