2023年7月25日
浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展
聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―
奈良国立博物館主任研究員 山口隆介
今月8日、奈良国立博物館で特別展「聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―」が開幕しました。「浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念」を冠するこの展覧会は、平成30年(2018)度より5か年をかけて当館の文化財保存修理所でおこなわれた浄瑠璃寺の本尊九体阿弥陀像の保存修理が完成したことを記念し、最終年度に修理されたその1とその8の面目を一新した姿をお披露目するとともに、南山城とその周辺地域の寺社に伝わる文化財を一堂に展観する企画です。
![国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうちその8) 平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]](img/img-110-01.jpg)
国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうち その8)
平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]
![国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうちその1) 平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]](img/img-110-02.jpg)
国宝 阿弥陀如来坐像(9軀のうち その1)
平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市]
京都府の最南部に位置する南山城地域は、京都との関係が深いのはもちろんですが、奈良市に隣接する地理的条件から古来より奈良とも密接に関わりながら歴史を刻んできました。なだらかな山間を木津川が流れる風光明媚な地であり、木津川流域の山々や、大和と山城、近江、伊賀を結ぶ街道沿いには僧侶が修行に励んだ仏教の聖地ともいうべき古寺が点在しています。本展では南山城を語るうえで欠かすことのできない7つのトピック(①恭仁京の造営と古代寺院、②密教の広がりと山岳修験、③阿弥陀仏の浄土、④解脱上人貞慶と弥勒・観音信仰、⑤行基と戒律復興、⑥禅の教えと一休禅師、⑦近世の南山城と奈良)を通して、その魅力をご紹介しています。

恭仁大橋からながめる木津川
浄瑠璃寺九体阿弥陀像とともにご注目いただきたいのが、同寺三重塔の本尊薬師如来坐像と十二神将立像(静嘉堂文庫美術館・東京国立博物館分蔵)です。この十二神将像は明治17年(1884)ごろまでに2度にわたって浄瑠璃寺から流出しましたが、本展において約140年ぶりに12軀そろって里帰りします。頭髪を振り乱して怒号する巳神、左手を額にかざしてじっとかなたを見やる戌神など、まことにいきいきとした表情をみせる名品であり、かつて随侍していた薬師如来像と再会を果たす空間は、すばらしいものとなるでしょう。

(中央)重要文化財 薬師如来坐像 平安時代(11世紀) 京都・浄瑠璃寺[木津川市] 画像提供:京都国立博物館 展示期間:7/9~8/6 ※薬師如来坐像の展示は7月9日(日) からとなります。
重要文化財 十二神将立像のうち辰神・巳神・未神・申神・戌神 鎌倉時代(13世紀) 東京国立博物館 画像提供:東京国立博物館
重要文化財 十二神将立像のうち子神・丑神・寅神・卯神・午神・酉神 鎌倉時代(13世紀)、亥神 鎌倉時代 安貞2年(1228) 東京・静嘉堂文庫美術館 画像提供:(公財) 静嘉堂/ DNPartcom
本展は浄瑠璃寺九体阿弥陀像のうち2軀を修理後初公開するとともに、その優美な姿を寺外で拝することのできるまたとない機会となります。さらに、南山城とその周辺地域の寺社に伝わる仏像や神像を中心に、絵画や典籍・古文書、考古遺品などを一堂に展観することで、この地に花開いた仏教文化の全貌に迫ります。多彩な作品を通して南山城のゆたかな歴史と文化を再認識していただくとともに、本展観覧後にはぜひとも現地を訪れ、いまもなお受け継がれる聖地の息づかいを感じていただければ幸いです。
奈良国立博物館
(住所)〒630-8213
奈良県奈良市登大路町50番地
- 問合せ
- 050-5542-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 近鉄奈良駅下車 東へ徒歩約15分
- またはJR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通「市内循環外回り」バス「氷室神社・国立博物館」下車すぐ
- 開館時間
- 原則9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
- ※展覧会・曜日によっては延長あり
- ※最新情報は奈良国立博物館ウェブサイトをご確認ください
- 休館日
- 毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日)
- 12月28日~1月1日
浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―」
- 開催期間
- 7月8日(土)~9月3日(日)
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし7月17日は開館)、7月18日(火)
- 開催時間
- 9:30~18:00
- ※入館は閉館の30分前まで。
- ※名品展(なら仏像館・青銅器館)とは休館日・開館時間が異なります。
- 開催場所
- 奈良国立博物館 東西新館
- 観覧料
- (当日)一般\1,800、高大生\1,300、小中生\600
- (団体)一般\1,600、高大生\1,100、小中生\400
- ※未就学児および障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名含む)、奈良博メンバーシップ・プレミアムカード会員の方(1回目及び2回目の観覧)は無料(要証明)。
- ※奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は当日券を400円、同(教職員)の方は1,700円でお求めいただけます(要証明)。
- ※観覧当日に学生証・証明書・会員証などの提示が必要です(一般と小学生以下を除く)。
- ※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)もご覧になれます。
- ※館内が混雑した際は、入場を制限する場合があります。
- ※本展は日時指定制ではありません。
- ホームページ
- 奈良国立博物館ウェブサイト