2022年5月25日
奈良・大安寺「同窓会」へのお誘い
奈良国立博物館 学芸部 企画室長 中川あや
みなさんは、奈良にある大安寺というお寺をご存知ですか?奈良時代、平城京に建てられ、東大寺と肩を並べるほどの大きなお寺だったのですが、学校の歴史の授業では名前が出てこなかったかもしれませんね。ぜひ、この文章を読んで、大安寺について少し興味を持って頂けると嬉しいです。
どれほど大きなお寺だったのかを端的に語るものとして、まず、お寺の広さが挙げられます。当時のお寺の敷地は24万平方メートル、甲子園球場のおよそ6個分の面積です。端から端までかなり歩く必要がありそうですね。そして、お坊さんの数は、奈良時代半ばには887人。一学年に4クラスある小学校の全校生徒ぐらいの人数でしょうか。そして、奈良時代前半の時期には国で最も重要なお寺だったので、来日した外国のお坊さんは必ず大安寺を訪れたのではないかと考えられます。天平勝宝4年(752)に行われた東大寺の大仏開眼会という儀式では、大安寺に住んでいた何人かの外国僧が中心的な役割を果たしています。

大仏開眼会の一場面。インド僧菩提僊那やベトナム僧仏哲など大安寺に住む外国僧が活躍した。
重要文化財 東大寺縁起絵巻 下巻(奈良・東大寺)
このように奈良時代に威容を誇った大安寺は、平安時代以降、度重なる災害(火災や震災など)に遭い、現在、敷地は当時の4%ほどにまで縮小してしまいました。奈良時代の建物は全て失われましたが、驚くべき事に、奈良時代につくられた木彫像(木造の仏像)が9体も現在の大安寺に伝わっています。災害の度に、お寺に関わる人々が必死に守り抜いたのでしょう。これらの仏像は、鑑真と共に中国から来た工人が制作に関わったとも言われる奈良時代の代表的な木彫群の一つで、仏像の歴史にとっても大変重要な存在です。また、発掘調査では、中国製の華やかな陶器や、華麗な建物外装をうかがわせる釉薬(うわぐすり)がほどこされた瓦、巨大な塔が建っていたことを示す大型の建築装飾などが出土しています。いずれも大安寺の存在感にふさわしい、見事なものです。

大安寺に伝わる木彫の一つ。胸飾や腰帯などの装身具を、細やかに彫り出している。
重要文化財 伝楊柳観音立像(奈良・大安寺)

大安寺旧境内の発掘調査で出土した、唐三彩と呼ばれる中国製の陶器。大安寺の造営に関わった道慈が中国からもたらしたとも言われる。
陶枕(奈良文化財研究所)
4/23より、奈良国立博物館で開催している「大安寺のすべてー天平のみほとけと祈りー」では、日本の仏教の源流とも言える大安寺の魅力を様々な角度からご紹介する展覧会です。奈良時代の木彫像9体はもちろんのこと、70年近く積み重ねられてきた大安寺の発掘調査成果、大安寺にゆかりのあるお坊さん(空海や最澄も大安寺に深く関わっていました)の関連作品や、他の寺院に移ってしまったかつての大安寺の宝物など、124件の作品が展示されます。さながら、大安寺の「同窓会」とも言うべき本展覧会を通じて、大安寺の魅力に浸って頂けましたら幸いです。

中世の大安寺に安置されていた舎利容器。華麗な透彫が見事で、わが国を代表する舎利容器と評されるほど。
国宝 金銅透彫舎利容器(奈良・西大寺)
奈良国立博物館
(住所)〒630-8213
奈良県奈良市登大路町50番地
- 問合せ
- 050-5542-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 近鉄奈良駅下車東へ徒歩約15分
- またはJR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通「市内循環外回り」バス「氷室神社・国立博物館」下車すぐ
- 開館時間
- 9:30~17:00(土曜日は20:00まで)
- 展覧会・曜日によっては延長あり
- ※入館はいずれも閉館30分前まで
- ※最新情報は奈良国立博物館ウェブサイトをご確認ください
- 休館日
- 毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日)
- 12月28日~1月1日
特別展「大安寺のすべて―天平のみほとけと祈り―」
- 開催期間
- 4月23日(土)~6月19日(日)
- 休館日
- 毎週月曜日
- ※ただし5月2日(月)は開館
- 開催時間
- 9時30分~17時(4月29日(金)~5月7日(土)は19時まで)
- ※入館は閉館の30分前まで
- ※名品展とは開館時間が異なります
- 開催場所
- 奈良国立博物館 東西新館
- 観覧料
- (団体)一般¥1,600、高大生¥1,300、小中生¥600
- (当日)一般¥1,800、高大生¥1,500、小中生¥800
- ※団体料金は20名以上に適用されます。
- ※本展は日時指定制ではありません。
- ※障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名含む)、奈良博プレミアムカード会員の方(1回目及び2回目の観覧)は無料(要証明)。
- ※奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は当日券を400円、同(教職員)の方は1,700円でお求めいただけます(要証明)。参加校など詳細は奈良国立博物館ウェブサイトをご確認ください。
- ※観覧当日に証明書・会員証などの提示が必要です(一般と小学生以下を除く)。
- ※館内が混雑した場合は、入場を制限する場合があります。
- ※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)もご覧になれます。
- ホームページ
- 奈良国立博物館ウェブサイト