2015年8月3日
所蔵作品展 こども+おとな工芸館
ピカ☆ボコ
~オノマトペで読みとく工芸の魅力~
東京国立近代美術館主任研究員 今井陽子
ツヤツヤ,ピカピカ,ボコボコ,ザラザラ…。工芸作品を眺めているときに,こんな言葉が口からこぼれたことはありませんか?日本語にはオノマトペ,つまり擬態語や擬声語と分類される言葉が豊富にあります。今回の展覧会は,このオノマトペを通して工芸の質感に迫ります。

野口光彦 《腕白時代 公達雨に躍る》 1964年
東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓
色やかたち,歴史や地域性など,工芸をみるポイントはさまざまですが,目にも手ざわりにも好ましい質感の追求は,工芸に期待するイメージの重要な部分を占めています。寒さや暑さをしのいだり,硬くてしっかりしているのか,もっとしなやかなのか,環境の変化から人それぞれの好みまで適応させるのが質感という造形要素です。しかしその情報量の多さゆえに,質感を数値化するのは困難です。たとえ計測を試みたとしても,それを手に取った人の心理や状況によって評価は全く違ってしまうものだからです。

高橋禎彦 《つぶつぶの瓶》 2010年
東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓
そこで着目したいのがオノマトペです。一見子供っぽかったり,軽々しいような印象をもたれることのあるオノマトペですが,言葉の響きやリズム,またしばしば語源においても,工芸のエッセンスを直感的につかみとっていることが少なくありません。極めて個人的な感覚が含まれるのも確かですが,だからこそ情報量の多い質感を多角的に捉えることが可能なのです。

川口淳 《箱》 1991年
東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓
今回,工芸館の会場6室にそろえた質感は「ピカピカ」「スケスケ」「ツヤツヤ」「ボコボコ・ゴツゴツ」「サラサラ・ザラザラ」「ダラリ・ジワリ・スベスベ」――前半は視覚にまつわるもの,とくに作品と光との関係を,また後半では視覚的要素にとどまらず,皮膚感覚に訴えかけるような作品に焦点をあてました。スベスベでツヤツヤ,ピカピカでボコボコなものを探してみたり,皆さん自身でもっとぴったりなオノマトペを考えてみるのも,鑑賞を深めるよいきっかけとなります。

内藤四郎 《蝶とシャボン玉銀香炉》 1984年
東京国立近代美術館蔵 撮影:斎城卓
美術と言語活動との連携は,今注目されている鑑賞のスタイルです。リズミカルな言葉をつぶやきながら,工芸ならではの魅力的な質感を読み取るセンサーを働かせましょう。子供には楽しみながら工芸にふれるスタンプラリー付きセルフガイドとワークシートを,大人には詳細情報を記載したセルフガイドを御用意しました。これらのツールを用いて,家族やお友達と情報交換するのもお勧めです。
東京国立近代美術館工芸館
〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口徒歩8分
東京メトロ東西線・半蔵門線/都営新宿線「九段下駅」2番出口徒歩12分 - 開館時間
- 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(7月20日,9月21日は開館),7月21日(火),9月24日(木)
- 観覧料
- 一般¥210(100),大学生¥70(40),高校生以下及び18歳未満,65歳以上,障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※8/2(日),9/6(日)は無料観覧日。 - ホームページ
-
http://www.momat.go.jp