2022年11月25日
奈良文化財研究所70周年・平城宮跡史跡指定100周年記念特別展
「のこった奇跡のこした軌跡-未来につなぐ平城宮跡-」
奈良文化財研究所 展示企画室 アソシエイトフェロー 廣瀬智子
今年は、奈良文化財研究所が設立されてから70年、さらに平城宮跡が史跡に指定されてから100年、特別史跡に指定されてから70年の「記念の年」にあたります。史跡となった平城宮跡は、100年という歳月を経て大きくその姿を変え、現在を迎えています。奈良文化財研究所を中心にはじまった発掘調査をきっかけとして、それまで未知の世界であった1,300年前の地下の宮殿の姿が次第にあきらかとなってきました。
今回の特別展では、第1部「平城宮跡の調査のあゆみ」にて普段滅多にお目にかけない出土品やこれまでの発掘成果について展示し、第2部「未来につづく平城宮跡」では、平城宮跡で実験的におこなわれてきた遺跡整備・復原研究にまつわる試行錯誤の歴史と近年の活用事例、第3部「奈文研の軌跡」では、文化財をリサーチしてきた奈文研の各研究室について紹介します。
<見どころ1>『延喜式』の記述そのまま!奈文研マークの由来「隼人の楯」の実物を展示します!
昭和30年代の平城宮跡の発掘調査は、宮跡の範囲を確定することが大きな目的でした。昭和36年(1961)、当時特別史跡として未指定であった宮跡西南部で鉄道操車場建設計画があがり、調査が実施されます。これは全国的な遺跡の保存運動へと展開するきっかけとなった調査でもありました。写真1は、操車場の建設に反対する請願書で、奈文研が長らく保管していたものを今回初公開します。
写真2はその調査でみつかった井戸に転用(てんよう)されていた資料で、平安時代のルールブックともいえる法典『延喜式(えんぎしき)』の記述にぴったりと符号した通称「隼人(はやと)の楯(たて)」です。史料に記載された内容どおりのものが実際に出土した稀有な事例といえます。

写真1 操車場建設反対運動の請願書

写真2 隼人の楯
<見どころ2>奈良時代の内裏の面影!?「東大溝」からの多彩な出土品の数々。
平城宮の東エリアを南北に貫く大きな溝(通称:東大溝(ひがしおおみぞ))があります。この遺構は、昭和3年(1928)、平城宮跡での最初期の発掘調査でみつかったものです。天皇の住まいであった内裏(だいり)に近いという地理的な要因からか、他のエリアではあまりみられない、正倉院宝物のような優雅な姿を思わせる出土品をみることができます。6弁の花弁形飾鋲(かべんがたかざりびょう)が残る黒漆(くろうるし)塗りの調度品の部材、金銅製の刀装具、銅製の鈴、佐波理鋺(さはりわん)の破片など......。大祓(おおはらえ)に使用したとされる木製の人形(ひとがた)もここでは、貴人用の金属製の人形とともにみることができます。
また、当時の生活を感じさせるような日常用具や祭祀具などの多彩な木製品も出土しています。立体的でリアルな表現をもつ鳥形、顔形。馬形は、つぶらな瞳と毛並みが墨書きで表現されています。火起こしに使った火鑚板(ひきりいた)は、奈良時代の闇夜を照らす灯りにつかったのでしょうか。それとも、宮廷を彩った食卓の炊事用の火を起こしたのでしょうか...。長い年月をかけて調査が積み重ねられた記念碑的存在の東大溝の展示品を通じて、過去から未来へとつづく平城宮跡のありように想いを馳せていただけるきっかけとなれば幸いです。

写真3 東大溝から出土した多彩な金属・木製品

写真4 黒漆塗りの調度品の一部と飾鉄
花弁の形をした飾鋲が残る黒漆塗の板で、黒漆塗の櫃(ひつ)の蓋板と考えられるもの。
正倉院宝物の櫃によく似ています。
【主催】奈良文化財研究所/【開催場所】平城宮いざない館
(住所)奈良文化財研究所 〒630-8577 奈良県奈良市二条町2-9-1
平城宮いざない館 〒630-8012 奈良市二条大路南3-5-1
- 問合せ
- 内容に関するお問合せ:奈良文化財研究所連携推進課 0742-30-6753
- 開館情報に関するお問合せ:平城宮跡管理センター 0742-36-8780
- 交通
- ●平城宮跡歴史公園へは「ぐるっとバス」で(土日祝ダイヤ15分間隔、
- 平日ダイヤ30分間隔で運行/運賃100円)
- ・近鉄大和西大寺駅南口から「朱雀門ひろば」停留所まで約10分
- ・近鉄奈良駅から「朱雀門ひろば前」停留所まで約13分
- ●JR奈良駅西口から路線バス学園前駅行きにて「朱雀門ひろば前」
- 停留所まで11分
- 開館時間
- 10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
- 会期中 11/14(月)休館
- 休館日
- なし(会期中11/14(月)のみ休館)
- 観覧料
- 無料

奈良文化財研究所70周年・平城宮跡史跡指定100周年記念特別展「のこった奇跡のこした軌跡-未来につなぐ平城宮跡-」
- 開催期間
- 10月29日(土)~12月11日(日)
- ※11月14日(月)は休館
- 開催時間
- 10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
- 開催場所
- 平城宮跡歴史公園 平城宮いざない館 企画展示室
- 観覧料
- 無料
