2025年10月28日
特別展「宋元仏画―蒼海(うみ)を越えたほとけたち」
京都国立博物館 学芸部 研究員 森橋なつみ
国宝 孔雀明王像 中国・北宋時代 11~12世紀 京都・仁和寺蔵【前期展示】
「宋元仏画」という言葉に聞き馴染みのない方が多いでしょう。日本の美術史研究の上で使われている言葉で、中国の宋時代から元時代にかけて制作された仏教絵画のことを指しています。この「宋元仏画」、日本の仏教美術の発展に果たした功績はとてつもなく大きいものでした。本展では、日本で大切に守り伝えられてきた宋元仏画をあつめてその特色をご紹介するとともに、日本との深い関係も紐解いていきます。
展覧会は七つの章と二つのトピックで構成しています。宋元時代の仏画を立体的に考えるため、関連作例もたくさん並ぶので、せっかくの機会ですから、たっぷりご堪能いただきたいと思います。
第一章は「宋元文化と日本」。日本人が中国からの舶載品である唐物を愛してやまなかったことはご存じかもしれません。現在でも、曜変天目茶碗や龍泉窯の青磁など美しい陶磁器に目を奪われますが、宋元時代につくられたものに対する特別な価値観は、室町時代以来、現在にも脈々とつづいています。仏画も例外ではなく、宋元仏画の圧倒的表現力は、宗教画としての充実とともに、純粋な造形美として日本人の心につよく働きかけてきました。
第二章「大陸への求法―教えをつなぐ祖師の姿」、第三章「宋代絵画の諸相―宮廷と地域社会」、第四章「牧谿と禅林絵画」は展覧会の柱である宋元仏画を一挙にご覧いただきます。一言に仏画といっても、礼拝する仏様の姿を表す絵画だけでなく、禅宗の祖師の肖像画(頂相)や水墨人物画を含めて見渡したいと思います。息をのむほど精緻な北宋の《孔雀明王像》や、日本人憧れの牧谿の《観音猿鶴図》など、いずれも必見です。
国宝 観音猿鶴図 牧谿筆 中国・南宋時代 13世紀 京都・大徳寺蔵【後期展示】
第五章「高麗仏画と宋元時代」は、同時代の仏教国家・高麗の仏画に軸をとって、宋元仏画を相対的に捉えます。熱心な信仰が麗しい装飾美に結実した高麗仏画の特色とともに、宋や元との造形的なつながりにも気づくことができます。第六章「仏画の周縁―道教・マニ教とのあわい」は、ちょっと変わった視点から。仏画に入り込んだ、あるいは仏画の姿を借りた他宗教の画像を含めて、宋元仏画の多様性な側面をのぞいてみましょう。
締めくくりは第七章「日本美術と宋元仏画」。日本美術の巨匠たちの傑作の裏に、宋元仏画の学習成果あり。ぐっと身近に感じていただけることを期待しています。さらに仏画だけでなく、仏像と経典(経絵)を特集するふたつのトピック展示にもご注目ください。宋元仏画の魅力、余すことなくお伝えします。
重要文化財 枯木猿猴図 長谷川等伯筆 桃山時代 16世紀 京都・龍泉庵蔵
宋元仏画―蒼海(うみ)を越えたほとけたち
2025(令和7)年9月20日(土)~11月16日(日)
前期展示:2025年9月20日(土)~10月19日(日)
後期展示:2025年10月21日(火)~11月16日(日)
特別展URL: https://www.kyohaku.go.jp/jp/exhibitions/special/2025_song-yuan/![]()
京都国立博物館
〒605-0931 京都市東山区茶屋町527
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https://www.kyohaku.go.jp/jp/exhibitions/special/2025_song-yuan/

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- 毎週月曜日
※ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館し、10月14日(火)、11月4日(火)休館 - 観覧料
- 一般2,000円(1,800円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金。
※大学生・高校生の方は学生証をご提示ください。
※中学生以下、障害者手帳等(*)をご提示の方とその介護者1名は、観覧料が無料になります。
*身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)受給者証、小児慢性特定疾病医療受給者証
※キャンパスメンバーズ(教職員を含む)は、学生証または教職員証をご提示いただくと、各種当日料金より500円引き(一般1,500円、大学生700円、高校生200円)となります(当日南門チケット売場のみの販売、ほかの割引との併用はできません)。
