2014年12月3日
フィルム映写を支える技術スタッフたち
東京国立近代美術館フィルムセンター研究員 大傍正規
東京国立近代美術館フィルムセンターで開催される企画上映では,デジタル映写が全盛を迎えた現在においても,原則として,フィルム映写を行っています。当館は,映画フィルムの収集,保存機関として,映画フィルムを低温低湿に保たれた収蔵庫で安全に保護するとともに,フィルムで撮影された映画が劇場公開された際に観客が体験したことを,できるだけ現在の観客にも追体験して頂く機会を提供するため,フィルム映写を続けてきました。ところが,大手フィルム映写機メーカーによるデジタル映写機への生産シフトや,フィルム映写機専用のレンズやランプの生産停止が相次いでおり,これまで当たり前のように身近にあったフィルム映写環境も,一つの映画遺産として守り伝えていくことが必要になってきました。

フィルム映写機Kinoton
フィルム映写関連機器等のインフラを整備し,維持していくことはもちろん,現像所で培われた熟練の技術者たちの知識と経験を若い世代に引き継ぎ,フィルム映写を支える人材を育てていくことが急務となっています。当館では,神奈川県相模原市の米軍キャンプ淵野辺跡地に位置する相模原分館において,収集した映画フィルムの検査登録や上映用フィルムの事前検査等を通じて,現像所経験の長い技術スタッフと若い技術スタッフとが,打ち解けた雰囲気の中で一緒に仕事をする機会を設けています。広大な敷地の中にある映画保存棟Ⅱの一室で,35mmや16mmといった様々な形状の映画フィルムが作成された年代を特定するノウハウから,劣化や損傷が見られるフィルムをクリーニングし,補修する方法まで,映画フィルムを適切に取り扱う様々な技術が継承されています。

映画保存棟Ⅱ

フィルム検査室内の技術スタッフたち
当館の企画上映にお越しの際は,相模原分館の技術スタッフが手をかけて送り出した映画フィルムが,大ホールの映写機にかけられるまでにたどった長い道のりについて,思いをはせていただければ幸いです。
東京国立近代美術館フィルムセンター
〒104-0031 東京都中央区京橋3-7-6
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- 毎週月曜日,2014年12月28日(日)-2015年1月5日(月)
- ホームページ
- http://www.momat.go.jp/