2026年9月29日
どう読む?『源氏物語』
京都国立博物館 学芸部 企画室 主任研究員 井並 林太郎
平安時代に紫式部によって著された長編小説『源氏物語』が、日本を代表する文学であることに異論を唱える人は少ないでしょう。
貴公子・光源氏がさまざまな女性と恋愛をしながら、雅な宮廷において栄華を極めるが、晩年にその運命は暗転し、無常を感じさせるものとなる……。また、光源氏亡き後、若い世代の男女がまた恋に煩い、追い詰められて死を選ぶ……。こうした華やかでありながら陰鬱な展開も含んだ物語は、繊細な美意識や心理描写によって、人生のさまざまなテーマを深くとらえる普遍的な魅力を放っています。
この秋から冬にかけて、京都国立博物館と東京国立博物館では『源氏物語』をテーマにした特別展を開催いたします。
京都国立博物館では1975年の「源氏物語の美術」展以来半世紀ぶり、東京国立博物館では何と初めてとなります。『源氏物語』にかかわる美術や文化について、数々の名品を通じてご紹介する内容です。
紫式部像 土佐光起筆 江戸時代 17世紀 滋賀・石山寺
【10月6日~11月1日展示】
さて、『源氏物語』が普遍的な文学といっても、成立してから約千年、皆が皆同じように読んできたわけではありません。男性と女性では当然関心をもつところは違いますし、為政者と庶民でも物語に描写された王朝文化への心理的な距離感は大きく隔たりがあったはずです。
つまり、それぞれの時代に『源氏物語』に関わって制作された作品には、どの層の人々が、『源氏物語』をどのように受け止めていたのか、という享受のあり方が反映されているわけです。
たとえば近世には、社会の上層の人々(為政者や知識人)は儒教的・武家的価値観がベースにあるので、少なくとも表立っては光源氏の好色や不義を取り上げることは少なかったようです。近世の源氏絵屛風や工芸意匠は、選ばれる場面や表されるモチーフの固定化が進むといわれていて、「初音」や「胡蝶」、「若菜上」などの華やかでおめでたい場面ばかりが選択され、婚礼をはじめとする社会的な儀式において用いられました。
重要文化財 源氏物語画帖 胡蝶 土佐光吉・長次郎筆 安土桃山~江戸時代
17世紀 京都国立博物館【この場面は11月3日~29日展示】
一方で、同じ時代でも庶民が愛した浮世絵では、光源氏の好色が面白がられ、『源氏物語』に登場する女性が江戸時代の女性として生まれ変わり、艶っぽく表されたりもします。
『源氏物語』がどのように読まれてきたかを知ることは、今の我々の『源氏物語』の読み方が決して当たり前のものではない、ということに気づかされるきっかけにもなるでしょう。
本展を通じて、『源氏物語』を知らない人はもちろん、知っているつもりの人も、改めて古典というものが親しまれてきた歴史に触れていただければ幸いです。
源氏物語 王朝のかがやき
2026(令和8)年10月6日(火)~11月29日(日)
https://www.kyohaku.go.jp/jp/exhibitions/special/2026_genji/![]()
京都国立博物館
〒605-0931
京都市東山区茶屋町527
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- JR京都駅下車、京都駅前D2のりばから市バス各系統にて博物館三十三間堂前下車、徒歩すぐ
- 開館日・時間
- 火曜日~日曜日 9:00~17:30、金曜日のみ9:00~20:00 (入館は各閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日、2026年10月13日(火)、11月24日(火)。
※ただし、2026年10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)は開館。 - 観覧料
- 一般¥2200(2000) 大学生¥1200(1000) 高校生¥700(500)
※( )内は20名以上の団体料金。
※大学生・高校生の方は学生証をご提示ください。
※中学生以下、障害者手帳等(*)をご提示の方とその介護者1名は、観覧料が無料になります。
*身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)受給者証、小児慢性特定疾病医療受給者証
※キャンパスメンバーズ(教職員を含む)は、学生証または教職員証をご提示いただくと、各種当日料金より500円引き(一般1,700円、大学生700円、高校生200円)となります(当日南門チケット売場のみの販売、ほかの割引との併用はできません)。
