2025年3月25日
奈良文化財研究所 平城宮跡資料館令和6年度春期企画展
UnEarth 2025-平城宮・京の調査研究最前線-
奈良文化財研究所 企画調整部展示公開活用研究室 主任研究員 小田裕樹
奈良文化財研究所(通称「奈文研」)では、平城宮・京の発掘調査を継続的に実施しています。これらの調査成果は、遺構や出土遺物の検討を経て、速やかに公開するよう努めています。
今回の春期企画展では、『奈良文化財研究所紀要2022』・『奈良文化財研究所発掘調査報告2023』に掲載した平城宮・京跡の発掘調査の成果を中心に展示しています。
いずれの調査も研究員がフィールドに立ち、地下から現れる遺構や遺物をどのように理解するのか、頭を悩ませながら実施してきたものばかりです。このような調査研究の積み重ねの上に、奈良時代の都である平城京、そしてその中心である平城宮の姿が鮮やかによみがえってくるものと考えています。
今回の展示では、平城宮東方官衙地区で調査した宮の基幹水路SD2700から出土した遺物を展示しています。この調査では、溝に埋まっていた土を層位ごとに持ち帰り、遺物の内容を精査しました。その結果、溝の堆積の変遷が遺物の変化を通して明らかになりました。また、人形や馬形、箸や匙、巻物軸など、多彩な木製品が出土しており、周辺の役所での活動の様子が分かってきました。

平城宮東方官衙地区基幹水路SD2700(北から)
平城京左京三条一坊十五坪の調査では、珍しい構造の井戸が見つかりました。井戸の底面に多量の木屑を敷いており、この木屑層の中からは、木槌やものさし、板材、「伊賀榲久礼」(伊賀国のスギの木材)と書かれた木簡が出土しました。板材の中には、整理作業の過程で接合できたものもあり、この場所で木材加工がおこなわれていたことを示しています。これらの出土遺物から、十五坪周辺に役所が存在していたことを推定できるようになりました。
今回は、これらの木製品を水漬けの状態で展示しています。発掘調査で出土した木製品は、保存処理を経て乾燥した状態で展示することが多いのですが、今回は出土して間もない木製品をご覧いただくために、このような方法で展示しています。

平城京左京三条一条十五坪出土木槌
このほか、奈文研の最新の調査研究成果についても取り上げています。中国との共同研究を受けて過去の調査を見直すことにより明らかになった平城宮・京出土の唐白瓷や、最新の手法を用いた平城宮東院地区出土土師器甕の残存脂質分析の結果についても展示しています。

平城京出土の唐白瓷
今回の展示を通じて、研究員が平城宮・京の実態解明に挑んだ成果をご覧いただき、奈文研の調査研究活動に対して、より一層のご理解を賜りたいと考えています。
奈良文化財研究所 平城宮跡資料館
春期企画展「UnEarth 2025 -平城宮・京の調査研究最前線-」
【会期】令和7(2025)年2月15日(土)~4月13日(日)
(住所)〒630-8577
奈良県奈良市佐紀町
- 問合せ
- 0742-30-6753(奈良文化財研究所総務課)平日9:00~17:00
- 交通
- 近鉄大和西大寺駅北口より東へ徒歩約15分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:毎週月曜日 (祝日の場合は翌平日)、 年末年始 - 観覧料
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