2015年11月2日
琳派イメージ:近代から現代にかけての作家たちが生み出した「琳派」の広がり
京都国立近代美術館 主任研究員 小倉実子
今秋,京都の町中には琳派の文字が躍っていますが,そもそも琳派とは何なのか?と思う人も多いことでしょう。そちらの解説については,続々と出版されている書籍や雑誌に譲るとしまして,作品から近現代の琳派,ひいては,琳派とは何か?を感じてもらおうというのが,この「琳派イメージ」展です。
第1章「琳派モティーフ」では例えば,今展でただ一人,近代琳派の画家として認識されている神坂雪佳が,さりげなく俵屋宗達の《平家納経 願文(見返し)》(厳島神社)を反転させた鹿を描き込んでいる《寿老図》や,尾形光琳の《燕子花図屏風》(根津美術館)へのオマージュ作品である,金地に描かれた《杜若図屏風》など,琳派の作家がこれまでに繰り返し取り上げてきたモティーフごとに,近現代の美術を紹介しています。

神坂雪佳《杜若図屏風》,大正末~昭和初

神坂雪佳《寿老図》,昭和13(1938)年,京都国立近代美術館蔵
第2章「金銀・装飾」では,金銀など金属箔を多用したり,日本の自然を装飾的に表現したりした作品,例えば福田平八郎《花の習作》などを紹介しています。琳派は絵画だけと思っている人もいるかもしれませんが,その祖と目される本阿弥光悦は画家ではなく,現在のアートディレクターのような存在で,総合芸術的な性格を持っていました。したがって,浅井忠図案/杉林古香作《文庫(鶏梅蒔絵文庫)》のように,作家同士が協働して作り上げた工芸作品や,雪佳が原画を描き,芸艸堂の彫り師や摺り師たちが腕をふるった《百々世草》のような版画作品も当然,そこに含まれてきます。

福田平八郎《花の習作》,昭和36(1961)年,京都国立近代美術館蔵

浅井忠図案/杉林古香作《文庫(鶏梅蒔絵文庫)》,
明治39(1906)年,京都国立近代美術館蔵
第1章,第2章,と見ていくうちに,おぼろげながらも「琳派イメージ」を感じていただけることと思いますが,そのイメージを胸に抱きながら最後の第3章「広がる琳派イメージ」を御覧ください。田淵安一の《宇宙庭園No.4(Jardin suspendu No.4)》は普段なら,当館コレクション展で現代洋画のコーナーに展示されている作品ですが,親和性を感じますか?それとも違和感を抱きますか?それは,皆さんの「琳派イメージ」次第で,どちらも間違った感覚ではありません。このように,琳派は,鑑賞者や作家の解釈次第で,どんどん広がる,融通無碍な存在なのではないでしょうか。そして,だからこそ,次代の作家たちにとっても,自由で新鮮で魅力的で,他の多くの流派と違い,現代にも生き続け,さらに広がり続けているのです。

田淵安一《宇宙庭園No.4(Jardin suspendu No.4)》,
平成10(1998)年,京都国立近代美術館蔵
京都国立近代美術館
(住所)〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町
- お問合せ
- 075-761-4111
- 交通
- JR~バスを御利用の方
■JR・近鉄京都駅前(A1のりば)から
市バス5番 岩倉行
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
■JR・近鉄京都駅前(D1のりば)から
市バス100番(急行)銀閣寺行
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
阪急電鉄・京阪電鉄~バスを御利用の方
■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪三条駅から
市バス5番 岩倉行
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪祇園四条駅から
市バス46番 平安神宮行
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
市バス他系統御利用の方
「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車徒歩約5分
「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約10分
地下鉄御利用の方
地下鉄東西線「東山」駅下車徒歩約10分 - 開館時間
- 午前9:30~午後5:00(入館は午後4時30分まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし,11月23日は開館)
- 琳派イメージ展
観覧料 - 当日 一般1,300円,大学生900円,高校生500円
団体(20名以上) 一般1,100円,大学生700円,高校生300円
※本料金でコレクション展も御覧いただけます
※中学生以下,心身に障がいのある方と付添い者1名は無料(要証明) - ホームページ
-
京都国立近代美術館ホームページ
http://www.momak.go.jp/