2014年10月2日
青磁のいま-受け継がれた技と美 南宋から現代まで
東京国立近代美術館工芸課長 唐澤昌宏
“青磁”は,玉への憧れから中国で生まれた,青色や緑色を基調とした美しい色合いを特徴とするやきものです。しかし実際の色合いは,生み出された時代や地域により,淡い青色やオリーブ・グリーン,さらには淡い黄色などさまざまで,一言で語ることのできないほどの広がりを見せています。日本には12世紀頃から伝来し,茶の湯の発達のなかで日本人の美意識によって選び出され,唐物の最高峰として尊ばれて大切にされてきました。「青磁のいま」展では,時代を超えて多くの人々を魅了してやまない“青磁”に焦点を絞り,歴史的な名品から現代作家の最新作までを3部構成で紹介し,その魅力に迫ります。
(写真1)第1部
《米色青磁下蕪形瓶》官窯,
中国・南宋時代,12-13世紀
“青磁”は,「青磁」とも,あるいは「青瓷」とも表記されます。古い時代の青磁は「青磁」と表記されることが通例ですが,現代の陶芸家がつくった作品では,磁土を用いた場合を「青磁」,陶土を用いた場合を「青瓷」と,区別することもあります。釉薬の中に含まれる微量の鉄分が,その美しい色合いをつくり出しますが,焼成方法によって,色合いはさまざまに変化します。中には,黄色味を帯びた「米色」(写真1)とも,窯の中で変化をするという意味で「窯変」とも呼ばれる青磁もあります。
(写真2)第1部
《青磁鳳凰耳瓶》龍泉窯,
中国・南宋時代,13世紀
大阪市立東洋陶磁美術館蔵
(写真3)第1部
《青磁玉壺春形瓶》龍泉窯,
中国・元時代,14世紀
個人蔵
第1部:日本に伝わった青磁
中国・南宋時代から明時代初期につくられた青磁の名品23点を紹介します。日本人は,南宋時代につくられた淡い青色(粉青色)をした青磁を「砧青磁」(写真2),元時代につくられた深い緑色をした青磁を「天龍寺青磁」(写真3)と呼び,とくに大切にしてきました。それらの色合いや独特の形は,近代や現代の陶芸家にも強い影響を与え,制作の手本ともなりました。
(写真4)第2部
板谷波山《青磁蓮花口耳付花瓶》1944年
出光美術館蔵
(写真5)第2部
岡部嶺男《窯変米色瓷博山炉》1971年
個人蔵
第2部:近代の陶芸家と青磁-写しと創作-
明治・大正・昭和の時代に活躍した11名の陶芸家の優品48点を紹介します。中国で生み出された青磁の美しさに魅了された陶芸家は,その魅力に少しでも近づこうと努力を重ね,ついには陶芸史に名を残すまでになりました。第2部では,古典の写しから創作へと発展した作品の流れも感じとっていただきます(写真4,5)。
(写真6)第3部
髙垣 篤《茜青瓷-屹立》2005年
東京国立近代美術館蔵
第3部:現代の青磁-表現と可能性-
“青磁”の重要無形文化財保持者,いわゆる人間国宝として多くの陶芸家を牽引する中島宏氏をはじめ,会派や作品の傾向に関係なく選び出された10名の現役の陶芸家による個性豊かな作品48点を紹介します。現代における表現の幅の広さと奥深さ,そして新しさをご覧いただき,“青磁”というやきものに込められた陶芸家の想いを感じていただければと思います(写真6,7)。
(写真7)第3部
神農 巌《堆磁線文壺》2012年
個人蔵
東京国立近代美術館工芸館
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