2023年1月25日
人形と春の一日を
京都国立博物館 企画室長兼工芸室長 山川 曉
皆さんの家では、今年は雛人形を飾る予定ですか?年中行事として定着している三月三日の雛まつりですが、人形を飾ってこの日を祝うようになったのは、江戸時代の初めとされています。
雛まつりの起源のひとつとされる上巳の節供は、三月のはじめに行われる禊の行事でした。そこでは、日常生活の中で人間についた穢れを人形と呼ばれる人間の形をかたどった紙に移し、水に流すなどして捨て去りました。現代でも「流し雛」として目にする通りです。この習俗がやがて、もうひとつの起源とされる、子どもがままごと遊びなどに用いる人形と結びつき、江戸時代には座敷に飾りつける豪華な雛人形や雛段へと発展したのです。
江戸時代の雛人形は、元号を冠して呼ばれる寛永雛・享保雛や、考案した人形師の名に由来するという次郎左衛門雛、江戸で誕生した古今雛、公家の装束を正しく写した有職雛など、特徴に応じて分類することができます。町方や武家などの社会階層、製作された時代によって、雛人形にも好みや流行があったのです。この特集展示では、人形の面差し、衣裳、大きさなどに注目し、各種の雛人形の特徴を紹介します。
ところで、雛人形は三月三日前後にのみ飾られるものですが、私たちがフィギュアを身近に飾るように、江戸時代にも座敷を飾る人形が愛好されていました。とりわけ人形の産地であった京都では、伏見人形・嵯峨人形・御所人形・賀茂人形・衣裳人形と各種の京人形が製作され、公家を中心に人々の生活空間を彩っていたのです。本年はこの中から、衣裳人形を中心に展示します。衣裳人形とは、美しい衣服を身に着けた、町の流行や風俗を映す人形。子どもの愛くるしい仕草、美しい女性や男性の姿が主題です。これらの人形を遊びと旅の場面に見立てて展示し、人形に託して、私たちの願う感染症の収束した世界をご覧いただきます。
忙しい日々の中では雛人形を飾ることが難しい方もいらっしゃると思います。博物館の雛まつりでひと足早い春の訪れを感じてください。

享保雛(大内雛) 京都国立博物館
犬張子・懸盤 入江波光コレクション・入江酉一郎氏寄贈 京都国立博物館

衣裳人形 お迎え人形 入江波光コレクション・入江酉一郎氏寄贈 京都国立博物館

衣裳人形 笛吹き若衆 入江波光コレクション・入江酉一郎氏寄贈 京都国立博物館
京都国立博物館
〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
- 会期
- 2023年2月4日(土)~3月5日(日)
- 開館時間
- 9:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 一般¥700 大学生¥350
- ※本観覧料で当日の平成知新館の全展示をご覧いただけます。
- ※大学生の方は学生証をご提示ください。
- ※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料です(年齢のわかるものをご提示ください)。
- ※キャンパスメンバーズ(含教職員)は、学生証または教職員証をご提示いただくと無料になります。
- ※障害者手帳等(*)をご提示の方とその介護者1名は、観覧料が無料になります。
- *身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)受給者証、小児慢性特定疾病医療受給者証
- ※名品ギャラリーに学校の教育活動、総合学習等で小学生・中学生・高校生を引率される先生方は、無料となります。
- 問合せ
- 075-525-2473(テレホンサービス)
- 交通
- JR京都駅下車、京都駅前D2のりばから市バス各系統にて博物館三十三間堂前下車、徒歩すぐ
