2023年11月24日
【特別号】皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび -受け継ぐ美-」
皇居三の丸尚蔵館 副館長 朝賀 浩
本年11月に開館30年を迎えた三の丸尚蔵館が、装いを新たに「皇居三の丸尚蔵館」として開館いたしました。
昭和天皇の時代まで「御物」として皇室に守り伝えられ尊崇されてきた作品の数々が、平成になり国に寄贈され、宮内庁三の丸尚蔵館で保存・公開されることとなりました。以来30年、御物ではなくなったこれらの作品の文化財的価値が一般には判りにくくなってしまい、対策を講じることが求められました。美術品や文化財の価値を国民にもっとも解りやすく表現する方法としては、文化庁による文化財指定の制度が広く定着しています。そのため、文化庁と協議し、指定のための調査を進め、令和3年度に国宝5件、同4年度には国宝3件、重要文化財3件が指定されました。
本年10月に宮内庁から国立文化財機構へ移管され、新たに「皇居三の丸尚蔵館」として再出発した当館の開館記念展「皇室のみやび -受け継ぐ美-」では、当館収蔵品のエッセンスを4期に分けて展観しますが、その第一弾は「三の丸尚蔵館の国宝」と題し、展示を行っております。その中から、4件の国宝をご紹介いたします。
国宝 高階隆兼筆《春日権現験記絵》 鎌倉時代
藤原氏の氏神を祀る奈良・春日大社に関わる縁起を20巻にまとめた絵巻。左大臣西園寺公衡が制作を立案して、前関白鷹司基忠とその息子たちが詞書を書写し、宮廷御用絵師のトップ高階隆兼が描きました。豊麗な色彩と詳密な描写を特徴とする中世やまと絵の代表作。鷹司家から明治天皇へ献上されたものです。
国宝《春日権現験記絵》巻十二(部分)高階隆兼 鎌倉時代
延慶2年(1309)頃 皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間11/3~11/26]
国宝 《蒙古襲来絵詞》 鎌倉時代
モンゴル帝国は中国を平定し周辺地域を次々に征服しましたが、やがてその勢力は日本へも襲いかかり、鎌倉時代の後半に2度にわたって侵攻してきました。文永・弘安の役と呼ばれる元寇です。この東アジアの歴史的大事件を、実際に戦いに関わった日本の武士が自らの活躍と併せて記録した絵巻が本作です。双方の武装の詳細が描写され、日本史の教科書にも掲載される作品です。
国宝《蒙古襲来絵詞》後巻(部分)鎌倉時代(13世紀)
皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間11/3~12/24(半期巻替)]
国宝 伊藤若冲筆《動植綵絵》 江戸時代
18世紀の後半、主に京都で活躍した独学の絵師・伊藤若冲の代表作です。若冲40歳頃からおよそ10年をかけて描かれ、釈迦三尊像とともに相国寺に奉納された30幅の花鳥画の大作です。多彩なモチーフを上質の絵具を用い、緻密な表現技法で写実的な描写を行い、大胆な画面構成で幻想的な画面空間を作り出しています。相国寺から明治天皇に献納された作品です。
国宝《動植綵絵 老松白鳳図》伊藤若冲 江戸時代(18世紀)
皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間11/3~11/26]
国宝 小野道風筆《屏風土代》 平安時代
10世紀前半の平安時代、醍醐天皇の勅命で内裏において使用する屏風を新調し、大江朝綱が漢詩を作り、それを小野道風が屏風に貼る色紙に書きつけました。《屏風土代》はそのための下書きです。下書きのため各所に推敲のあとが見られますが、かえって生き生きとした筆さばきを認めることができます。道風は三蹟の1人で、和様の書風の創始者として後世の規範となりました。井上馨が大正天皇に献上したものです。
国宝《屏風土代》(部分)小野道風 平安時代 延長6年(928)
皇居三の丸尚蔵館収蔵[展示期間11/3~12/24(半期巻替)]
皇居三の丸尚蔵館
(住所)〒100-0001
東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 地下鉄各線の大手町駅(C13a出口)から徒歩約5分
- JR東京駅(丸の内北口)から徒歩約15分
- 開館時間
- 午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
- 休館日
- 月曜日(ただし月曜が祝日または休日の場合は開館し、翌平日休館)、
12月25日(月)~1月3日(水)および展示替え期間 - 観覧料
- 一般 1,000円, 大学生 500円, 図録付チケット 2,500円
※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者各1名は無料
- 【鑑賞環境保持等のため、オンラインによる事前予約をお願いしています。】
- ホームページ
- https://shozokan.nich.go.jp/