2026年1月28日
個性強め?平戸藩主親子の情熱「モノ語り」
九州国立博物館 学芸部文化財課資料登録室 主任研究員 松浦晃佑
古今東西、モノには物語がつきものです。読者の皆様、大切にしているモノはありますか?大切にしている理由は何ですか?大事な思い出が詰まっているからでしょうか、大切な人からの贈り物だからでしょうか。そこまで大げさでなくとも、それが好きだからというのももちろん立派な理由です。
現在の長崎県北部を治めた平戸藩の9代藩主・松浦清(号は静山、1760~1841)と、息子で10代藩主・松浦熈のモノをめぐる物語は、江戸時代におけるモノにまつわる興味深い物語の一つです。特別展「平戸モノ語り―松浦静山と熈の情熱―」(2026年1月20日~3月15日)は、この親子が集め、守り伝えたモノを通じて、二人の情熱の物語を描き出します。
静山は歴史考証が盛んになった18世紀後半から19世紀半ばに生きた平戸藩主です。松平定信(1758~1829)など文化人とのネットワークを通じて、多種多様な資料を収集、模写しました。しかし、この活動は単なる古物趣味に基づいた収集ではありませんでした。豊富な資料から正確な歴史を読み取って、些細なことでも記録して歴史を後世に伝えるという情熱に裏付けられたものでした。
江戸時代を代表する『甲子夜話』は、静山が様々な関心を持って、政治から市井の噂話に至るまで事細かに記録した全278巻にもなる随筆です。隠居後の暇つぶしで書いたわけではありません。見聞きしたことや自らの経験を後世に伝えるためのものでした。静山が願ったとおり、そのおかげで私たちは、江戸時代の文化や人々の暮らしを知ることができるのです。
三勇像 内藤業昌筆・佐藤一斎賛、画:天保10年(1839)、賛:天保11年(1840)
長崎・松浦史料博物館
対する熈は江戸時代後期から幕末、社会不安が高まった、いわゆる「内憂外患」の時期に生きた藩主でした。そのような時代にあって、熈は松浦家と平戸を守ることを使命とし、先祖や地域ゆかりの資料を収集、修理して、後世に残すことに情熱を注ぎました。そのおかげで、先祖ゆかりの文化財は失われることなく、平戸に今もなお伝わっています。
熈は自らの想いがいつまでも松浦家と平戸を守ってくれると信じ、自身にゆかりのあるモノに想いを込め、それもまた末永く残そうと考えていました。熈も父と同様、『亀岡随筆』という随筆を残しています。この随筆には、「国」(平戸)と「家」(松浦家)を守りたいという思いを込めたと熈は書いています。いわば、未来に向けた熈のメッセージでした。父と子の性格はまるっきり違いましたが、後世に記録を残し、自らの想いを伝えるという情熱は全く同じでした。
松浦熈像(狩衣寿像) 井手利恭筆・松浦熈賛、江戸時代・天保4年(1833)、長崎・松浦史料博物館
静山と熈の情熱が結実したものといえるのが『家世修古図』です。松浦家と平戸の宝物が丁寧に記録されています。静山が編集を開始し、熈の頃に完成したと考えられます。貴重な資料である『家世修古図』をこのたび初めて全10冊公開します。
家宝を細部に至るまで丁寧に描き、伝来や大きさ、部材などを詳細に記しています。レベルの高い描写に注目されますが、損傷部分も含めてありのままの姿を記録する点も重要です。真実を後世に伝えることにこだわっていたことがうかがえます。
今回、『家世修古図』に掲載される家宝もあわせて公開します。『家世修古図』と家宝を見比べながら、静山と熈の情熱に想いを馳せていただきたいと考えています。
さて、二人の情熱もさることながら、笑いあり、ハートフルあり、人間くさいエピソードも満載です。展示室で共感を覚える新感覚の展覧会です。二人の「濃いキャラ」にもぜひご注目ください。
家世修古図 江戸時代・18~19世紀、個人蔵
松浦史料博物館開館70周年記念・九州国立博物館開館20周年記念特別展
「平戸モノ語り―松浦静山と熈の情熱―」
令和8年1月20日(火)~3月15日(日) 九州国立博物館 3階 特別展示室
https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s75.html![]()
特別展観覧料:一般2,000円(1,800円)、大学生1,200円(1000円)、高校生以下・18歳未満無料
※()は前売り料金
※上記料金で九州国立博物館4階「文化交流展(平常展)」もご観覧いただけます。
※障がい者手帳等をご持参の方とその介護者1名は無料です。展示室入口にて障害者手帳等をご提示ください。
※大学生の方は展示室入口にて学生証をご提示ください。
※高校生以下および18歳未満の方は展示室入口にて年齢のわかるもの(生徒手帳・健康保険証・運転免許証等)をご提示ください。
※会場の混雑状況によっては、ご入場までお待ちいただくことがございます。
※会期中のチケット購入には当日料金が適用されます。
※キャンパスメンバーズの方は割引料金でご購入いただけます。券売所にて学生証、教職員証等をご提示ください。
※ほか詳細は九博公式サイトにてご確認ください。
九州国立博物館
- 住所
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【九州自動車道】太宰府ICから約15分・筑紫野ICから約20分
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- 午前9時30分~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
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※状況により開館時間を変更することがありますので、最新の開館時間は九博公式サイトでご確認ください。 - 休館日
- 月曜日(月曜日が祝日・休日の場合は開館、翌日休館)、年末
