2025年6月30日
特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」
九州国立博物館学芸部文化財課長 伊藤信二(いとうしんじ)

令和7年(2025)開館20周年を記念して、特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」を開催します。テーマは「宝」。まず九州・沖縄にゆかりのある国宝が一堂に会します。次に、九博がこの20年で収集した数々の「たから」の中から作品を厳選したうえで、驚きやワクワク感を感じていただけるような展示の方法を試みます。
九博が開館以来目指してきた「学校よりおもしろく、教科書よりわかりやすい」を再確認していただくとともに、皆さんによりいっそう展覧会を身近に感じていただけるような、そんな新しい時代の記念特別展を目指します。

国宝 梵鐘 飛鳥時代・7世紀 福岡・観世音寺
菅原道真公も漢詩に詠みこんだというこの梵鐘は、京都・妙心寺の鐘と鐘身部の形状や形式が酷似し、古来兄弟鐘と並び称されて有名です。口縁に記される「上三毛」は現福岡県豊前市周辺をさし、妙心寺鐘とともに北部九州の制作と推測されます。撞座が下からかなり高い位置にあるのは古い様式です。日本製では最古級の鐘ながら、姿形はバランスよく整っており、日本の梵鐘の代表作です。

国宝 蒙古襲来絵詞(後巻) 鎌倉時代・13世紀 国(皇居三の丸尚三館収蔵)
2度にわたるモンゴル襲来に応戦した肥後国(熊本県)の武士、竹崎季長(1246~?)の戦闘の実体験を記録した貴重な資料。本展覧会に出陳する後巻には、弘安の役を描いた11の絵と7つの詞書、奥書が収められています。両軍の合戦のさまや、武具・馬具などの生き生きとした描写も高く評価される鎌倉時代絵巻物の傑作です。令和3年(2021)に指定された比較的新しい国宝です。

左:重要文化財 男神坐像 平安時代・12世紀 九州国立博物館
右:女神坐像 平安時代・12世紀 九州国立博物館
2体ともヒノキの一木造りで、顔立ちやプロポーション、中心部材の大きさや年輪の幅などが共通することから、同一の作家が同じ材から彫刻したと判断され、背中に穿たれた孔の位置、彩色や表面の保存状態も近似することから、同じ場所で一緒に祀られていた可能性が高いと考えられるものです。この2体は、約100年前にもある個人のもとに一緒に伝わっていたようですが、その後別れ別れとなり、ペアであったことも永く忘れ去られていました。2007年、奈良国立博物館での展覧会で展示され、もともと一具の像と判明しました。九州国立博物館では女神像を2013年、男神像を2023年に迎え入れ、約100年ぶりの復縁を叶えることができたのです。

刀 銘九州肥後同田貫上野介 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 九州国立博物館
同田貫は肥後国で活躍した刀工の一派です。初代が正国のちの上野介で、文禄から慶長年間にかけての作刀が確認されます。一般に同田貫は、頑丈で切れ味のよい実用本位のものとされ、本品も反り浅く元幅と先幅にあまり差をもうけず大鋒に結ぶ体配、白けて大模様の板目肌が肌立つ地鉄、直刃に小互の目の交じった刃文などに、質実剛健な同田貫の特色がみられます。世界のホームラン王、王貞治氏より平成28年度に寄贈されたものです。

重要文化財 人形人参(対馬宗家関係資料) 江戸時代・正徳3年(1713) 九州国立博物館
人の形をした朝鮮人参。朝鮮人参は貴重な薬で、江戸時代の日朝貿易の重要な輸入品でした。朝鮮との外交・貿易の窓口を独占的に担っていた対馬藩では、人参の輸入も大事な使命で、勘定所の「人参掛」が取り扱っていました。この人参は正徳3年に人参掛で発見され、家老の平田隼人が藩主に献上したものです。その後は宗家の家宝となり、宗家伝来の資料として今に伝わっています。
九州国立博物館開館20周年記念特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」
- 開館時間
- 7月5日(土)~8月31日(日)
- 開催場所
- 九州国立博物館 3階 特別展示室
- 観覧料
- 一般2,000円(1,800円)、高大生1,000円(800円) 中学生以下無料 ※()は前売り料金
※上記料金で九州国立博物館4階「文化交流展(平常展)」もご観覧いただけます。
※障がい者とその介護者1名は無料です。展示室入口にて障害者手帳等をご提示ください。
※大学生以下の方は学生証や生徒手帳をご持参ください。
※会場の混雑状況によっては、ご入場までお待ちいただくことがございます。
※会期中のチケット購入には当日料金が適用されます。
※チケット購入の際にプレイガイドによって各種手数料が発生する場合があります。 - ホームページ
九州国立博物館
(住所)〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4-7-2
- 問合せ
- 050-5542-8600
(ハローダイヤル 受付時間 午前9時~午後8時/年中無休) - 交通
- 最寄り駅:西鉄太宰府駅から徒歩約10分
■最寄り駅へのアクセス
【西鉄電車】西鉄福岡(天神)駅から西鉄天神大牟田線で西鉄二日市駅乗り換え、西鉄太宰府線で西鉄太宰府駅下車
【J R】JR二日市駅から西鉄二日市駅(徒歩約12分、バス約6分)、西鉄二日市駅から西鉄太宰府線利用
【西鉄バス】博多バスターミナルから西鉄太宰府駅下車(約40分)
■車
【九州自動車道】太宰府ICから約15分・筑紫野ICから約20分
【タクシー利用】JR二日市駅から約15分・福岡空港から約30分 - 開館時間
- 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
特別展期間中の金曜日・土曜日は午前9時30分~午後8時(入館は午後7時30分まで)
※状況により開館時間を変更することがありますので、最新の開館時間は九博公式サイトをご確認ください。 - 休館日
- 月曜日(ただし7/21[月・祝]、8/11[月・祝]は開館、7/22[火]は休館