2025年12月25日
博物館に初もうで 午―神と人をつなぐ祈りのかたち―
東京国立博物館調査研究課考古室 主任研究員 飯田茂雄
年始の恒例行事となりました、東京国立博物館の新春のイベント「博物館に初もうで」。令和8年(2026年)は午(馬)年。1月1日の元旦から特集「午―神と人をつなぐ祈りのかたち―」と題して展示いたします。
日本に馬がもたらされたのは古墳時代、4世紀から5世紀にかけてのことと考えられています。長距離移動に長け、機動力に富む馬は主に戦の場面で活躍し、王や武人から大切に扱われました。時には古墳の近くに馬が埋葬されることもあったことからも、人にとって他の動物とは違った特別な存在であったのでしょう。以来、馬は人の良きパートナーとして軍事や運搬、交通、農耕など多方面にわたって欠かせない存在となりました。
今回の展示では馬の魅力に迫るため「人と馬との出会い」、「武士と馬」、「馬と神事」の3つのテーマで構成しました。ここではそれぞれのテーマから珠玉の作品をご紹介します。
馬形埴輪 群馬県大泉町出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館蔵
埴輪(はにわ)は、古墳時代の王の墓・古墳に立てられた素焼きの器物で、人物や動物を象った様々な形のものが作られました。なかでも馬形埴輪は、特に牧(まき・馬の飼育場)が盛んに作られた関東地方でよく出土します。その造形はゆるキャラのように、どこかユーモラスですが、轡(くつわ)や馬鈴(ばれい)、鞍鐙(くらあぶみ)など、実際の馬に飾られた装飾をよく忠実に表現しています。また、きれいに刈り込まれた「たてがみ」からも、大切に手入れさていたことがうかがえます。
続いては馬を煌びやかに飾った馬具をご紹介します。
鶴亀蒔絵鞍鐙 (つるかめまきえくらあぶみ) 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
平安時代以降、荒々しい気性を持つ丈夫な名馬を得ることが武士の誉れとなり、馬の価値はますます高まっていきました。戦場を駆ける武士にとっては馬を飾る鞍や鐙は重要なアイテムであり、趣向を凝らしたものが多く作られました。特に江戸時代に入って戦乱の世が終わると、馬具も装飾性が高まります。本例はお正月にふさわしく、長寿を祈念した鶴亀が高蒔絵で絢爛豪華に表現されています。
さて、馬は戦場だけではなく、神事の場面でも神への供物として重んじられました。神社に絵馬を奉納するのもこの名残です。ここでは馬の秘伝の書「馬医草紙(ばいぞうし)」をご紹介します。
重要文化財 馬医草紙 鎌倉時代・文永4年(1267) 東京国立博物館蔵
馬医とはその名の通り「馬のお医者」で、古の和漢の名医や名馬、馬用の薬に用いる薬草などをまとめた絵巻です。馬のたくましい姿や人物、植物が丁寧な筆致で描かれています。
このほか、神事にまつわる馬を描いた「神馬図額」や競馬(きそいうま)で用いられた「競馬太刀」、「競馬装束」など馬のみどころ満載の特集です。
お正月を寿ぐ本展にぜひお越しください。
特集 博物館に初もうで 午―神と人をつなぐ祈りのかたち―
2026年1月1日(木・祝)~1月25日(日) 本館 特別1室
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東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
- ホームページ
- お問合せ先
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口下車 徒歩10分
東京メトロ 銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車 徒歩15分
京成電鉄 京成上野駅下車 徒歩15分 - 開館日・時間
- 9時30分~17時。
毎週金・土曜日および2025年1月11日(日)は20時まで。
1月1日(木・祝)は13時~17時。(入館は閉館の30分前まで) - 休館日
- 月曜日、2025年12月22日~12月31日(水)、1月13日(火)
※1月12日(月・祝)は開館 - 観覧料
- 一般1,000円、大学生500円
※高校生以下および満18歳未満、満70歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、健康保険証、運転免許証など)をご提示ください。 ※障害者とその介護者1名は無料。入館の際に障害者手帳等をご提示ください。
