2016年1月15日
この連載では,日本各地の地域の日本語教室で日本語を学び,地域で活躍する外国人の視点から地域の魅力,日本語や日本文化の魅力,日本語の学習などについて語ってもらいます。様々な背景を持つ外国人の方々がどのような思いで日本語を学び,日本の社会で暮らしているか,是非知ってください。

<富山県>
日本語教室 in 黒部
日本語支援ボランティア
吉澤 ジンタナ さん (タイ出身)
1.はじめまして!
はじめまして。富山県黒部市在住の吉澤ジンタナです。
私は,タイ国チェンマイ市にあるパ-ヤップ大学を卒業後,看護師として日本企業で働いていました。夫とはその会社で知り合いました。1992年に結婚し,タイで生活していたのですが,夫の転勤が急に決まり,結婚式の約2週間後に来日することになりました。それは,私にとって突然のことでした。
来日後,日本で生活するからには日本語が必要だろうと考えましたが,夫の転勤が何度かあったり,妊娠・出産・子育てなどで忙しい日々が続き,なかなか学校へ行くこともできず日本語学習は独学でした。そのため,母語のタイ語やこれまで学んだことのある英語とは全く異なる文法,表記を覚えることに苦労しました。特に漢字を覚えることは大変でした。少しずつ覚えては,生活の中で使ってみるという生活が続きました。
2.「日本語教室in黒部」との出会い,その魅力
各地の転勤を経て,2003年,夫の実家がある富山県黒部市に転勤になってから,やっと本格的に日本語を学ぶ時間ができました。そんな中,黒部に地域日本語教室ができたと聞き,参加してみました。それが「日本語教室in黒部」との出会いです。
この教室は,私がこれまで学んだ学校型の勉強方法とは違い,対話中心の活動を通して日本語のみならず,様々なことを学ぶことができる新しい場所でした。

日本語教室in黒部での活動の様子
一番新しいと思ったことは,身近なテーマをトピックにした対話活動を通して,母国の歴史,文化,生活習慣とは異なることから生まれる価値観の違いや,人生観の相違に至るまで,広い視野で日本や日本人を感じられたことでした。
そして,生きた日本語を獲得できる場でもありました。教科書の中での日本語は,私の今の環境とは違う部分もあり,どこか他人事のような部分もありました。しかし,「日本語教室in黒部」は,自分たちにとって本当に必要なトピックを基に,日本語支援ボランティアと対話を重ね,自分の言葉(語彙,表現)を広げることができます。
また,性別,話し方,表現の仕方,性格など様々なタイプの人と対話ができる「日本語教室in黒部」は,私にとって,本当に生きた日本語に触れることができ,地域の人々と一緒に生きているんだと実感ができる場なのです。

災害をテーマにした活動で防災マップを作成中のジンタナさん
(手前テーブル左)
3.誰もが住みやすい地域づくりを目指して
これまで,子供の学校のPTA,町内会,夫の実家の家業(農業)をこなし,夫の会社の行事など,様々な地域活動に参加してきました。2012年には,介護福祉士の資格をとり,最近では,翻訳や通訳の仕事にも挑戦しています。特に,「子どもラーニングサポート北陸」が作成した小学校国語教科書翻訳教材『どっちから勉強する?日本語?母語?』(光村図書 小学校「国語」教科書4年生準拠)に関わったことで,日本で生活する外国につながる子供の教育について考えることができました。
今,私は「日本語教室 in黒部」で日本語支援ボランティアとして活動するなど,地域の方々と関わることが増えてきています。

外国籍等の子供たち向け翻訳教材の作成に協力するジンタナさん
(左から2人目)

『どっちから勉強する?日本語?母語?』
来日したばかりのころ,「言葉の壁」「文化の壁」「心の壁」など,色々な壁は本当に高かったです。しかし,今はこれらの壁を強く感じなくなってきました。それは,私一人の努力だけでは叶わなかったと思います。私の周りには,私の国の文化や慣習などを理解しようとしてくれた人がいました。私が分かるように「やさしい日本語」で話してくれる人がいました。偏見を持たずに私個人を見てくれる人がいました。私には一緒に頑張ろうとしてくれた人がいたのです。そのことが私の壁を低くし,そして地域活動に参加できる力にもなったのだと思います。これから来る外国人のためにも,私に力をくれたような人たちが地域にたくさん現れることを願います。
これからも,外国人も日本人もお互いに住みやすい地域となるように,私は,常に外国人だからこそ理解できる外国人の心の中を考えながら,分かり合える日本語で提案していきたいと考えています。
「日本語教室in黒部」
★ 「日本語教室in黒部」は,市民ボランティア,日本語教育機関(トヤマ・ヤポニカ),公益財団法人とやま国際センターの三者の連携で2008年に立ち上げたボランティア教室です。現在まで,公益財団法人とやま国際センターの日本語事業によるアドバイザーの派遣事業を受けながら活動を継続しています。
- 日時
- 土曜日又は日曜日のAM10:00-AM11:30に開催
- 場所
- 日曜日:黒部市国際文化センター コラーレ (創作室)
土曜日:黒部市三日市公民館 - クラス
- 入門クラス(日本語ができない方)
活動クラス(日常生活に役立つ日本語能力を高めましょう!) - 案内
- 平成27年度の御案内はこちら
から

子どもラーニングサポート北陸
★ 外国人が広い範囲に散在している地域で外国籍等の子供たちにとってどのような支援ができるのかを解決するべく活動してきました。その一つが,地域の様々なメンバーの力を借りつつ進めた翻訳教材作成プロジェクトです。