2024年11月25日
特別展「法然と極楽浄土」
京都国立博物館 企画室 主任研究員 井並 林太郎
本年は、法然(1133~1212)が教義を立て浄土宗を開いたとされる承安5年(1175)から850年の節目にあたります。
平安時代末期、内乱や災害・疫病が頻発し、釈迦の教えが廃れてしまったという末法思想が広がりました。人々が疲弊する中、比叡山延暦寺で学んでいた法然は、唐代の浄土僧である善導(613~681)の著作をもとに新しい教えを説くに至ります。それは、ひたすら「南無阿弥陀仏」(阿弥陀如来を信じます、帰依します)と声に出して称えるだけで、誰もが等しく阿弥陀仏に救われ、極楽浄土に往生できるというものでした。他の難しい修行や、財力が必要な造寺造仏などを否定し、従来の仏教と大きく異なる革新的な教義を主張したのです。
そのため、異なる立場の僧や寺からは激しい反発も起こりました。それでも法然のもとには、幅広い貴賤の帰依者や弟子たちが集まり、教団が形成されたのです。
法然自身、晩年には四国へ流されてしまいますが、京都に戻り80歳で往生すると、今度は弟子たちが念仏の教えをそれぞれのかたちで受け継ぎました。これによって、日本の浄土信仰が深化し、また長い年月をかけて根付いたといえます。

(展示風景 左から)重文 地蔵菩薩立像 愛知・西光寺像【10月8日~12月1日展示】
阿弥陀如来立像 京都・百萬遍知恩寺像 【10月8日~12月1日展示】
重文 法然上人坐像 奈良・當麻寺奥院蔵 【10月8日~11月4日展示】
重文 善導大師坐像 奈良・来迎寺蔵 【10月8日~11月4日展示】
本展では、法然の時代から、弟子たちによる諸派の創設と教義の確立、そして徳川将軍家の帰依によって大きく発展を遂げるまでの歴史を、全国の浄土宗寺院等が所蔵する国宝、重要文化財を含む貴重な名宝によってたどります。
会場には、阿弥陀仏への祈りを託した彫像や、浄土図・来迎図、または法然への尊崇から生まれた肖像や絵伝、あるいは教学が研鑽されるなかで培われた貴重な仏教典籍など、浄土宗の歴史の中で生み育まれた文化財が集まります。日本の宗教文化や死生観に深い影響を与えたこの宗派の重要性を知っていただく、またとない機会になるでしょう。
とくに、国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」(京都・知恩院蔵)は来迎図の最高傑作のひとつとして知られる名品です。紡ぐプロジェクトによる修理によって、制作当初の魅力に迫ることができました。修理後初公開の今回、鎌倉時代仏画の代表作たる本作の美をじっくりご覧いただきたいと思います。

国宝 阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)
京都・知恩院蔵 【11月6日~12月1日展示】
法然が活動の拠点としたここ京都には、総本山知恩院をはじめとする本山級の浄土宗寺院や、法然ゆかりの史跡が多く所在しています。さまざまな問題を抱える現代にも通じる時代を生きた法然、その教えに触れ、またそこから生まれた文化財をご覧いただくとともに、寺を訪れ、極楽往生を願った先人の足跡に思いを馳せていただければ幸いです。
京都国立博物館
『特別展 法然と極楽浄土』
2024(令和6)年10月8日(火)~12月1日(日)
(住所)〒605-0931
京都市東山区茶屋町527
- 問合せ
- 075-525-2473(テレホンサービス)
- 交通
- JR京都駅下車、京都駅前D2のりばから市バス各系統にて博物館三十三間堂前下車、徒歩すぐ
- 開館時間
- 9:00~17:30、金曜日のみ9:00~20:00 ※入館は閉館30分前まで
- 休館日
- 月曜日
※ただし、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館し、10月15日(火)、11月5日(火)休館 - 観覧料
- 一般¥1800 大学生¥1200 高校生¥700
※前売券については、展覧会公式サイトにてお知らせいたします。
※大学生・高校生の方は学生証をご提示ください。
※中学生以下、障害者手帳等(*)をご提示の方とその介護者1名は、観覧料が無料になります。
*身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)受給者証、小児慢性特定疾病医療受給者証
※キャンパスメンバーズ(含教職員)は、学生証または教職員証をご提示いただくと、各種当日料金より500円引き(一般1,300円、大学生700円、高校生200円)となります。 - ホームページ
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https://www.kyohaku.go.jp/jp/exhibitions/special/honen_2024/