2017年8月1日
文化庁では,文化活動に優れた成果を示し,我が国の文化の振興に貢献された方々,又は,日本文化の海外発信,国際文化交流に貢献された方々に対し,その功績をたたえ文化庁長官が表彰しています。平成28年度は5名の方(本賞2名・文化発信部門3名)が表彰されました。そこで,「地域日本語教室からこんにちは!」では,5回にわたって受賞者のこれまでの日本語教育への関わりや思いを紹介します。今回は,「外国人の子ども・サポートの会」の田所希衣子代表に執筆していただきました。
子供たちが育つのを見届ける
―サポーターたちの優しいまなざし―
田所 希衣子(たどころ きいこ)
外国人の子ども・サポートの会 代表
この度は,文化庁長官表彰・文化発信部門の授与を頂きまして,大変光栄に思います。一緒に活動してきた仲間とこの喜びを分かち合い,これまでお力を下さった方々に心から感謝を申し上げます。
私は30年ほど日本語教室でボランティア活動をしてきました。最初の17年間は「ICAS国際都市仙台を支える市民の会」の成人対象の日本語教室で,日本語ボランティア活動と組織運営の両面で育てられ,鍛えられました。この時期,保育付きの教室の運営にも関わり,日本語を学びに来たお母さんたちから子供たちの学校のことで相談を度々受けました。その相談の延長上に「外国人の子ども・サポートの会」があります。
2005年に,仙台市と岩沼市の保育付き日本語教室で活動してきた4人が発起人となってこの会を設立しました。小さいながら「サポート活動」「研修」「リソースライブラリ」「リサーチ・分析」の四つの機能を備えています。現在は,年会費で会を支え総会で運営に関する議決権をもつ「会員」26名,サポート活動で会を支える「サポーター会員」68名,生徒と保護者の「生徒会員」49家族の3タイプの会員で構成しています。
会の二つの学びの場
会の活動の中心は,「サポーターの学びの場」と「子供たちの学びの場」です。
これまでの活動の体験から,リーダーの役割は,メンバーが思うように活動できる場を用意することだと私は考えています。一つ目の「サポーターの学びの場」は定例の勉強会と年3回の研修会です。定例の勉強会は2004年から始まっていて,この会の土台となる部分です。この組織自体がこの勉強会を通して学び続けています。毎月1回,会員でなくても,ここに来れば誰かがいて,共に勉強ができます。私たちは,子供の学びに関する知識,教材,方法,社会保障の仕組みなどの情報を集め,話し合い,考え,それを基に教材を作成したり,研修会を開いたりしてきました。13年目を迎え,この場は会員以外の子供のサポート活動をしている人も含んで,緩やかなネットワークのような形態になっています。他県の教室で活動している方たちと情報交換もできます。
二つ目の「子供たちの学びの場」では,サポーター(社会人:学生が1:7)と小学1年から高校3年までの生徒が勉強をしています。最初のオリエンテーションでサポーター会員には「自分の弟や妹と勉強するような気持ちで,一緒に考えたり,問題を解いたり,調べたりしてください。」とお話しています。これがこの会のサポート活動の基本の考え方です。各ペアは年間を通してそれぞれの決まった時間に1対1で勉強します。ここで勉強した生徒が高校卒業後にサポーター会員として活動しています。
大きな輪の中で
会の中の活動だけでなく,常に心掛けてきたのは,子供たちと家族を取り巻くネットワーク作りです。宮城県国際化協会や市民センターの日本語集中講座,進路について情報交換をする「日本語を母語としない子供と親のための進路ガイダンス」,仙台観光国際協会の「日本語を母語としない小中学生のための夏休み教室」,社会保障関係の情報を提供してくれる特定社会保険労務士の方たち。この大人たちの大きな輪の広がりが,子供たちと社会をつなげています。
最後に,サポーター会員たちの活動の感想を御紹介します。
「会うたびに日本語が上手になるのが楽しみだった。その陰には生徒の努力がある。素晴らしいと思った。」
「外国人ということで不安に思うことはなく,伝え合おうとすれば伝わることはたくさんあると気付かされた。姉のような存在で手伝えたらなと思う。」
「生徒が自分で設定した目標を達成した。そのことで自分一人では味わうことのできない達成感を味わうことができた。それから,その姿を見て,私も負けていられないという気持ちになった。」
優しいまなざしで子供たちを見守っているサポーター会員たちの言葉を読んで,私の中に感動と力が湧きました。これからも少しでも長くこの活動を続けていきたいと思います。
外国人の子ども・サポートの会
- 住所
- 〒981-3109
宮城県仙台市泉区鶴が丘4-9-7 - 問合せ
- 電話 090-2793-8899 メール jets@sda.att.ne.jp
- ホームページ
- http://kodomosupport.jimdo.com/