2014年5月14日
上村松篁 花鳥ひとすじ 楽しくて楽しくてしょうがない
京都国立近代美術館主任研究員・小倉実子
大正,昭和,平成と京都の地で活躍した画家の上村松篁(1902-2001)は,母・上村松園が日本画家であるという家庭環境と,小さいときから絵を描くのが好きだったことから,京都市立美術工芸学校に入学,さらに同絵画専門学校へと進み,自然に画家の道を志しました。しかし,母は絵を描いているところを見せることも,絵の手ほどきをすることも,全くなかったといいます。そのかわりに,骨董屋の持ち込んでくる古い絵や,目録に載っている絵を眺めては「品があって,ええなあ」「品が悪いなあ」と松園が言うのを見聞きすることにより,格調や品の良さをかぎ分ける力を身につけていきました。

上村松篁《燦雨》昭和47年 松伯美術館所蔵
幼い頃,絵を描くのと同じか,それ以上に松篁が好きだったのが,金魚や小鳥を眺めることでした。6歳の時には,鳥カゴから飛び出た文鳥が緑鮮やかな楓の中にいるのを見て,その美しい光景に感動。それが,花鳥の美に魅せられた最初の体験だったと語っています。このような画家が,花や鳥を生涯のモティーフとすることは当然のことであり,そのため,母・松園とは違う道を辿ることになります。が,母が格調高い女性像を一筋に追い求めたように,松篁もまた格調高い鳥の姿を一筋に追い求め,1984年文化勲章を受章。やはり文化勲章受章者である母同様,己の道を究めたのでした。

上村松篁《孔雀》昭和58年
京都国立近代美術館所蔵
その苦しくも「楽しくて楽しくてしょうがない」道筋を,19歳で初めて大きな展覧会に入選した《閑庭迎秋》から「日本の伝統と革新の調和をなしとげた」として芸術選奨文部大臣賞を授与された《星五位》,熱帯の花鳥に取材した《燦雨》,過去の名画に挑み乗り越えた《丹頂》,《孔雀》を経て最晩年に至るまでの代表作約70点で振り返る展覧会が,京都国立近代美術館で開催されます。「上村松篁展」は,花鳥画家としては珍しい人物画の大作《万葉の春》や井上靖の名著『額田女王』に添えた挿絵原画,制作の秘密を垣間見るこの出来る素描も紹介するもので,松篁芸術の全貌を知っていただけるまたとない機会です。美しく咲き誇る花や青々と茂る草木の中,色とりどりの鳥たちが楽しく飛び,さえずる会場で,初夏のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

上村松篁《万葉の春》昭和45年
近畿日本鉄道株式会社所蔵(松伯美術館管理)
京都国立近代美術館
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- 午前9:30~午後5:00
上村松篁展会期中の金曜日は午後8時まで開館(入館はいずれも閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日
- 上村松篁展
- 会 期 5月27日(火)~7月6日(日)
当 日 一般1,300円, 大学生900円, 高校生500円
前売り(販売期間:4月14日~5月26日) 一般1,100円, 大学生700円, 高校生300円 - 観覧料
- 団 体(20名以上) 一般1,100円, 大学生700円, 高校生300円
※本料金でコレクション展も御覧いただけます。
※中学生以下,心身に障害のある方と付添者1名は無料。(要証明) - ホームページ
- 上村松篁展ホームページ
http://s-uemura.exhn.jp/
京都国立近代美術館ホームページ
http://www.momak.go.jp/