2023年3月24日
「デジタル法隆寺宝物館」へようこそ!
文化財活用センター 企画担当主任研究員 西木政統

デジタル法隆寺宝物館
「有名な作品を見ることを楽しみに来たのに展示されていなかった」「展示室が暗くて、ガラス越しでは作品がよく見えなかった」といった経験はありませんか?とくに日本の文化財は劣化しやすい素材や技法で作られたものが多く、保存上の理由から展示期間や展示環境に制約があり、いつでもじっくりご覧いただける訳ではありません。東京国立博物館にある法隆寺宝物館では、法隆寺ゆかりの宝物300件あまりを収蔵・展示していますが、やはり冒頭のような感想を持たれた方も少なくないでしょう。2023年1月31日に開室した「デジタル法隆寺宝物館」では、従来の文化財展示の制約にとらわれずに「いつでも」「じっくり」法隆寺ゆかりの名宝をお楽しみいただけると思います。

「デジタル法隆寺宝物館」展示室(法隆寺宝物館 中2階)(画像提供:株式会社 昭栄美術)
「デジタル法隆寺宝物館」は、2018年の文化財活用センター創設以来、制作してきた法隆寺ゆかりの文化財のデジタルコンテンツや復元模造をご覧いただく体験型展示スペースです。国宝「聖徳太子絵伝」および「法隆寺金堂壁画」、ならびに伎楽面と伎楽装束について、原品の文化財では叶わない、複製ならではの鑑賞体験をご提供します。

8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」と原寸大グラフィックパネル(複製) 展示期間:1/31~7/30(画像提供:株式会社 昭栄美術)

国宝「聖徳太子絵伝」部分(11歳、雲のように空に浮かぶ聖徳太子)
半年毎の展示替を予定しており、現在は聖徳太子の事績を50以上の場面として描いた国宝「聖徳太子絵伝」のコンテンツを展示しています(7月30日まで)。平安時代・延久元年(1069)に絵師秦致貞が10面もの大画面に描いた原品は、日本的な絵画表現であるやまと絵の初期作としても重要ですが、公開は不定期で、ガラス越しでは細部まで見ることはできません。一方、2018年に文化財活用センター、東京国立博物館がNHKエデュケーショナルと共同開発したデジタルコンテンツでは、見たい画面の高精細画像を8Kモニターで自由にご覧いただけます。展示室には原寸大のグラフィックパネルを本来の配置で展示しており、かつて絵伝があった法隆寺東院の絵殿にいる感覚を体験できます。

法隆寺金堂壁画写真ガラス原板 デジタルビューアとグラフィックパネル(複製) 展示期間:8/1~2024/1/28

法隆寺金堂壁画写真ガラス原板 デジタルビューア操作画面
8月1日からは、アジアを代表する壁画でありながら、惜しくも火災で焼損した法隆寺金堂壁画のデジタルコンテンツを、堂内を再現して配置したグラフィックパネルとともに展示します。2019年に法隆寺、奈良国立博物館、国立情報学研究所で共同開発され、現在はウェブ上で公開されているコンテンツですが(法隆寺金堂壁画写真ガラス原板デジタルビューア)、「デジタル法隆寺宝物館」会場の70インチの8Kモニターで見れば新たな魅力が発見できるかもしれません。

伎楽面と伎楽装束 展示期間:【伎楽面 呉女・伎楽装束 裳】1/31~7/30【伎楽面 迦楼羅・伎楽装束 袍】8/1~2024/1/28
また、法隆寺宝物館では、幻の芸能と呼ばれる伎楽に用いられた仮面や装束も収蔵しております。とりわけ飛鳥時代に製作された伎楽面は現存最古の遺品として貴重ですが、2019年に呉女面と迦楼羅面の復元模造を制作しました。2021年に制作した伎楽装束の裳と袍とともに、厳密な考証によって素材や技法まで復元し、破損や退色する以前の華やかな姿がよみがえりました。会場やウェブ上で公開している紹介映像では、制作工程もご覧いただけますので、ぜひあわせてご参照のうえ、古代美術の世界をお楽しみください。
*令和4年度日本博イノベーション型プロジェクト 補助対象事業(独立行政法人日本芸術文化振興会/文化庁)
東京国立博物館 法隆寺宝物館 中2階
(住所)〒110-8712
東京都台東区上野公園13-9
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- (ハローダイヤル 受付時間 午前9時~午後8時/年中無休)
- 交通
- JR上野駅公園口・鶯谷駅南より徒歩10分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅、京成電鉄 京成上野駅より徒歩15分
- 開館時間
- 9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
- 観覧料
- 総合文化展観覧料(一般1,000円、大学生500円)もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]でご覧いただけます
