2016年1月5日
はじまり,美の饗宴展
すばらしき大原美術館コレクション
国立新美術館 学芸課 主任研究員 長屋光枝
大原美術館は,西洋美術を展示する美術館としては日本で初めて,1930年に岡山県倉敷市に開館しました。創設したのは,倉敷の大実業家で,社会福祉にも大きく貢献した大原孫三郎(1880-1943年)でした。孫三郎は,同郷の画家,児島虎次郎(1881-1929年)を3回に渡りヨーロッパに送りました。虎次郎は,現地で絵画の研鑽を積むうちに,日本の芸術界のために西洋の美術品を持ち帰ろうと決意,ついに孫三郎もこれを全面的に支援するにいたったのです。二人の協働から生まれた大原美術館は,その後も発展し続け,虎次郎が集めた西洋近代美術と古代美術のほかにも,日本近代洋画,民芸運動ゆかりの作家の作品,そして戦後から現代にいたる美術まで,幅広い所蔵品を有しています。本展は,まさにその全容を御紹介する展覧会です。

エル・グレコ 《受胎告知》
1590年頃 - 1603年 / 109.1 × 80.2 cm / 油彩・カンヴァス
第1章では,東西文化の架け橋として活躍した虎次郎が,文化の源流を求めて収集したエジプトやオリエント,中国の古代美術を展示します。続く第2章では,東京では30年ぶりに公開されるエル・グレコの≪受胎告知≫を筆頭に,モネやゴーギャンなどによる,大原美術館を代表する西洋近代絵画の名作が並びます。第3章では,孫三郎の跡を継いだ大原總一郎(1909-68年)が集めた日本近代洋画が続きます。總一郎は,西洋の模倣ではなく,日本人ならではの個性と独創性を重視し,日本屈指の近代洋画コレクションを作り上げました。第4章では,民芸運動ゆかりの作家たちのコレクションに焦点を当てます。民芸運動を深く理解した孫三郎は,東京駒場の日本民藝館の創設を支援し,總一郎はゆかりの作家たちと深く交流しています。第5章では,人間性の根源を脅かす戦争と美術の関係を検証します。戦争とともにあった草創期の大原美術館は,戦中もわずかな期間を除いて開館し続けました。そして戦後,「美術館は生きて成長してゆくもの」という信念を持つ總一郎のもと,一気にコレクションを拡大していきました。第6章では,欧米と日本の作家たちによる戦後の新たな表現を御紹介します。現理事長の大原謙一郎とともに21世紀を迎えた大原美術館は,日本の美術家たちを支援する新しいプログラムを次々と立ち上げました。展覧会のフィナーレを飾る第7章では,日本の現代美術を,国立新美術館の大きな展示空間でのびやかに御紹介します。

児島虎次郎 《和服を着たベルギーの少女》
1911年 / 116.0 × 89.0 cm / 油彩・カンヴァス
本展覧会では,全7章にわたる多様な作品を通じて,大原美術館の85年に及ぶ活動の軌跡をたどります。

ジャクソン・ポロック 《カット・アウト》
1948 - 58年 / 77.0 × 56.8 cm / 油彩,エナメル塗料,アルミニウム塗料など・厚紙,カンヴァス,ファイバーボード
国立新美術館
(住所)〒106-8558
東京都港区六本木7-22-2
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口から徒歩約5分
都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7出口から徒歩約4分 - 会期
- 2016年1月20日(水)~4月4日(月)
- 開館時間
- 10:00~18:00 金曜日は20:00まで (入場は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 毎週火曜日休館
- 観覧料
- 当日 1,600円(一般) 1,200円(大学生) 800円(高校生)
団体(20名以上) 1,400円(一般) 1,000円(大学生) 600円(高校生)
※中学生以下及び障害者手帳を御持参の方(付添いの方1名を含む)は入場無料
※1月22日(金)~24日(日)は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要) - ホームページ
-
http://www.hajimari2016.jp