2022年1月25日
新春特集展示「寅づくし─干支を愛でる─」
京都国立博物館 学芸部教育室 主任研究員 水谷亜希
2022年の干支は寅(虎)です。みなさんは、虎にどんなイメージを持っていますか? 野生の虎は日本にはいません。昔から毛皮が輸入されたり、ごくまれに生きた虎が中国や朝鮮半島から連れて来られたりしましたが、江戸時代の終わり頃になるまで、多くの日本人にとって虎は、実際には見ることのできない、絵やお話の中の生き物でした。
身近にいない生き物なのに、虎は、日本の美術の中にたくさん登場します。虎がいた中国や朝鮮半島から伝わる、様々なお話や美術作品がとても魅力的だったから、日本の人たちも虎に惹かれたのでしょうね。虎は、山の獣たちを従える、強くて賢い生き物だと信じられてきました。それだけでなく、子を大切に育てる、愛情深い生き物だとも考えられました。さらに、黄色と黒の、美しいしま模様の体を持っています。強く、やさしく、美しい虎は、人々のさまざまな願いを込めて、美術の中に描かれました。

竹に虎文様掛下帯(部分) 江戸時代(19世紀) 京都国立博物館
京都の絵師、尾形光琳(おがた こうりん 1658~1716)が描いた「竹虎図」の虎は、とても可愛らしいですね。虎がいなかった日本では、猫をお手本にすることもあったのでしょう。こんなふうにどこか猫っぽい虎の絵も、たくさんのこっています。「竹虎図」から生まれた、京都国立博物館の公式キャラクター「トラりん」も、よく猫に間違えられてしまいます。

竹虎図 尾形光琳筆 江戸時代(18世紀) 京都国立博物館

京都国立博物館公式キャラクター トラりん
生きた虎を見るのが難しかった時代に、絵やお話をもとに描くだけでは物足りず、本当の虎を追い求めた人もいました。「虎図」を描いた岸駒(がんく 1749/56~1838)は、リアルな虎を描くために様々な努力をしています。虎の頭の骨に、虎の毛皮をかぶせてスケッチしたり、虎の足の剥製を手に入れて、関節の位置や仕組みを調べたりしたのです。でも残念ながら、目は猫をお手本にするしかなかったようで、昼間の猫のような縦長の瞳で描いています。虎の瞳は、実際には丸くて、縦長にならないのです。

虎図 岸駒筆 江戸時代(19世紀) 京都国立博物館
ここに紹介した作品も含め、合計36件の虎の美術を紹介する新春特集展示「寅づくし―干支を愛でる―」を、京都国立博物館で開催します(2022年1月2日~2月13日)。子どもから大人まで、たくさんの人に楽しんでいただけるよう、会場にはやさしい解説や楽しいワークシートも用意しています。ぜひ、お気に入りの虎を見つけてください。

ワークシート「さがしてみよう! こんなトラ」(左:日英版・右:中韓版)
京都国立博物館
(住所)〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
- 問合せ
- 075-525-2473(テレホンサービス)
- 交通
- JR京都駅下車、京都駅前D1・D2のりばから市バス各系統にて博物館・三十三間堂前下車、徒歩すぐ
- 開館時間
- 火~木・日 9:30~17:00(入館は16:30まで)
- 金・土 9:30~20:00(入館は19:30まで)
- 新春の夜間開館のお知らせ ―2022年1月2日(日)~2月13日(日)の金・土曜日
- 休館日
- 月曜日
- 観覧料
- 一般 700円
- 大学生 350円
※本観覧料で当日の平成知新館の全展示をご覧いただけます。
※大学生の方は学生証をご提示ください。
※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料です(年齢のわかるものをご提示ください)。
※障害者手帳等(*)をご提示の方とその介護者1名は無料です。
(*) 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳
※キャンパスメンバーズは、学生証または教職員証をご提示いただくと無料になります。 - ホームページ
- https://www.kyohaku.go.jp/