2014年10月10日
この連載では,日本各地の地域の日本語教室で日本語を学び,地域で活躍する外国人の視点から地域の魅力,日本語や日本文化の魅力,日本語の学習などについて語ってもらいます。様々な背景を持つ外国人の方々がどのような思いで日本語を学び,日本の社会で暮らしているか,是非知ってください。
<福岡県福岡市>
福岡マスジド ボランティア
日本語教室 コーディネーター
森瀬 ハニ・ウタミさん
1.はじめまして
2002年5月にインドネシアのジャワ島から日本に来ました。福岡にある日本語学校,愛和外語学院のスタッフとして海外からの留学生募集を担当している主人,森瀬拓海さんと結婚するためです。
私は現在,主人とともに愛和外語学院で留学生募集の仕事をしながら,福岡マスジドの日本語教室コーディネーター・教育部長として働いています。「マスジド」というのは,アラビア語で礼拝堂の意味で,日本では一般にモスクと呼ばれています。
2.福岡市に暮らすムスリム
福岡市には,現在約1, 500人のムスリム(イスラム教を信じる人)が住んでいます。福岡市東区箱崎にあるマスジドは,福岡市で暮らす世界各国のムスリムが集まります。マスジドは地域に開かれた場所で,地域の皆さんの交流の場にもなっています。
福岡マスジドの礼拝風景。
1階は男性,2階は女性の礼拝場になっています。
ムスリムは,戒律によって,肉やアルコールが入っている食材を口にできません。そのため,調味料やお菓子など,何が入っているか分からないと食べられないのです。天ぷらが食べたくても,天つゆにはアルコールが入っている場合がありますし,薬のカプセルに動物性のタンパク質が使われていることもあります。知らない,読めない,分からないことばかりでは,生活は不安で一杯です。
福岡市には,世界各国からの留学生,特に九州大学への留学生が家族を伴って来日 しています。留学生は大学で日本語を勉強できますが,その配偶者や家族の人たちは,日本で生活していくために必要な,実践的な日本語教育が受けられる場所を探していました。
3.文化庁委託事業「生活者としての外国人」のための日本語教育事業
ムスリム特有の問題をテーマにした日本語講座で楽しく学ぶ受講者
そのようなムスリムの声を受けて,愛和外語学院は,平成23年度と平成24年度に「ムスリムのためのサバイバル日本語講座」を開講しました。福岡で暮らすムスリムが日本で生活する時に困る場面を解決するための日本語教育プログラムが組まれ,私は,この講座の日本語教室コーディネーターとして,受講生の募集や,講座期間中の相談の窓口を担当しました。
日本語講座の授業風景。
スーパーで食品表示を確かめながら買い物する。
講座の場所は,始めは学院内の教室でしたが,今年度からは私たちが集まりやすいように,また,支援者の方にもムスリムをもっと知ってもらえるように,マスジドになっています。
4.日本語教室コーディネーターになって
私自身が,全く日本語がしゃべれない中で,日本で生活しながら日本語を学習した経験を持っているので,来日したばかりの留学生やその家族の大変さは,よく分かりました。また,日本で暮らすムスリムが抱える悩みや苦労についても理解することができます。
日本語教室のコーディネーターとして活動する中で,そのような経験を学習者と支援者の両方に伝え,ムスリムのコミュニティーと日本の文化・習慣の違いを理解した上で,互いに誤解が生まれないように橋渡しをすることができたと思います。
受講生と講師の妹川先生。
作成した地域の方への講座の修了パーティーの招待状を手に。
ムスリムの受講者は,次のような感想を残してくれました。
- ・「日本人の友達ができて,うまく交流することができるようになった」
- ・「まだうまく日本語が話せないけど,交流していこうという自信がついた」
- ・「日常生活に密着した実践的な講座で,とても生活の役に立った」
このような声を聞いて,私もとても光栄で,うれしかったです。
5.福岡マスジド ボランティア日本語教室
平成23年度と平成24年度に「ムスリムためのサバイバル日本語講座」が行われた後,ムスリムコミュニティーの中心である福岡マスジドで「ムスリムのためのボランティア日本語教室」が始まりました。ムスリムのことをもっと理解しようとする講師の方々に助けられながら,みんなで頑張っています。
これからも,ムスリムと日本人の,言葉と文化の橋渡しを続けていこうと思っています。みなさんも福岡マスジドに遊びに来てください。
<株式会社 愛和学園・愛和外語学院>
○所在地:福岡市東区馬出1-15-37
○本活動に関する連絡先:fukae@aiwa.ne.jp(深江)
○平成22~24年度文化庁「生活者としての外国人」のための日本語教育事業
委託実施団体
地域の人を招いた国際交流イベント「ワールドフレンドシップ」の1コマ
白いヒジャーブ(ムスリム女性が着用するヴェール)を
かぶっているのがハニさん,隣は御主人