2016年4月4日
この連載では,日本各地の地域の日本語教室で日本語を学び,地域で活躍する外国人の視点から地域の魅力,日本語や日本文化の魅力,日本語の学習などについて語ってもらいます。様々な背景を持つ外国人の方々がどのような思いで日本語を学び,日本の社会で暮らしているか,是非知ってください。
<岡山県総社市>
ルパック・ジョシさん(ネパール出身)
トラベル・ルート旅行会社経営・MBB英会話講師
1.はじめまして
はじめまして。ルパック・ジョシです。ネパールから来ました。首都カトマンズの出身です。ネパールで,トラベル・ルートという旅行会社を経営しています。
総社に初めて来たのは3年前のことです。総社市にある岡山県立大学大学院に妻が留学していて,私は旅行で総社を訪れました。妻は勉強が忙しく,いつも一緒にいて通訳してくれるわけではないので,日本語が全く分からない私は,ビザがある3か月の間,総社市の日本語教室で日本語を勉強しようと思いました。
総社市の日本語教室は週に1度なので,ほかの曜日は倉敷市の日本語教室に通っていました。しばらくして,倉敷市の知り合いから「英語を教えてみないか?」と誘われたので,いったんネパールへ帰国し,再び総社市に戻ってきました。現在は旅行会社を経営しながら,倉敷市で英会話を教えています。
2.総社の自然はとてもきれい!商店街の古い町並みが好き
総社はとても自然がきれいです。それに備中国分寺五重塔や宝福寺,総社の近くにある吉備津神社もすごくきれいで,気に入っています。写真が趣味なので,休みの日にはあちこち写真を撮りに行きます。
私は今,総社市役所近くの総社商店街通りの近くに住んでいますが,ここは古い日本の町並みが残る素敵な場所です。いつも静かで落ち着きます。今住んでいる家は古いアパートですが,古い家が好きな私は,この家もとても気に入っています。
総社には日本の伝統的な文化や雰囲気があります。人も親切でとても暮らしやすいです。日本人の友達もたくさんいるので,これからも総社に住みたいと思っています。
ひまわり畑から眺める備中国分寺五重塔
総社市に残る明治洋風建築
「まちかど郷土館」
古い町並みが残る総社商店街通り
3.「地域でつながる日本語教室」で学ぶ 生活に役立つ日本語
初めて総社市の日本語教室に来た時には,日本語は全く分かりませんでした。最初は,間違った日本語を話すのが怖くて,とてもプレッシャーを感じていました。でも,総社の日本語教室で勉強を始めてから考えが変わりました。
日本語教室では,日本語の先生が教えてくれますが,それだけでなく,日本語学習サポーターという総社市の日本人がボランティアとして参加しています。総社でよく顔を合わせる日本人が教室にいるので,日本語を話すことが怖くなくなりました。「外国人なんだから日本語を間違っても大丈夫だ」と思えるようになると,自然に日本語を話せるようになり,自分の言いたいことを言えるようになりました。
前は分からないことがあっても分かったふりをしていましたが,今はちゃんと「分からない」と言えます。「分からない」と言えばちゃんと説明してくれます。日本語が分かるようになると,友達も増え,日本語で日本人と話す機会も増え,とても楽しくなりました。
総社市の日本語教室の良いところは,「生活に役立つ日本語」を教えてくれるところです。日本人と会話をすることで,自然な日本語が身に付きます。また,病院見学や消防署に行って消火訓練をしたり,日本で生活をする上で大切なことを教えてくれます。
日本語教室での会話練習
総社市消防署で消火訓練をしました
七夕の短冊に願いごとを書きました
総社の夏祭りに向けて盆踊りの練習
4.総社での暮らしと地域の人とのふれあい
今,住んでいるアパートには2年前に引っ越しました。アパートの大家さんとは毎晩のように御飯を一緒に食べ,旅行にもよく一緒に行きます。お父さん(大家のご主人)は私と同じく写真を撮るのが趣味なので,よく一緒に車で遠くへ撮影に行ったりします。お母さん(大家の奥さん)は「日本の母親」みたいです。大家さんの娘さんがマレーシアに住んでいるので,とても外国に興味を持っていて,ネパールのことを教えてほしいとよく言われます。
元々お母さんとは通勤の電車でよく会って話していました。話をする中で,引っ越しをする家を探していると言ったら,自分の持っているアパートを紹介してくれました。見に行ってすぐ気に入ったので,引っ越すことにしました。
大家さんのお父さん,お母さんと毎日話すので,日本語がどんどんうまくなり,日本人の友達もたくさん増えました。総社の町を歩いていたら,いろんな人に声を掛けられます。みんな親切にしてくれます。総社の暮らしはとても好きです。
5.ネパールへの想い
去年の4月にネパールで大地震が起きました。家族は全員無事でしたが,カトマンズにある家は壊れてしまい,世界遺産も破壊されてしまいました。ビザの期限を迎えていたこともあり,すぐにネパールに帰るつもりでしたが,ネパールに帰っても自分は何もできない,むしろ日本にいてネパールの支援をした方が良いのではないかと考え直しました。
妻は大学院を修了し,現在,国際医療支援グループであるAMDAで働いており,ネパールの支援に奔走しています。日本は情報通信や道路交通,社会的システムが整った国です。日本で暮らしながら,ネパールへの支援を自分なりにし,妻の仕事のサポートができればと思っています。
<団体紹介:岡山県総社市「地域でつながる日本語教室」>
- ○ URL:
- http://www.city.soja.okayama.jp/index.html
- ○ 所在地:
- 岡山県総社市中央一丁目1番1号
○ 本活動に関する連絡先:
〒719-1192 総社市市民生活部人権・まちづくり課国際・交流推進係
電話:0866-92-8242
E-mail:jinken-machi@city.soja.okayama.jp
○ 日本語教室の案内:
http://www.city.soja.okayama.jp/jinken-machi/kurashi/tabunkakyousei/japanese/japanese_ed27.html
○ 平成27年度文化庁「生活者としての外国人」のための日本語教育事業:
「総社市地域参加型生活サポート日本語教育事業」